歯科医師の転職理由
歯科医師の転職理由は、「より専門性を高めたい」「開業スキルを学びたい」などのキャリアアップをはじめ、「人間関係の悪化」や「待遇への不満」など勤務先への不満などがあります。また、「結婚・出産」などライフスタイルの変化や、「開業」や「廃業」も転職理由となります。
転職にあたっては、計画的なスケジュールで進めることが大切です。見学や面接で転職先の特徴をつかみ、事前にいろいろ確認することで、転職後のミスマッチを防ぐことができます。
歯科医師の主な転職理由
キャリアを伸ばすため | 勤務先への不満 | 医院経営・私生活の影響 |
---|---|---|
専門的な技術を持ちたい 注力する分野を持ちたい 開業スキルを学びたい | 診療方針が合わない 労働時間が長い 人間関係に問題がある 給料が安い | 開業前の経験のため 結婚 出産・育児 |
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目次
主な転職理由
歯科医師が転職するときは、より専門性を高めたい、開業後に力を入れる分野を学びたいなど、キャリアアップを目的としていることが多くあります。専門性をつけることによって給与を上げることにもつながります。また、上司や院長との歯科診療に対する考え方の違いから職場を変えることもあります。人間関係の悪化や長い勤務時間などへの不満解消や、結婚・出産など私生活の影響、開業や廃業も転職理由となります。
キャリア構築
歯科医師の多くは、自身のキャリア向上のために転職をします。研究テーマや身につけたい専門分野がある場合は、その分野で活躍する歯科医師のもとで働いたり、その分野の症例を経験できる職場に転職することがあります。各分野で専門医の取得を目指す歯科医師も多くいます。開業を目指している場合は、経営面での勉強のできる医院や、開業後に力を入れたい分野の治療を経験して技術を高められる医院に転職します。
「専門医」を取得している歯科医師数
専門医 | 口腔外科 | 歯周病 | 歯科麻酔 | 小児歯科 | 歯科放射線 | 総数 |
---|---|---|---|---|---|---|
男 | 1,983 | 1,015 | 239 | 692 | 170 | 79,611 |
女 | 218 | 175 | 112 | 575 | 35 | 25,297 |
男女計 | 2,201 | 1,190 | 351 | 1,267 | 205 | 104,908 |
厚生労働省「平成28年 医師・歯科医師・薬剤師調査」より
方針が合わない
院長や上司と診療・治療方針が合わないことも転職理由になります。入職したときには、理念や方針に共感できていたとしても、経験を重ねるにつれて考え方が変わったり、世の中の流れが変わることもあります。治療方針や考え方の合う職場に転職することで、自分の能力や技術をより発揮できることも多々あります。
人間関係
歯科医院は一般的に小さな組織が多く、人間関係の悩みが転職理由になることは少なくありません。病院であっても、歯科という診療科目に限定すると、決して大きな組織ではありません。チームを組んで治療にあたるため、チーム内の人間関係の悪化は、よい治療ができないことにもつながります。
人間関係の悪化や悩みに対して改善が見込めない場合は、職場を変わるのも一つの方法といえます。
長時間労働
病院勤務の歯科医師の場合は、長時間労働になる傾向があり、転職理由の一つに挙げられます。厚生労働省の調査では、一般病院勤務の歯科医師の1週間の平均勤務時間は、男性で約52時間、女性で約48時間。歯科医院の経営者では、男性で約45時間、女性で約42時間となっています。
また、病院の男性の常勤歯科医師のうち、勤務時間が週60時間以上となる割合は31.3%、女性では20.1%にのぼります。歯科医院などでは、週60時間以上となる男性歯科医師は、管理者・経営者で10.9%、常勤勤務医で5.4%と大きく下がります。女性では管理者・経営者と常勤勤務医ともに10%を下回っています。
歯科医師の1週間の平均勤務時間
歯科医師 | 一般病院 | 歯科医院 (管理者・経営者) |
---|---|---|
男性 | 約52時間 | 約45時間 |
女性 | 約48時間 | 約42時間 |
厚生労働省「平成30年度歯科医師の勤務実態等の調査研究」
給与・待遇
よりよい年収や給与のもらえる病院・歯科医院に転職するケースはよく見られます。キャリアのはじめは、質の高い歯科医師になるため、教育体制の充実などが優先されますが、経験や技術を得た後は、給与などの待遇が重要度を増してきます。転職の度に年収を上げていく歯科医師も多く、自分の経験や技術次第で待遇を上げられる職業です。
年齢別歯科医師の年収
年齢 | 年収 |
---|---|
25~29歳 | 557万7,200円 |
30~34歳 | 666万2,600円 |
35~39歳 | 523万8,700円 |
40~44歳 | 978万7,600円 |
45~49歳 | 969万6,800円 |
50~54歳 | 1140万5,100円 |
55~59歳 | 1156万9,200円 |
60~64歳 | 883万5,100円 |
70歳~ | 1483万8,000円 |
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より
開業
歯科医師は開業をする人が多い職業です。歯科医師全体で、歯科医院の経営者になっている割合を見ると、30代では17.4%、40代では53.3%、50代では73.2%です。30代から40代にかけて、勤務医から開業医になる人が多いことがわかります。開業して成功するためには、高い技術や専門性が必要です。開業する前に、より高い技術を身につけられる歯科医院に転職したり、経営のノウハウを学べる医院に転職する例が見られます。
廃業
歯科医院を開業した人の全てが成功するとは限らず、廃業を余儀なくされる場合もあります。経営がうまくいかなかったり、経営者よりも勤務医の方が向いているとわかることもあります。たとえ廃業しても、技術がしっかりしていれば、ほかの歯科医院などで仕事を続けることはできます。
歯科診療所開設数と廃止数
厚生労働省「医療施設調査」より
結婚
歯科医師は、結婚後も仕事を続ける人が多いですが、結婚により住む地域が変わるなどして職場を変える例もあります。歯科医師の結婚事情を見ると、病院勤務では男性歯科医師の配偶者の27%が歯科医師、8%が歯科衛生士です。また、女性歯科医師の配偶者の51%が歯科医師で、医師が14%です。歯科医院勤務では、男性歯科医師の配偶者の18%が歯科医師、14%が歯科衛生士です。女性歯科医師では62%が歯科医師、6%が医師となっています。
出産・育児
出産や育児を機に非常勤や短時間勤務が可能な職場に変わるといったことがあります。病院勤務の女性歯科医師では、常勤の10%、非常勤の21%が「休職・離職」を経験しています。歯科医院勤務の女性歯科医師は、育児中に20%以上が「離職・休業」と回答していますが、そのほとんどは仕事の継続を希望していました。
育児中に仕事を継続するために有効な取り組みを尋ねると、病院・歯科医院両方で「院内保育施設の設置・充実」と回答する歯科医師が多く、院内保育施設の充実が課題となっています。
転職に失敗しないためには
転職をするにあたっては、計画的なスケジュールを立てることが大切です。勤務中の病院や歯科医院に迷惑をかけないこと、退職から次の職場の入職までの時間が空きすぎないことなども大事です。また、転職の目的が達成できるかを検証し、面接などでは自分をアピールできるように準備をすることが必要です。
スケジュール
歯科医師は、病院であっても歯科医院であっても、担当患者を持つことが一般的です。そのため、退職にあたっては、余裕をもって患者の引き継ぎができるようにしなければいけません。歯科医師が抜ければ、補充の人を入れたり、組織体制を変えたりする必要もあり、早めに退職の意思を伝えることが大切です。
また、退職から入職までの時間が空きすぎたり、職場を変わる準備ができない事態にならないように、スケジュールをあらかじめ計画しておくのが得策です。
自己分析
就職活動につきものの自己分析は、転職においても大切です。なぜ歯科医師を目指したのか、これまで何を達成できたか、どのようなことを心がけて診療に携わってきたかなど、歯科医師としての自分を振り返って考えることは非常に役立ちます。転職する理由についても深く考え、5年後、10年後の目的なども決めておくと失敗を避けられます。
見学
病院・医院の情報はホームページなどで手に入りますが、実際の雰囲気や診療の様子を見ないと転職後にミスマッチになることが多くあります。見学では、スタッフの連携や患者の様子、清潔度などを確認できます。また、周辺を歩いて地域の特性や住民の特徴なども見ておくと役立ちます。可能であれば複数回見学を行うと、さまざまな治療を目にすることができて判断材料が増えます。
面接
面接は、自分自身をアピールする場なので、自己分析の結果をベースに、自分がなぜ歯科医師になったのか、どんな診療をしてきて、今は何を目指しているのかを伝える必要があります。また、職場の理念や治療方針を確認する場でもあります。担当できる症例、患者数、雇用条件などを含め、気になることは質問することが重要です。
よくある面接での質問
歯科医師が転職する際によくある質問は、次のようなものです。転職理由が前の職場への不満にある場合は、悪口にならないように、なるべく前向きな説明を心がけると、相手の印象はよくなります。
・当院を志望した理由は何ですか?
・歯科医師を志したのはなぜですか?
・仕事を退職することに決めた理由は何ですか?
・これまでの仕事内容を教えてください
・職場での給与は? 当院ではいくらを希望しますか?
・ほかの医院も受けていますか?
・採用された場合、いつから勤務が可能ですか?
・自己アピールをしてください
・あなたの長所と短所を教えてください
転職活動
歯科医師の転職活動においては、これまでの人脈の活用などもありますが、広い範囲から理想の職場を見つけるためには、転職サイトが役に立ちます。情報の更新が早いほか、さまざまな条件で求人を絞ることができ、自分の希望に合った就職先を探しやすいです。
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