歯科衛生士は職場でネイルしていいの?歯科医院での規則と実情
少し前は医療従事者はネイルNGが一般的でしたが、時代は変わり「ネイル自由」の歯科医院も増えています。背景にはネイル自由の歯科医院を探している歯科衛生士さんが増えていることなどありますが、職場での規則や実情は?
歯科医院でのネイルに関する規則と実際の状況
歯科衛生士のネイルに関して院内での規則が設けられている場合、以下のようなルールであることが多くなっています。
職場でのネイルに関する規則
- 長い爪はNG
- 色は透明、ベージュ、薄いピンクのみ
- ストーンなどの装飾はNG
- ネイルチップはNG
これは、単に見た目上の問題だけでなく、衛生的な医療環境を保つという目的も含まれています。
歯科医院でのネイルに関する実情
ネイルの規則を前述しましたが、実際にこのような規則を定めている歯科医院はあまり多くありません。
どちらかというと、職場内での雰囲気や院長からの指摘により、「ネイルはOKなのか、NGなのか」「ネイルをする場合はどの程度のデザインであればOKなのか」を歯科衛生士本人が判断して対応しているという場合が多いようです。
また、そのような指摘がない場合でも、長い爪や派手な色は診療に差しさわりがあるため、自ら避けているという歯科衛生士の方が多くなっています。
同僚や上司のネイルに対する意⾒や反応
規則としてネイルNGでない歯科医院でも、ネイルをしていること自体に否定的な印象を持つ歯科医師や先輩スタッフは一定数います。歯科衛生士の方の中には、「今日もネイルしているんだね」「その爪で診療できるの?」などと、やんわりと指摘する発言をされたという方もいます。
それに対し歯科衛生士の中には、「シンプルなネイルであればOKにしてほしい」と思っている方が多くいます。
もちろん、「爪が長すぎて口の中をひっかいてしまう恐れがある」「ゴロゴロと装飾がついていて、治療中に取れる恐れがある」といったデザインのネイルNGですが、短く切りそろえられたヌーディーなカラーのネイルであれば、そのような心配もなく清潔感もあるため、容認してほしいという場合が多いようです。
医院としては個人のおしゃれについては各自の判断にゆだねているのと、診療を妨げない範囲で容認する判断から、「ネイルOK/ネイル自由」の記載がある歯科医院も増えてきています。
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ネイルが⻭科衛⽣⼠の業務に与える影響
次に、歯科衛生士がネイルをしていることで、どのような影響を業務に与える可能性があるのでしょうか。
ネイルが業務に与えるデメリット
爪が長すぎる場合や、ビビットカラーのネイルやネイルストーンなどの装飾を施したネイルをしている場合、患者さんに不衛生な印象を持たれてしまう可能性があります。
また、爪が長すぎることで処置をする際に患者さんの口内や唇に引っかかってしまったり、処置の最中にネイルストーンが取れて口の中に入ってしまったりする恐れもあります。このような、見た目で与える印象と衛生面・安全面でのリスクが、歯科衛生士がネイルをすることのデメリットです。
ネイルが業務に与えるメリット
しかし、ネイルをすることのメリットもあります。例えば、ネイルによるコーティングは、爪の補強の役割を果たしてくれます。薄かったり欠けやすかったりする爪でも、ネイルをしていればある程度の硬さを保てるため、爪に引っ掛けて物を取り出す作業などがしやすくなり、業務がスムーズに進むでしょう。
また、ネイルをしていることで爪につやがプラスされ、上品な印象を与えることもできます。カラーにもよりますが、ナチュラルなヌーディーカラーであれば悪印象を与える可能性も低く、ホワイトニングやセラミック治療などの自由診療を主体としている歯科医院であれば、ネイルをしているほうが患者さんに好印象を与えることもあります。
ネイルが業務に⽀障をきたさないために
ネイルOKの歯科医院で働いている歯科衛生士の方も、ネイルが業務に支障をきたさないようにさまざまなことに気を付けています。
特に多くの歯科衛生士の方が気を付けているのは、爪の長さです。長い爪は診療に悪影響を与える可能性があるため、できるだけ短く切りそろえるようにしています。ジェルネイルをしている場合でも、伸びてきたらこまめにカットするなど、長さには特に注意を払っているようです。
また、デザインに関しても派手にならないようにしている方がほとんどです。色は薄いピンクやベージュで装飾はつけないネイルにすることで、上品で清潔感のある指先を維持しています。
ネイルの⻑さやデザインによる業務への影響の違い
歯科衛生士の業務には、歯肉マッサージやリップマッサージなど、患者さんの口の中に手を入れて行うものがあります。
もちろん、素手ではなくグローブを付けて行うことが基本ですが、爪が長いとグローブを破ってしまったり、患者さんの口を傷つけてしまったりする恐れがあります。そのため、多くの歯科衛生士は爪を短く切りそろえています。同様に、患者さんの口の中にあたる、もしくは取れる恐れのある装飾に関しても、ほとんどの歯科衛生士が控えています。
歯科医療の専門家としての意識とネイル
次に、予防医療の専門家としてネイルをする際に考慮するべきポイントを掘り下げます。
プロ意識とネイルの関係
歯科衛生士になるための知識・スキルを習得する歯科衛生士養成学校では、歯科衛生士の身だしなみについても厳しい指導が行われます。
特に髪型やネイルに関しては、医療従事者として清潔な印象を与えるデザインであることが在学中の校内実習や外部研修の時点から指導されているため、多くの歯科衛生士はその前提に立ち、自爪もしくは最低限のデザインのネイルで業務にあたっています。
また、そのような前提のうえで「ネイルOK」とする歯科医院がここ数年で増えてきています。特に多いのはホワイトニングや矯正治療、美容診療を主体としている歯科医院です。これは、歯科医院のイメージが「治療をするために行く場所」から「予防や歯の美しさのために行く場所」へと変わりつつあることが一つの要因だと考えられます。
「健康を維持し、より美しくなるために行く場所」として運営を行う歯科医院が増えたことで、患者さんを迎えるスタッフの身だしなみの基準もより美しさを意識したものに変わってきたのだと考えられます。
患者さんからのネイルに関する反応
歯科衛生士がネイルをしており、爪が長かったり、色や装飾が派手だったりする場合には、患者さんから苦情が入ることがあります。医療機関なので、ナイーブな状態になっている患者さんは、少しのことが気になることもあります。
また、理由はわかりませんが、中には「ネイルをしている歯科医師や歯科衛生士には治療をしてもらいたくない」という方もいます。
しかし、ネイル自体が一般化している近年では、ナチュラルなネイルであれば全く気にならないという患者さんもいます。また、治療メニューについてのカウンセリングなどを受ける場合は、上品なネイルできれいに身だしなみを整えている歯科衛生士のほうが、美容についての相談がしやすいという患者さんもいます。
ネイルと衛⽣管理のバランスを保つための⼯夫
歯科衛生士がネイルをする場合は、診療に支障をきたさないデザインにすることが大切です。基本的に長さはできるだけ短い状態を保ち、装飾は施さず、色は透明やベージュなどヌーディーなカラーにしましょう。
診療中はグローブを付けるためネイルが見えることは基本的にないかと思いますが、グローブからでも透けて見えるようなビビットなカラーや、グローブを突き刺すような長い爪は、ネイルがOKとされている歯科医院でも控えたほうがいいかと思います。
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ネイルを楽しむための⼯夫とアドバイス
最後に、歯科衛生士がネイルを楽しむための工夫について解説します。
業務に⽀障をきたさないネイルデザインの選び⽅
ジェルネイルは、ネイルをしてから2、3週間ほど持ちます。逆にいうと、その間は無理に取り外すなどすると爪にダメージを与えてしまう可能性がありますので、仕事の日も休みの日もずっと同じデザインで過ごすことを踏まえ、ナチュラルなデザインを選びましょう。
何度もお伝えしていますが、長さは出さず、装飾もつけないことが診療に支障をきたさないためには大切です。また、治療を安全に進めるため、そして患者さんに悪印象を与えないためにも、爪が伸びてきてしまった場合にはネイルサロンでリペアをしてもらったり、爪やすりで長さを調節したりしましょう。
ポリッシュの場合には、簡単に塗り替えができます。その反面、デザインの一部が剥がれたりよれたりしやすく、そのような状態では身だしなみのつもりで塗ったネイルが、逆に不衛生な印象を与えてしまうこともあります。そのため、そういったダメージが目立たない透明なカラーを選ぶか、お休みの日に派手なネイルを楽しむのもいいかと思います。
ネイルケアの頻度や⽅法
サロン利⽤、セルフケアなど
ネイルをする場合もしない場合も、人を相手に業務を行う立場として、指先をきれいに保っておくことは大切です。「美は先端に宿る」という言葉もあるように、指先や毛先など、身体の先端は人から目が届きやすく、また、そういった部分にまで気を配っている人は全体的に上品で美しい印象になります。
セルフケアでは、ハンドクリームやネイルオイルなどを使って手や指先を保護・保湿し、乾燥やささくれがない状態を目指しましょう。ネイルをしない場合でも、爪やすりを使って爪の長さや形をきれいにそろえたり、余分な甘皮を処理したりすると、指先を美しく見せることができます。
ネイルサロンを利用する場合には、「職業柄長さのあるデザインや派手なデザインはできない」旨を最初に伝えておきましょう。また、歯科衛生士の業務の特性上、どこかに引っかかってしまうような形は向いていません。そのため、スクエアやスクエアオフ、ポイントなどは避け、丸みを帯びたオーバルやラウンドで形を整えてもらいましょう。
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「ネイル」のよくある質問
- 歯科助手はネイルをしてもいいですか?
- 歯科助手のネイルはNGにしている歯科医院が多く、OKとしている歯科医院でも透明やピンクベージュなど落ち着いた色味に限定されていることがほとんどです。歯科衛生士と比べ、歯科助手は患者さんの口に触ることはありませんが、医療現場で働く立場として清潔感のある身だしなみが求められています。
- 歯科衛生士はメイクをしないといけませんか?
- すっぴんだと、身だしなみが整っていないという印象を与える可能性があります。派手すぎるのはNGですが、最低限のベースメイクや眉メイクなどはするようにしましょう。