早期離職の主な理由とは?原因・事例と対策のポイント解説
誰しも新しい職場で長く安定して働き、キャリアを積み上げたいと考えるものです。しかし、入職直後に思いがけず離職してしまう「早期離職」のリスクは、予期せぬ職場環境や働き方のミスマッチが原因で起こることが多いです。
この記事では、歯科で働く方々が早期離職のリスクを最小限に抑えるための「よくある原因」「失敗例」「実践的な対策」について詳しく解説します。
目次
なぜ早期離職が起こるのか? その主な理由
早期離職の大きな原因となるのが、「入職前に認識していた労働条件・環境」と「実際の労働条件・環境」が異なる場合です。
入職後のギャップが早期離職の最大の原因
歯科業界では、求人情報と実際の職場の現状にギャップが生まれやすく、これが早期離職につながる原因となります。たとえば、
・出勤時間が思ったよりも早かった
・聞いていたよりも残業が多かった
・考えていた以上に覚えることが多く、ついていけなかった
などが具体例です。求人情報を信頼しすぎず、見学や事前調査で現場の実情を確認しておくことが大切です。
想像していた労働環境とマイナスの乖離があればあるほど、早期離職の可能性は高まります。
このような労働条件におけるマイナスの乖離を生まないためには、医院見学や面接の時点で気になることは確認しておくこと、労働契約書は入職前にしっかりと説明してもらうことが大切です。
「覚えることが多かった」という点に関しては、先輩スタッフへの質問のしやすさはもちろん、マニュアルが用意されているか、歯科材料や器具などにラベリングはされているかなども事前に確認しておくと、ギャップを防ぎやすくなるでしょう。
転職前にリアルを知ることが重要
そして頭に入れておきたいのは、一般企業などとは異なり、多くの歯科医院には面接のプロはいないという点です。
ほとんどの場合は、院長やベテランスタッフが医院見学や面接の対応をしますが、見学や面接のための専任スタッフではないため、十分な対応ができないことも少なくありません。
診療時間の前後や休憩時間を利用して見学を行う場合は、実際の診療の雰囲気がわからないこともありますし、診療時間中であれば十分に時間が取れないこともあります。だからこそ、求職者本人が自らその医院のことを知ろうとする工夫が大切です。
よくある早期離職の原因(事例付き)
では、実際にはどのようなケースが早期離職につながっているのでしょうか。歯科衛生士の早期離職でよくあるケースにはこのような原因があります。
労働時間や勤務体系のズレ
まずは、労働時間の問題です。
「求人広告では残業なしとの記載があったのに、実際には後片付けのための残業時間が毎日15分あった」「聞いていた勤務開始時間の30分前に出勤するのが通例になっていた」など、労働時間の認識相違は早期離職の大きな原因となります。
休憩時間の過ごし方や休憩室の環境
また、休憩時間の過ごし方や休憩スペースの環境も、入職前のイメージと異なる場合があるので気を付けて見ておきましょう。
例えば、「休憩時間はスタッフ全員でお昼をとるのが当然になっていた」という場合、一人の時間が必要な人にとっては息苦しさを感じるかもしれません。
また、「話のネタが、院長や患者さん、仕事内容に関する愚痴ばかり」「診療スペースはきれいなのに、休憩スペースは私物でぐちゃぐちゃだった」という場合にも、ストレスを感じる可能性があります。
有給取得のルール
有給取得のルールに関しても、事前に確認しておくことをおすすめします。
「有給取得率100%」と求人広告に記載されていた場合でも、実際は「先輩スタッフから取得日を決めていくので、希望する日にちで取得することができない」「医院が決めた日に有給を取得することになっている」など、何らかの慣例的なルールがある場合があります。
そのほかには、事前に「歯科衛生士が複数名勤務」と聞いていたが、実際にはこれから採用する予定で現状は自分しか歯科衛生士がいなかったという事例もあります。
歯科医院としては噓を言っているつもりはなく、採用活動が進んでいる人や入社予定だった人がいた可能性もありますが、自分の入社時に歯科衛生士がほかにいないのであれば、それは早期退職の理由になってしまうでしょう。
早期離職のデメリット
早期離職は、歯科医院・求職者の双方にデメリットがあります。
まず歯科医院の立場から見てみると、採用や教育にかかった時間・労力・費用といった投資が無駄になってしまいます。
また、次のスタッフを採用できるまでの期間は少ない人数で診療を回していく必要があるため、ほかのスタッフにかかる負担が大きくなります。人数が減ったことで診療できる患者さんの数を減らさざるを得なくなり、売上が減ってしまうこともあります。
求職者側の立場で考えても、早期離職は就職・転職活動にかかった時間・労力・費用の損失につながりますし、改めて転職活動をしなければならないためプラスでコストがかかります。
また、「早期で退職した」という事実が、次の転職活動にマイナスの影響を与えるリスクもあります。同じスキルや経験を持っている求職者が複数いた場合に、歯科医院は早期離職のリスクが低い人材を選ぶ可能性が高いからです。自分の価値を下げず、条件のいい歯科医院に入職するためにも、早期離職は避けるに越したことはありません。
医院見学でギャップを防ぐ
では、いざ転職を決めたとして、どのようにすれば早期離職を防ぎやすくなるのか。 まず大切なのは「転職の目的をしっかりと持つ」ことです。
転職をすることで「どのような生活を手に入れたいのか」「どのようなスキル・経験を積みたいのか」など、何を実現するために転職をするのかを明確にしましょう。
また、人によって前職を辞めた理由は異なるはずです。
給与・残業時間・休日といった条件面、人間関係への不満、スキルアップ環境への不満、家庭環境の変化、自身の体力の変化などさまざまかと思いますので、次の職場ではその退職理由が解決できるのかもしっかりと確認しましょう。
一番の対策は「医院見学」
そして、明確にした目的を実現し、前職の不満点を解決するために大切なのが、医院見学をすることです。
また、入職前のイメージと実際の労働環境・条件にギャップがあればあるほど早期離職のリスクは高くなると前述しましたが、そのギャップも生まれにくくするためにも、医院見学をすることをおすすめします。
例えば、医院見学に行った際に採用スタッフ以外のスタッフと話をすることができれば、職場の雰囲気やスタッフ同士の人間関係をより具体的に知ることができます。
ほかのスタッフと話をする時間が設けられていない場合でも、業務に支障がない範囲で話をさせてもらえないか聞いてみましょう。また、実際の通勤時間に近い時間帯に歯科医院に足を運べば、周辺道路の渋滞状況や電車の混雑状況もイメージしやすくなります。
そのほか、医院周辺の雰囲気や、診療で使用している機材なども実際に目で見て確かめることができるため、働き始めた後のことを具体的にイメージしやすくなり、早期離職を防ぎやすくなるという利点があります。
早期離職のリスクは減らせる
一般企業と違い歯科医院は、職場環境に対する不満があった場合に異動や配置転換といった術がないことが多いため、「辞める」という選択肢をとらざるを得ないことも少なくありません。しかし、早期離職は時間の損失や出費の増加につながるだけでなく、その後のキャリアにも悪影響を与える可能性があります。
だからこそ、入職後のギャップを生まないよう、事前にしっかりと確認をすることが大切です。「転職の目的を明確にする」「医院見学でリアルな職場環境を知る」といった準備をすることで早期離職のリスクを減らし、転職活動を成功に導きましょう。