歯科衛生士が予防専用ユニットのある歯科医院で働くメリット
歯科衛生士の専用ユニットとは
「歯科衛生士専用ユニットあり」と記載のある求人を見たことのある人もいるかと思います。「歯科衛生士専用ユニット」とは、予防歯科診療を行うために設置された診療ユニットのことです。同じフロア内に一般診療ユニットと歯科衛生士専用ユニットが並んで設置されている医院もあれば、予防専用ルームや予防専用フロアが用意され、その中に歯科衛生士専用ユニットが置かれている場合もあります。
歯科衛生士専用ユニットは、予防歯科をメインに行う歯科衛生士が、専用で使うユニットです。そのため、予防処置がしやすいように必要な機材が配置され、効率的にクリーニングやフッ素塗布などを進められるという利点があります。
また、予防処置専用ルームに歯科衛生士専用ユニットが設置されている場合は、虫歯を削る際の「キーン」という音や、ほかの患者さんの声などが聞こえてきません。そのため、患者さんはよりリラックスして治療を受けられます。歯科衛生士にとっても、そのような集中しやすい環境が整っていることで、精度にこだわりながら丁寧に処置を提供することができます。
専用ユニットの記載が求人にあるワケ
歯科衛生士専用ユニットを導入しているかどうかは、歯科衛生士が主体で行うメンテナンス業務の割合や歯科医院の規模感、経営方針を知る一つの目安になります。
そのため、歯科衛生士を募集している歯科医院の多くは、他院との違いをアピールするため求人広告に「歯科衛生士専用ユニットあり」といった記載をしています。
予防専用ユニットのある医院は約4割
では、実際にはどのくらいの数の歯科医院が、歯科衛生士専用ユニットを導入しているのでしょうか。
令和元年の日本歯科衛生士会の調査報告によると、歯科衛生士専用ユニットを導入している診療所は、全体の36.5%となっており、61.9%は設置していないと答えています。
設置台数に関しては、「1台導入している」と答えた診療所がもっとも多く、割合としては36.2%を占めています。次いで、2台が28.4%、3台が17.8%、4台が7%、5台以上が9%となっており、平均としては2.3台という結果です。
診療所以外の大学病院や企業、障がい者歯科診療所においても、歯科衛生士専用ユニットの設置台数は増加しています。
専用ユニットのある歯科医院の傾向は?
歯科衛生士専用ユニットを設置する歯科医院は年々増加しています。では、どのような歯科医院が、歯科衛生士専用ユニットを設置しているのでしょうか。
予防歯科に力を入れている
歯科衛生士専用ユニットを設置している歯科医院の特徴として第一に挙げられるのは、予防歯科に力を入れているということです。
一般的に、歯科衛生士専用ユニットで行うのは予防業務となっており、どちらも歯科衛生士が主体で行う予防歯科業務です。そのため、これらを行うための専用のユニットが用意されているということは、患者さんの口腔内の健康維持に力を入れている証となります。
ストック型の売上を計画している
歯科医院では専用ユニットを導入し、メンテナンスの患者さんを安定的に集患する計画を立てています。
1日の予約がフルに埋まれば、少なく見積もって8人~10人、45分や30分のメンテナンス時間であれば15人以上の患者さんを診ることができ、歯科衛生士だけで十分な売り上げをつくることができます。
安定して予約が取れると3か月後の売上見込みを立てることができ、いわゆるストック型の売上をつくることができます。
専用ユニットは平日の昼間など予約が空くこともあります。なので、患者さんの定期的な来院につながるように、声掛けを工夫することも歯科衛生士の仕事の醍醐味です。
歯科衛生士の教育に投資している
歯科衛生士専用ユニットは予防歯科診療を提供するユニットのため、スケーリングやPMTCといった処置を受ける患者さんが少なければ、その分使用頻度は落ちてしまいます。そのため、できるだけ多くの患者さんに「この医院でメンテナンスを受けたい」と思ってもらえるよう、歯科医院は歯科衛生士の教育やマネジメントに力を入れる傾向があります。
予防歯科業務は歯科衛生士が中心となって行う業務であり、歯科衛生士のスキルや接遇が患者さんの満足度に直結するからです。
そのため歯科衛生士にとってはスキルアップしやすく、経験を積みやすい環境だといえます。
専用ユニットある医院を探しているのは?
歯科衛生士専用ユニットのある歯科医院を探している歯科衛生士の方はどのような人でしょうか。
予防業務が好き
現在勤務している歯科医院からメンテナンス中心の業務を希望してへ転職を視野に入れている方は、歯科衛生士専用ユニットの有無も視野に入れています。
前述のとおり、予防歯科は歯科衛生士の経験やスキルを活かせる分野であり、歯科衛生士が主体となってケアやメンテナンスを進めます。そのため、予防歯科を転職先の候補としている歯科衛生士は、「歯科衛生士としてのスキルを高めたい」「これまでの経験をさらに活かせる職場で働きたい」という希望を持っている傾向が高いといえます。
また、歯周病の認定歯科衛生士の取得などを視野に入れている場合も、専用ユニット有無の視点から就職先を検討しても良いでしょう。
教育体制の充実した歯科医院を探している
歯科衛生士専用ユニットを導入している歯科医院は、歯科衛生士教育に力を入れている傾向があると前述しました。そのため、教育体制が充実している歯科医院を探している方も、その判断基準の一つとして歯科衛生士専用ユニットの有無をチェックしている傾向があります。メンテナンス業務を中心に長く働いていきたいと考えている方が、このように考えている傾向が強いといえます。
ある程度規模の大きい医院に勤めたい
歯科衛生士のスタッフ数の多い、ある程度の規模の歯科医院を探している方も専用ユニットの有無が一つの目安になります。
専用ユニットのある歯科医院の求人は多い?
歯科衛生士専用ユニットのある歯科医院自体が全体の4割以下のため、求人数に関しても多いとはいえません。しかし、最近は非常に増えていますので「専用ユニット」などでぜひ検索してみてください。
また、歯科衛生士専用ユニットがある歯科医院を希望する理由を深掘りし、その希望をかなえられる歯科医院を別の角度から探してみるのもおすすめです。例えば、「一人ひとりの患者さんとしっかり向き合ってケアを提供したい」ことが専用ユニットを希望する理由であれば、メンテナンス時間を十分にとっている歯科医院や、担当歯科衛生士制を採用している歯科医院で、その希望をかなえられる可能性があります。
そのほか、精度の高いメンテナンスを提供したい場合には拡大鏡・マイクロスコープの有無や歯科衛生士の使用可否、集中して業務に取り組める環境がほしい場合には個室診察室の有無、教育体制が充実している歯科医院を探している場合には資格取得支援制度の有無などを調べてみましょう。
どれか一つの条件を満たしているからといってすぐに決めてしまうのではなく、いろいろな歯科医院を総合的にみて比較検討し、医院見学なども行ったうえで決めると、働き始めてからのギャップも少なく、長く安定的に働いていけるかと思います。