歯科衛生士「年収1000万円」は可能?実現しているのはこんな人
歯科衛生士として働く中で収入はどれだけ目指せるのか気になる人は多いかと思います。今回は、年収1000万円をテーマに実現の可能性を探ります。年収1000万円達成は簡単ではありませんが、歯科衛生士のキャリアを拡大する手掛かりとしてご覧ください。
歯科衛生士「年収1000万円」の現実性
まずは、歯科衛生士の平均年収がどのくらいなのか確認したうえで、年収1,000万円は現実的なのか考えてみましょう。
平均年収とその変動要因
日本歯科衛生士会の「歯科衛生士の勤務実態調査(令和2年)」によると、常勤歯科衛生士の平均年収は「300万円以上 400万円未満」が最多の35.3%となりました。非常勤歯科衛生士の場合は、「130万円未満」が58.2%で最多となります。
歯科衛生士の年収分布
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勤務先によって割合の多い金額帯は異なり、研究機関や教育機関で働く歯科衛生士の数%は「1,000万円以上」の結果となっています。
しかし実数としては一桁台、非常に特別なケースと言えます。
年収1000万円は現実的?
年収1000万円を超える収入を得る歯科衛生士は、数こそ少ないものの実際に存在します。
ただし、歯科医院や企業にスタッフとして勤務するだけでは難しい金額です。他業界も含む給与所得者全体で年収1,000万円の割合は3.5%しかありません。(国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」)
歯科医院で主任やリーダーなどへ昇進していけば、手当込みで年収500~600万円を得る可能性はあるでしょう。しかし700万円以上となると、調査結果においては一桁台の割合となっており、それ以上を目指すと歯科医師の年収と並び難しくなるラインです。
年収1000万円を考えると、独立して事業運営に携わる、臨床に加えて複業をするなど活動範囲を広げる必要があるでしょう。実際に歯科衛生士として年収1000万円以上を手にしているのはこのような働き方をする人が多いようです。
高収入を得る人が得たスキル4選
収入を上げるためには、対価として自分が提供する価値を上げる必要があります。高収入の歯科衛生士の方々について取材をすると、歯科医院で働くなかで身に着けられるスキルはさまざまあることがわかります。
歯科衛生士としての基礎力
どんなに高収入な人も、基礎なくして年収1000万円には到達していません。歯科衛生士の資格を取ったら数年は腰を据え、技術や知識を身につけています。最初に磨いた基礎は、歯科衛生士として今後のキャリアを築くための土台となります。
行動量を意識してどんな業務にも積極的に取り組み、好きで得意なことを見つける視点が大切です。メンテナンスが得意なのであれば、1時間かけて行うより、30分でできるスキルも身につけておいたほうが役立つという見方もできるでしょう。
高度な専門知識や技術力
基礎力が身についてきたら、より広い分野を対応できるように高度な専門知識や技術を身につけます。たとえば矯正歯科や審美歯科では、矯正装置の接着やホワイトニングなど歯科衛生士が担当する業務も一般歯科とは異なり、専門知識と技術が求められます。勤務先での仕事だけでは勉強できない場合は、研修会や学会に参加したり、副業・転職をしたり、主体的に行動をする必要があるでしょう。
マネジメント力や指導力
勤務先での昇進を目指して収入アップを目指す場合、リーダーシップや指導力は必須です。スタッフへ指導したり、スタッフ同士のチームワークを高めたり、医師とのスムーズな連携に協力したり、組織をマネジメントしていくうえでの立ち振る舞いが求められるでしょう。
提案力、営業力
歯科医院によっては、インセンティブ報酬が設けられていることがあります。その場合、歯ブラシやケア用品の販売、自費治療の提案などは収入に直結しますので、注力して営業してみましょう。インセンティブがない場合でも、歯科医院全体での売上に貢献できる人は昇給につながりやすいです。また、提案力や営業力は将来独立した場合にも身に着けておいて損はありません。
年収アップに役立つアクションリスト
収入を増やす方法は人の数だけあります。高収入の歯科衛生士も自分なりに工夫して行動し、修正を繰り返しています。仕事を拡大する手がかりになる行動や考え方をいくつかリストアップしました。
影響を与える人の数・範囲を拡げる
高収入の歯科衛生士は多くの人と関わり、よい影響を与えます。「収入アップ=自分が価値を提供する人を増やす」という考え方もあります。たとえば、新米のころは目の前の患者さん、主任になったら医院全体のスタッフたちや患者さんたち、教育者として独立したら全国の若手歯科衛生士……と、人と関わる範囲が拡がれば拡がるほど、仕事の範囲も拡がります。
動くお金を意識する
今働いている場所でどれだけのお金が動いているか、イメージしてみましょう。 年収1000万円を目指すなら、経営視点が必要とされます。たとえば、保険診療より自費診療、1回きりの受診より継続的な受診のほうが売上は大きくなります。また動くお金が大きくなれば、経費や資材など出ていくお金も変動します。患者さんを一番に考えつつも、どうしたら事業に寄与できるのかを考え、工夫することは経験値のアップにつながるでしょう。
提供する価値を高める
歯科衛生士としてどんな価値を提供できるのか書き出してみましょう。たとえば、「矯正器具の接着もできる」、「後輩育成に注力している」、「自費治療の提案が得意」など、得意分野を伸ばしていくことが「自分の価値」となり、次のステップにつながっていくかもしれません。
チームで稼ぐ、起業する
歯科衛生士の得意分野を生かして起業している人もいます。スタッフを雇用し、複数の事業と掛け合わせ拡大すると年収はさらに上を目指せます。
事業の例
- 歯科医院のマネジメント研修
- チームビルディング
- SRP、エアフロ―など特定の施術に特化した教育
- ホワイトニングサロンの運営
- オーラルケア用品の開発
- 美容医療の施術
医療の枠を超えると可能性はさらに広がります。これまでにないサービスや自分だけの価値を提供したいという思いのある人は向いていると言えます。
業界内外での人脈作りと情報収集
年収1000万円を目指すために独立や開業を考えているなら、業界内外問わず多くの人とつながっておくことが重要です。歯科衛生士の先輩からキャリアアップの方法や具体例を聞いたり、異業種交流会などで協業できそうな人を探したり、積極的に人脈を活用しましょう。
対応できる分野、診療内容を増やす
歯科衛生士の仕事は非常に幅広いものです。一般歯科のみならず、矯正歯科や審美歯科での処置対応、小児歯科での子どもへの対応、訪問歯科でのリハビリ支援など、それぞれのジャンルで専門性の高い業務が必要になります。対応できる分野を増やせば、患者さんへの提案の幅が広がるほか、手当がついたり、転職で有利になったりしやすいでしょう。
活動するエリアの検討
歯科衛生士として活動するエリア選びも重要です。一般的には東京・大阪・名古屋などの都市部のほうが、給与は高い傾向があります。また、自費治療で単価の高い矯正歯科・審美歯科などの医院も都市部に多いでしょう。一方、都市部は家賃などの生活コストも高くなるため、バランスを見て検討してください。
複数の仕事の掛け持ち
歯科衛生士の仕事だけで年収1000万円を達成するのではなく、複数の仕事を掛け持ちして収入源を増やすという方法もあります。たとえば以下のような副業が考えられるでしょう。
- セミナー講師
- コンサルタント
- Webライター
- インフルエンサー
発信力をつける活動は、自分のブランディングにもつながっていきます。歯科衛生士を活かした新しいビジネスを始める場合にも、影響力があると有利です。
継続的な勉強と資格取得
歯科衛生士に関する資格はいくつかあります。資格を取得することで、転職などで実力や得意分野を分かりやすく伝えられるでしょう。以下は資格の一例です。
- 認定歯科衛生士
- 認定矯正歯科衛生士
- ホワイトニングコーディネーター
- 歯科感染管理者
歯科衛生士として自分らしく働くには
ここまで読んで、「やる気が出た!」という人もいれば、「私には難しいかも」という人もいるかもしれません。最後に、自分らしく働くために考えたいポイントをまとめました。
収入ばかりがすべてじゃない
大前提として、収入は仕事のすべてではないはずです。年収1000万円を得ている人の背景には、それなりの行動力や工夫があります。また、人前に出る場面も増え、活動範囲も増えるでしょう。そのような働き方を「楽しい」と思えるかは人それぞれです。
年収目標だけを追って、自分が本当に大切にしたい時間や価値観を捨ててしまっては元も子もなくなります。人との比較ではなく、自分を軸にした目標がベストでしょう。
長期的なキャリア、目標を意識
人は意識しなければつい目の前の業務に追われて、将来のための勉強や研鑽を怠ってしまうものです。「重要度」と「緊急度」を考え、1日や1週間のうち少しでも「緊急でないが重要なこと」をする時間を作りましょう。長期的なキャリアを見据えて計画的に行動をすることは大切です。
知識や技術のアップデート
歯科医療は日々進歩し、専門学校で勉強したことや、いま業務で必要とされることが数年後に変わっていることはよくあります。高収入を得ている人は、変化に対応できるよう学会やセミナーに参加したり、論文に目を通したり、知識や技術のアップデートを楽しみながら行なっているようです。興味ある分野に素直に関わることは、充実した職業人生につながります。