歯科衛生士の予防歯科での仕事内容とは?
予防歯科とは?予防歯科で働く歯科衛生士の仕事
「患者さんのお口の健康に貢献できている」と感じる瞬間は、歯科衛生士としてやりがいを感じる瞬間かと思います。やりがいにあふれた、予防歯科をメインに診療を行う歯科医院の業務内容やメリット、歯科医院選びのポイントについて解説します。
予防歯科とは
歯科診療における「予防歯科」とは、虫歯や歯周病といったお口のトラブルを未然に防げるよう、口腔内のチェックや歯垢・歯石取りをはじめとしたクリーニング、ブラッシング指導、セルフケアのアドバイスを行うことです。また、そのような検査・処置を診療の中心に据える歯科医院を「予防歯科」と呼ぶこともあります。
予防歯科の重要性
予防歯科に取り組むことは、虫歯や歯周病で歯を失うのを防ぐためにとても重要です。患者さんの中には「虫歯になっても、削って詰め物やかぶせ物をすればいい」と思う方もいるかもしれませんが、一度削ったり抜いたりしてしまった歯は、元に戻ることはありません。治療をするごとに歯は脆くなり、再治療のリスクも高まってしまいます。
また、健康な歯を一本でも多く守ることができれば、年を重ねても食事や会話を楽しむことができ、よくかんで食事をとれることで、全身の健康維持もしやすくなります。お口元の美しさを保てることや、治療にかかる費用や時間の負担を減らせる点もメリットです。
歯科衛生士の役割
歯科衛生士の役割は、PMTCやスケーリング、フッ素塗布などによって虫歯・歯周病を予防する「歯科予防処置」、ブラッシング指導や食事指導で健康維持をサポートする「歯科保健指導」、歯科医師の診療の補助を行う「歯科診療補助」の3つです。患者さんのお口の健康維持のために、歯科診療を広くサポートする役割を担っています。
歯科衛生士の具体的な業務
歯科衛生士は、患者さんのお口の健康をサポートするために、さまざまな業務を担当しています。
定期検診の補助
歯科医師による検査・治療がスムーズに進むように補助をするのも、歯科衛生士の役割です。診療に使う器具や材料を用意したり、歯周ポケットの測定をしたりするほか、治療計画の立案をサポートすることもあります。
ブラッシング指導
虫歯や歯周病を防ぐためには、日々のセルフケアが欠かせません。食事で付着した汚れをしっかりと落とせるよう、正しい歯の磨き方をレクチャーします。患者さんの歯並びや手指の可動範囲に合わせた磨き方を伝えることで、磨き残しを減らしやすくなります。また、歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方もアドバイスします。
フッ素塗布
フッ素塗布は、歯質強化や初期虫歯の治療のために行います。生えたばかりの歯はフッ素を取り込みやすいため、特に小児歯科においてよく行われます。
シーラント
シーラントは、奥歯の溝をレジンで埋める処置のことです。汚れが残りやすく磨きにくい奥歯をシーラント処置することで、虫歯予防を行います。
PMTC
PMTCとは、Professional Mechanical Tooth Cleaningのことであり、専用の器具・薬品を用いて歯科医師や歯科衛生士が行うクリーニングを意味します。自由診療であり、歯科医院によって多少内容は異なりますが、歯垢や歯石のほか、着色汚れの除去も期待できます。
エアフロー
エアフローは、微粒子パウダーを用いて行うクリーニングです。ジェット水流で微粒子パウダーを歯に吹き付ける方法のため、少ないダメージで細かな汚れまで落とすことができます。
SRP
SRPとは、スケーリングルートプレーニングのことです。歯面の歯垢・歯石取りを指すスケーリングと、歯周ポケット内の歯垢・歯石取りを指すルートプレーニングを組み合わせた言葉であり、歯周病の治療・進行予防のために行われます。
SPT
SPTはサポーティブペリオドンタルセラピーのことであり、歯周病の安定期治療を意味します。症状が落ち着いている歯周病の患者さんに対し、各種クリーニングや口腔衛生指導を行います。
患者さんのデンタルIQを高める重要な役割
予防歯科の重要性を正しく患者さんに伝え、患者さんのデンタルIQ向上に努めることも、歯科医師としての大切な役割です。歯科医院で行う処置と日々のセルフケアを両立させてこそ口腔衛生は維持されるため、歯科衛生士は予防歯科における重要な役割を担っています。
日常の口腔ケア方法の指導
歯科衛生士として口腔ケア方法の指導をする場合、行うのはブラッシング指導だけではありません。歯ブラシや歯間ブラシの使い方に加えて、「だらだら食いをしない」「よくかんで食べる」といった食事指導や、食生活における栄養指導を行う必要もあります。患者さんの年齢や生活習慣、口腔内の状況、持病の有無などによって、一人ひとりに応じた指導をすることが大切です。
定期的な歯科受診の推奨
セルフケアだけでは口内の汚れをすべて取り切ることはできないため、虫歯・歯周病のチェックとクリーニングのために歯科医院への定期的な受診を促すことも大切です。患者さんによって適した通院頻度は異なるため、個々に合わせた受診目安を伝える必要があります。
予防歯科で働くメリット
予防歯科で働くことは、歯科衛生士にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
予防歯科のスキルは全国で需要がある
まずは、予防歯科診療のスキルは、全国どこへ行っても需要があるという点です。歯科医院によっては、「矯正歯科」や「インプラント」など、特定の治療のみを行っている場合がありますが、その場合でも予防歯科には対応していることが多く、どの地域でも予防歯科の知識や技術を生かすことができます。家庭の事情などで住む場所が変わった際も、これまで得た経験・スキルを活かしながら転職先を見つけることができます。
患者さんに寄り添える
予防歯科は、患者さんと長期的に付き合っていく分野です。「治療が終わったら通院も終了」ということはなく、長く患者さんを担当していくことになります。その分、患者さんとの信頼関係も築きやすく、患者さんのお口の健康に寄与できていることを実感しやすくもあります。口内環境が良くなったことで患者さんから感謝されれば、歯科衛生士としてのやりがいも強く感じることができます。
口腔衛生指導を通してコミュニケーション力が身につく
ブラッシング指導や食事指導を行っても、患者さんがそれらを実践してくれなければお口の健康維持はかないません。「どういう言葉を使えばわかりやすいか」「どのように伝えればやる気を上げられるか」といったことを常に考え行動に移すことで、コミュニケーション能力や説明力、プレゼンテーション能力が上がります。そういった力は、自由診療を提案する際など、予防歯科以外の診療でも役立ちます。
予防歯科の職場選びの参考ポイント
一口に予防歯科といっていっても、歯科医院によってその特色はさまざまです。失敗しない職場選びのために、以下のポイントを参考にしていただければと思います。
患者担当制
予防歯科に力を入れている歯科医院では、患者さんごとに担当の歯科衛生士を決めている場合が多くあります。このような患者担当制の場合「患者さんとの信頼関係を築きやすい」「成果がわかりやすいためやりがいを感じやすい」といったメリットがあります。反対に、多くの症例に触れたいと感じている場合は担当制ではないほうがいいこともあります。自分の経験値や希望に合わせて選ぶようにしましょう。
また、クリーニングやブラッシング指導などの歯科衛生士が行う業務に割り当てられている時間や基本的な流れを確認しておくことも大切です。「クリーニングに30分の時間が用意されている」と思っていたら、「30分間の中でブラッシング指導や処置の説明もしなければならなかった」など、求人広告のみでは認識相違が起きることもあります。反対に「求人には30分と書かれてあるけど、見学時に確認したら説明や準備の時間は別だった」と言うケースもあります。
転職活動の際は、ギャップが起きないよう医院見学をして確認しましょう。
予防専用ユニット
予防歯科に力を入れている医院では、予防専用ユニットや予防専用ルームが用意されていることが多くあります。これは、患者さんによりリラックスして処置を受けてもらいたいという気持ちの表れです。歯科衛生士にとっても、「動線や設備の配置が予防専用になっているため働きやすい」「一人の患者さんにじっくり向き合うことができる」といったメリットがあります。予防歯科に力を入れている歯科医院で働きたい場合には、こういった点も確認してみるのがおすすめです。
資格取得支援体制の有無
「日本歯周病学会認定歯科衛生士」「日本小児歯科学会認定歯科衛生士」「日本口腔インプラント学会認定歯科衛生士」など、持っているとキャリアアップやスキルアップにつながる歯科衛生士の資格は複数あります。歯科医院によっては、こういった資格を取得する際の費用補助や資格取得者に対する手当を設定している場合がありますので、確認するようにしましょう。
院長の保持する資格
歯科衛生士として長くやりがいを感じながら働いていくためには、職場の方針やヴィジョンを確認しておくことが大切です。院長や歯科医師が保有する資格、医院としての方針をホームページやSNSなどで確認することで、齟齬が生じないようにしましょう。
まとめ
予防歯科は、高齢化が進むこれからの日本で、より重要な役割を担っていくと考えられます。その中心として患者さんの健康維持をサポートする歯科衛生士にとっては、大きなやりがいを感じられる職場といえます。歯科衛生士としてのスキルや経験を今後さらに活かしたいと考えている方は、予防歯科に力を入れている歯科医院をぜひ探してみてください。