口腔管理体制強化加算(口管強)こうかんきょうとは?
2024年度(令和6年度)の診療報酬改正により、「か強診(かかりつけ歯科医機能強化型診療所)」の名称が変わり、「口腔管理体制強化加算(口管強)/こうかんきょう」という制度が6月から新しくスタートしました。この記事では「か強診」に代わって新設された「口腔管理体制強化加算」と、それに伴う周辺算定項目の変更点について紹介します。
「口腔管理体制強化加算」は、「か強診」と同様に、虫歯や歯周病など歯科疾患の重症化予防を目的とした制度です。新基準を満たすため、施設に求められる研修や実績などの要件に関しても変更されています。早い段階で「口腔管理体制強化加算」の認定を受けている歯科医院は、時代の考え方にあわせて治療や予防の技術を常にアップデートをしていると判断することができます。
「口管強」に認定された歯科医院は、患者さんにとって新しく通う歯科医院を決めるとき、現在通院している歯科医院に対しての評価材料になるでしょう。
口腔管理体制強化加算とは?
「口腔管理体制強化加算(口管強)」とは、これまで歯科医療の中心であった「歯を削り、詰める治療」から、「虫歯にならない・歯周病を進行させないための継続的なメンテナンス」にシフトさせることを目標に、子どもからご高齢の方まで幅広い年齢層の口腔機能を管理することを目指すための加算です。
今後、歯科医院サイドに大きな影響を与える項目が多い傾向です。新たな施設基準では、か強診の項目以外に加点が設定されている項目があるため、今後の診療フローに口腔機能管理を加える必要性が高くなったといえます。さらにこれまでの「か強診」の施設基準に含まれている訪問診療の実施に関しても新基準で踏襲されることから、若干ハードルは高くなっています。すでに「か強診」を取得済みの歯科医院は、口腔機能管理料の算定実績について経過措置が設けられるため、その間に体制を移行させなければいけません。
基本的に「か強診」の施設基準に伴う加点の踏襲が中心ではありますが、口腔機能管理の実績に伴うといった部分が加味され、下記の項目についても新たな加点を受けることになります。
「口腔管理体制強化加算」による加点項目
- 小児口腔機能管理料
- 口腔機能管理料
- エナメル質初期う蝕管理料
- 根面う蝕管理料
- 歯科衛生実地指導料
- 歯周病重症化予防治療
今回の改定により、(小児)口腔機能管理料自体の点数もMFTなどの指導計画が含まれることで上方修正され、さらに該当患者に対する指導訓練の実施に対して歯科口腔リハビリテーション料3が新設されたことで、指導についても算定が可能になりました。
施設基準の加点を受けることで、これまで以上に口腔機能管理の重要性が高くなり、口腔機能の検査から管理、指導・訓練まで一気通貫した算定ができます。
また、う蝕などの管理においても、これまでのエナメル質初期う蝕管理加算からエナメル質初期う蝕管理料へ移行したほか、根面う蝕についても根面う蝕管理料として新設され、そこに口腔管理体制強化加算を受けられます。
衛生実地指導については、口腔機能発達不全もしくは口腔機能低下症の患者に対して、口腔機能指導加算を受けられます。
なおこれまで「か強診」では歯周病安定期治療(SPT)は加算を受けていましたが、口腔管理体制強化加算への移行により、歯周病重症化予防治療(P重防)についても加算が加えられました。
口腔管理体制強化加算のメリット
医療機関にとってのメリット
これまでの「か強診」の申請に対して大きなネックとなっていた訪問診療の実施が必須要件ではなくなって代替えできることになり、全ての項目を満たせる可能性が高まりました。当該施設基準を申請していると、少なからず経営面に関する恩恵も受けられます。
算定できる加算もあれば、P重防の算定頻度の制限緩和などもあり、より患者に最適な処置が実施できると同時に、収益性も高められるといえるでしょう。
患者さんにとってのメリット
「口管強」に認定された診療所では、治療後の状態を維持するために、歯科医師や歯科衛生士によるPMTCといったクリーニング、フッ素塗布といったメンテナンスを、毎月保険適用で受けることが可能となりました。さらに訪問診療の対象者が拡大および診療報酬も改定されたため、リハビリ期にある高齢期の方のお口の健康管理にまつわる予防や治療に取り組みやすくなりました。そのほか小児歯科の予防処置に対する診療報酬が改定されたので、お子さんの舌の癖、指しゃぶりなどでお困りの親御さんも気軽に相談できます。
今まで自由診療だった項目も保険適用になったことにより、患者の経済的な負担が軽減されるなどさまざまなメリットが増えました。
今後の展望と動向
「口腔管理体制強化加算」の新設は、単に口腔機能管理の算定が要件に加わっただけでなく、診療体制や予防体制自体に口腔機能管理を含める必要があることを示したといえます。 これまでフッ素塗布によるむし歯の管理、SPTなどによる歯周病の管理が原則でしたが、いずれにも前提条件として口腔機能管理が加えられている認識が必要になりました。今後の予防型歯科には施設基準の取得を目的とする以上に、予防の在り方に変更を求められることになります。
単にポケットの深さによるSPTやP重防の振り分けを行うメンテナンスではなく、口腔機能検査の実施と指導、初期や根面のう蝕はもとより、糖尿病といった既往歴による対応など、あらゆる観点から患者の状態にあわせた予防計画を設定する必要があります。そのためこれまで以上に歯科衛生士の役割が重要になるとともに、教育もしないといけません。
なるべく早い段階で取り組むことにより、真の予防歯科としてのブランディングが可能となるでしょう。
まとめ
今回の改定における大きなポイントは以下の項目です。
- 現行の「か強診」が削除され、「口腔機能管理体制強化加算」に全面移行
- 「外来環」が廃止され、「歯科外来診療医療安全体制加算」と「歯科外来診療感染対策加算」の2つに分けられ、より高い水準の施設基準に変更
- 「医療DX推進体制加算」や「オンライン初診・再診料」などを新設
- 医科歯科連携に関する範囲が拡大
- 訪問診療の区分の細分化および算定範囲の拡大
- 歯科技工士との連携加算の新設
- 矯正相談料の新設
国から示されていた指針が全面的に盛り込まれたほか、今後「か強診」の施設基準と同様の加点を維持するためには「口腔機能管理」の実績が必須になりました。今後メンテナンス体制の在り方を見直す必要が出たといえます。
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歯科衛生士のよくある質問
- か強診は2024年に廃止されますか?
- 要件と名称が変更になるだけで、今後も存続します。
- 口腔管理体制強化加算のメリットは?
- 今まで自由診療だった治療を保険診療で受けられるようになったため、経済的な負担が軽減されます。