歯科衛生士の矯正歯科での仕事内容は?経験者に聞いた主体的に働ける魅力
矯正歯科での仕事内容は、一般歯科とどのように違うのかをご紹介します。矯正歯科では、一般歯科と異なる幅広い業務範囲と技術力や提案力が求められます。スキルを身につけることで歯科衛生士が主体となって働くことのできる分野でもあります。
💡 この記事で紹介すること 実際に働くスタッフの声/矯正歯科の仕事内容/矯正歯科の歯科衛生士として働くメリット
矯正歯科の歯科衛生士の仕事内容って?
矯正歯科で働く歯科衛生士の主な仕事内容について、検査から治療、保定期間まで説明します。
撮影・検査の補助
矯正歯科の歯科衛生士は、歯科医師の診断をサポートするために、さまざまな検査や診断補助をおこないます。
たとえば、口腔内写真・口腔内スキャナーの撮影、エックス線撮影の補助といった業務が挙げられます。エックス線撮影装置の撮影ボタンを押すのは歯科医師ですが、スムーズに患者さんを誘導し、撮影の準備をするのは歯科衛生士の仕事です。
なお、矯正歯科で必要とされるエックス線撮影は、一般的な撮影のほか「セファログラム」と呼ばれる撮影方法があります。通常のエックス線写真とは撮影方法が異なり、誰が撮影しても同じ条件となるように、枚数や角度などが細かく定められているので、歯科衛生士は規格に沿って適切に患者さんを誘導します。
治療プランの詳細な説明
検査結果が揃ったら歯科医師が診断のうえ、治療計画を患者さんに説明します。全体方針の決定や判断は歯科医師がおこないますが、詳細な説明は歯科衛生士が担当する医院も多くあります。
たとえば、患者さんの理解度にあわせて以下のような内容を伝えます。
- 使用する矯正装置の特徴
- 矯正装置ごとのメリット、デメリット
- 治療費用や支払い方法
- 治療期間
- 矯正装置のつけ方
- 歯磨きなど生活するうえでの注意点
治療についての詳細な説明を担う歯科衛生士には対応力が求められます。患者さんの口腔内のケアに対する意識を高め、治療の不安を聞き、安心して治療に臨んでもらうために、歯科衛生士は矯正に関する明確な説明ができるようトレーニングしていく必要があるでしょう。
患者さんのモチベーション管理
矯正治療では、治療の経過にともない患者さんが痛みを伴うなど不安を感じる時期があります。たとえば反対咬合の矯正中は、うまく噛めなくなったり、見た目が前より悪くなったように感じる時期があります。そういった患者さんの気持ちに寄り添い、治療を続けられるように声掛けするのも歯科衛生士の役割です。
矯正装置の装着・調整
矯正歯科の歯科衛生士の仕事のなかでも、特に専門性の高い業務が装置の装着と調整です。 歯科医師と連携しながら、患者さんの歯に最適な方法で装置を取り付けていきます。
矯正装置の装着指示やチェックは歯科医師の業務ですが、実際の作業は歯科衛生士に任せている医院も多いです。歯科衛生士の技術力や知識・経験が仕上がりに直接つながる。
たとえばワイヤー矯正の場合なら、ブラケットと呼ばれる装置を歯に接着したり、接着したブラケットの穴にワイヤーを通して縛る「結紮(けっさつ)」という作業をしたりといった、専門性の高い処置を施していきます。また、マウスピース矯正の場合でも、歯にマウスピースをつけるためのアタッチメントを装着するのは歯科衛生士です。
診療の補助
矯正歯科専門の医院では、一般歯科のような虫歯治療等に対応していないことも多いです。矯正治療が親知らずの抜歯などを伴う場合は、一般歯科で抜歯のみ対応してもらうことになります。
一般歯科併設の医院や矯正治療中の患者さんのみに一般歯科治療を提供している医院では、歯科衛生士も一般歯科の診療補助を担います。診療で扱う器具の管理、口腔内の清掃、バキューム、治療・手術の補助など行います。
口腔衛生指導
矯正治療中は、歯磨きをしても汚れが落ちにくい状態です。装置に食べ物が挟まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。 患者さん一人ひとりの口腔内の状態や矯正装置の種類に合わせた適切なブラッシング方法を指導することも、歯科衛生士の仕事のひとつです。 具体的には、以下のような指導を行います。
歯ブラシ・歯磨き粉の選び方
矯正装置に適したヘッドの大きさや毛の硬さの歯ブラシ選びをアドバイスします。適切なフッ素濃度の歯磨き粉を推奨します。
矯正装置の清掃方法
装置の種類に合わせた清掃方法を指導します。
デンタルフロス・歯間ブラシの使用
歯と歯の間、装置と歯の間の歯垢を効果的に除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方を指導します。
食生活のアドバイス
糖分の多い飲食物の摂取を控えるなど、虫歯や歯周病になりにくい食生活をアドバイスします。
これらの指導を通して、患者さんが治療期間中も健康な口腔内を保てるようサポートしていきます。
保定期間のケア
矯正治療が完了した後も、歯は元の位置に戻ろうとするため、保定装置(リテーナー)を使用して歯の位置を安定させる必要があります。この期間は「保定期間」と呼ばれます。保定期間中の患者さんは定期的に通院し、メインテナンスを受ける必要があります。
保定期間中、歯科衛生士は口腔内の状態のチェックやクリーニング、歯磨き指導、保定装置の調整や再作成をする場合の歯科医師のサポートなどをおこないます。
保定期間は矯正装置をつけた期間と同じ期間、または一生涯装着するケースもあります。
なので、一般歯科と比べると患者さんが1つの医院に通い続ける期間が長く、歯科衛生士が患者さんと付き合う期間も長くなる可能性があります。患者さん一人ひとりのQOLを向上させるため、丁寧なアフターケアを提供するのが歯科衛生士の役割です。
歯科衛生士が矯正歯科で働くメリット
歯科衛生士が矯正歯科で働くメリットを紹介します。一般歯科と異なる専門性が求められ、難易度を求められそうな矯正歯科ではどのようなメリットがあるのでしょうか。
歯科衛生士が主体的に働きやすい
矯正歯科で歯科医師がすべき診療、診断行為のほかは、歯科衛生士がメインで患者さんと接するとも言えます。歯科医師が1人でも、歯科衛生士が複数いることで多くの患者さんを診ることができます。
患者さん一人ひとりに向き合って信頼関係を築きながら、主体的に働きたいと考える人にはぴったりの職場でしょう。患者さんの口腔内の改善に直結するため、感謝される場面も多いことも魅力です。
矯正歯科の専門性が身につく
矯正歯科に特化して働くことで、一般的な歯科医院とは異なる専門知識や技術を身につけることができます。
矯正装置に関する知識
装置の種類や特徴、装着方法、調整方法などの深い知識やテクニック
歯列矯正のメカニズムの理解
歯が移動するメカニズムについての専門的な知識
口腔内写真やエックス線写真の撮影技術
矯正治療に必要な撮影に関する専門的技術(レントゲン撮影ボタンは歯科医師が担当)
患者さんへの丁寧な説明
スキル治療計画や装置、治療期間、費用などを分かりやすく説明するスキル
矯正歯科のスキルを業務のなかで身に着けていくことで、将来の選択肢が広がる可能性があるでしょう。
給与アップにつながる可能性
矯正歯科で歯科衛生士として働くことは、給与アップにつながる可能性があります。主な理由は2つあります。
1つ目は、専門性の高いスキルや知識が身につくためです。矯正歯科ならではの専門知識や器具の取り扱い方、スキャナーの撮影方法、患者さんへのヒアリング・コミュニケーション技術を身に着けることで、キャリアアップが見込めるからです。
2つ目は、矯正は基本的に自費診療であり、治療費が高いだけ、スタッフの給与にも反映されやすいためです。技術や知識を磨いて任せられる業務の幅が広がれば、だんだんと昇給する可能性があります。
医院によっては歩合給を導入している場合もあります。患者さんへの営業力、提案力があれば、オプションのホワイトニングや歯ブラシの販売などで、プラスアルファの報酬が得られる可能性もあるでしょう。
むし歯治療から歯並び治療へのニーズ変化
近年、日本人の口腔内の健康状態は大きく改善し、むし歯の数は減少傾向にあります。厚生労働省の調査によると、特に子どものむし歯は減少が顕著です。
むし歯が減少する一方で歯並びに対する意識は高まっています。歯並びの美しさは見た目の印象だけでなく、全身の健康にも影響を与えることが知られるようになり、歯並び治療のニーズはますます高まっていくと考えられます。
矯正歯科医院はこれからも増え、メインの処置業務を担う歯科衛生士の求人も増加していくと予測できるでしょう。
矯正歯科で働く歯科衛生士にインタビュー
一般歯科の歯科衛生士との違いや、歯科医師との分業について、実際に矯正歯科で働く歯科衛生士のリアルな声を聞いてみました。
矯正歯科は、一般的な予防歯科とは全くやることが違います。たとえば、「スケーラーを持って歯石を落とす」といった処置は、業務のほんの一部です。
歯科医師の先生が判断する必要のある診断、診療以外は極論、ほぼすべてが「歯科衛生士ができる業務」。この業務の広さが矯正歯科の面白さであり、奥深さでもあると思います。
たとえば、ワイヤー矯正のブラケットも装着できるし、ワイヤーが曲げられる人ならワイヤーのセットまで対応できます。歯科衛生士1人で完結できる業務が多くあるということです。
先生はもちろん必要に応じてチェックをしますが、あとは歯科衛生士におまかせなので、歯科衛生士が主体となって仕事をしたい方にもおすすめしたい分野です。
一般歯科との違いについてこのような声をもらいました。
求人から見る矯正歯科の歯科衛生士の仕事内容
実際の求人ではどんな仕事内容が掲載されているのでしょうか。求人サイト「 GUPPY 」に掲載されている矯正歯科の歯科衛生士求人から、実態を探ってみましょう。
A矯正歯科
A矯正歯科は、診療は1日最大5名までと非常に少ないのが特徴。一人ひとりの患者さんとしっかり向き合い、最新の機器を使いながら適切な治療を実施。
矯正歯科専門院ですが、契約患者さんに限り、一般歯科も提供しています。専門性の高い矯正歯科を学びながら、一般歯科の知識も同時に身につく環境。学会やセミナー参加などの学習支援も積極的にサポートしているため、成長意欲の強い人にぴったりの医院。
B歯科・矯正歯科
一般歯科・矯正歯科クリニック。オープニングスタッフで、開院前にしっかり研修を積んでデビューすることができる。
院長も幼稚園児のママとのことで、子育て世代が働きやすい環境。閉院時間は18時(土曜日は17時30分)であり、子どもの送り迎えもしやすい時間帯で働ける。 患者担当制になり、しっかりと患者様のサポートしたい方におすすめ。
スケーリング、SRPなどメインテナンス業務、ホワイトニング、矯正治療など自費治療業務など経験の浅い人、自身のない方は丁寧に指導。アポイントも症状に合わせて30分、45分、60分と選べる。
C矯正歯科クリニック
矯正歯科専門クリニックです。矯正専門ながら、歯科衛生士の矯正歯科経験有無は問わないとのこと。入職したスタッフ全員が未経験からスタート。
院長・副院長共に、矯正歯科専門の歯科医師なので、プロフェッショナルのもとで矯正歯科のいろはを学ぶことが可能。賞与は年2回の1.5か月分、昇給は年1回ありと、頑張り次第で給与アップが目指しやすい。