歯科助手と歯科衛生士の違いとは?業務範囲の違いを解説
歯科助手と歯科衛生士の違い
歯科助手と歯科衛生士の大きな違いは、歯科衛生士は3年間以上の学習をしたうえで国家試験に合格する必要があるということです。歯科助手になるために必須の資格はなく、未経験でも挑戦することができます。民間のスクールなどが作った資格制度を使ってあらかじめ勉強をしておくことで、より有利な条件で歯科助手になる人も多くいますが、未経験からでもある程度の経験を積めば、歯科助手としての役割をしっかり果たせるようになります。
比較項目 | 歯科助手 | 歯科衛生士 |
---|---|---|
国家資格 | なし | あり |
医療行為 | できない | できる |
学校・養成所 | (公式のものは)なし | あり(3年以上通学) |
仕事内容 | 歯科医療業務以外の業務 (受付・事務・片付け・掃除など) | 歯科医療業務 |
給与(年収) | 約300万円 | 約380万円 |
また、患者さんの口内に触れるような医療行為を、歯科医師の指導の下で行えるのが歯科衛生士です。歯科衛生士は歯垢・歯石の除去などのクリーニングやブラッシング指導、ホワイトニング処置などを行うことができますが、歯科助手にはそのような医療行為は認められていません。診療のサポートをする業務が歯科衛生士・歯科助手ともに業務内容に含まれていますが、その内容は明確に分けられているのです。
そして、平均年収にも違いがあります。国家資格を必要とする歯科衛生士の平均年収は380万円ほど、歯科助手の平均年収は300万円ほどです。
歯科助手とは
歯科助手とは、歯科医院において歯科医師や歯科衛生士をアシストする職種のことです。
英語ではDental Assistantと訳されるため、DAと呼ばれることもあります。主な業務内容は「受付」「診療介助」「備品管理」「事務業務」であり、幅広く歯科医療を支える役割となっています。
受付業務の具体的な内容は、患者さんが来院した際の診察券や保険証の確認、電話対応、会計や次回来院日の調整などです。患者さんが来院して初めて顔を合わせるのが歯科助手となるため、歯科医院の顔として丁寧かつ笑顔での対応が必要となります。患者さんの中には、歯科医師や歯科衛生士よりも歯科助手のほうが話しかけやすいと感じている人も多いため、気軽に話しかけてもらえたり、親しみやすさを感じてもらえたりする場合も多くあります。医療現場という専門性の高い仕事に携わりながら、人との関わりも得られることが特徴です。
診療介助業務は、医療行為に当たらない範囲での歯科医師や歯科衛生士のサポート業務のことです。具体的には、診療に使う器具の準備、診療中の口腔内を照らすライトや、唾液・塵などを吸い込む口腔外バキュームの調整などを行います。また、レントゲン撮影をする際の患者さんの誘導や防護服の着用補助、フィルムの準備や現像、印象材や石膏を練る作業などを行うこともあります。
備品管理業務は、その名の通り歯科治療に使う器具や歯科材料などを管理する仕事です。歯科治療で使う器具は、患者さんの口腔内に入るもののため、衛生的な管理が求められます。患者さんごとに洗浄や滅菌作業を行い、清潔な状態で保管しておきます。また、エプロンやグローブ、紙コップなどは使い捨て製品を利用している歯科医院も多くあります。そのような場合は、適切な処理方法で廃棄し、必要に応じて発注作業を行います。
事務業務では、患者さんのカルテの管理やレセプト業務、各種支払業務、スタッフのシフト管理、診療日報の記録、リコールはがき・メールの送付などを行います。レセプトとは「診療報酬明細書」のことであり、レセプト業務とは組合健保や協会けんぽ、市区町村などの健康保険の保険者に、診療報酬を請求することを指します。このレセプト業務は、不備があると「査定」や「返戻」を受けることになるため、歯科医院によっては有資格者を担当に置いているところもあります。
このように、さまざまな業務を行う、社会貢献度の高い歯科助手という仕事ですが、歯科助手になるために必須の資格はありません。しかし同時に、専門的な知識が必要になることも確かです。そのため、歯科助手の給与は無資格で働ける職種でありながら高めに設定されることが多くなっています。
また、歯科医院の数はコンビニエンスストアよりも多いといわれており、全国に7万軒近くあります。活躍できる場所が多く用意されており、給与設定も高めでありながら、未経験でも挑戦できるため、歯科助手は人気の職種となっています。
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歯科衛生士とは
歯科助手と混同されやすい職種として、歯科衛生士があります。歯科衛生士とは、「歯科予防処置」「保健指導」「診療補助」「口腔機能訓練」などを行う、歯科衛生士免許が必要な職種のことです。歯科衛生士免許は国家資格となっており、文部科学大臣または都道府県知事指定の歯科衛生士養成機関(専門学校や大学)にて、3年以上の学習を行ったうえで、試験に合格する必要があります。
歯科衛生士の具体的な業務内容としては、フッ素塗布や歯垢・歯石の除去を行う「歯科予防処置」、ブラッシング指導や口腔ケアグッズのアドバイスを行う「保健指導」、仮封材の除去や概形印象、ホワイトニング処置などが含まれる「診療補助」、咀嚼・嚥下機能の訓練を行う「口腔機能訓練」などがあります。幅広く歯科治療を担当する歯科医師に対し、歯科衛生士は「予防歯科」「口腔内の健康維持」をメインに業務を行うと考えていいでしょう。 また、主な勤務先としては、歯科医院を中心に、病院や介護保険施設などがあります。
歯科助手がやってはいけないことは?
歯科助手として歯科医院で働く中で、「やってはいけないこと」を頭に入れておく必要があります。まず、前述したように歯科助手は医療行為をすることが認められていません。
そのため、口腔内の検査や診断、クリーニングやホワイトニングの処置などはしてはなりません。診療介助行為として可能なのは、患者さんの口に触れない範囲での歯科医師や歯科衛生士のサポートであることを覚えておきましょう。
また、当然ではありますが、患者さんの個人情報を流用する行為や、診療記録を改ざんしたり適当につけたりする行為もNGです。治療器具の洗浄・滅菌作業に関しても、適当に行うことで、感染症を蔓延させたり、患者さんに健康被害を与えたりするリスクがあります。一つひとつの業務は、スムーズに診療を続けるため、ひいては来院される患者さんの健康を守るために行っているものですので、丁寧に正確に行う必要があります。
歯科医院で働く人と業務範囲
歯科医師は、歯科医療行為全般を行うことが認められています。この「歯科医療行為」には、歯科衛生士や歯科技工士といった、歯科医院で働くほかの職種の人が行える業務も含まれています。予防から治療、アフターケアや定期検診まですべてを対応できるのが歯科医師です。
また、扱えることが多い分、その専門性が複数分野に分かれているのも歯科医師の特徴です。口腔周りの外科処置を専門とする「歯科口腔外科」や、複雑な症例にも対応する「矯正歯科」、小児を専門とする「小児歯科」など、一つの分野に特化して診療を提供する歯科医師もいます。働き方に関しても、大学病院に残って勤務医として歯科治療を続けていく場合や、大学病院や民間病院で経験を積んだ後に開業医として歯科治療を提供する場合などがあります。
虫歯や歯周病、けがなどで、歯を削ったり抜いたりした場合に使われる歯科技工物を作製するのが、歯科技工士の仕事です。歯科技工物には「詰め物」「かぶせ物」「入れ歯」などがあり、歯科技工士はそれらの作製が認められています。歯科技工士になるには、歯科技工士教育機関での2年以上の学習の後に、国家試験に合格する必要があります。
歯科技工士は、歯科医院内に併設されたラボに勤務し製作を行う場合と、全国の歯科医院から発注を受けて製作を行う場合の、主に二つの働き方があります。また、現在はデジタルコンピューターを用いて、三次元的に技工物を作製する場合が多くなっています。
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