歯科衛生士の医院見学で質問すること、確認すること
歯科業界の転職では、医院見学という習慣があります。一般的に自宅からの距離や院内の雰囲気、設備、働き方などを確認する機会ですが、より就職先とのマッチ度を確認するには、見学の機会を十分に活用することがポイントです。ここでは、医院見学で確認する基本事項や、確認するポイントからわかること、踏み込んだ質問をする方法などをご紹介します。
歯科衛生士の医院見学、2つのポイント
転職において就職先と求職者の両者がもっとも避けたいのが早期離職でしょう。
入職するにあたって理解していた歯科医院の情報と実際が変わらなければ、基本的に退職するとはなりません。事前情報よりもさらに上回っていたら入職した人はより満足するでしょう。逆に事前情報と実際に入職した歯科医院の情報の間にマイナスのギャップがあったときに不満が生じます。その結果、早期退職につながります。
このような事態を防ぐには、転職活動の中で見学が非常に重要です。まずは医院見学全般でのポイントを2つご紹介します。
見学時にスタッフの方と話す
まず1つ目は、見学時にスタッフの方と話すこと。理事長、院長、採用担当者は歯科医院のいい情報だけを伝えがちなので、スタッフと話をしてリアルな情報も聞くことが重要になります。そうすることでギャップが生まれにくくなります。
医院のネガティブな面の確認
2つ目は、歯科医院のネガティブな面の確認も挙げられます。まずは気になる点をしっかりを確認するのはもちろん大切ですが、自分にとってネガティブな面をどこかのタイミングで確認せずに、いいことばかりを聞いて入職してしまうと、マイナス面に遭遇したときにショックを受けることもあります。その点で相違がないよう、念押しの確認をする機会にしましょう。
医院見学で確認したい基本のこと
それでは一般的に医院見学で確認するポイントをお伝えします。
通勤時間・経路
通勤に関しては、通勤経路やどれくらい時間がかかるのかも大切です。最寄り駅から歯科医院までにかかる通勤時間のほか、車通勤であれば朝の時間帯で渋滞が発生するのかどうかは、できればその時間帯で確認し、実際にかかる通勤時間を確認することがポイントです。
周辺の環境
同時に歯科医院はどういう場所にあるのか、コンビニエンスストアは近くにあるのか、住宅街なのか、ビジネス街なのかなど、周辺にどのようなものがあるのかを見ましょう。周辺の雰囲気を見ることも大切です。
設備
設備面については、診療の機材はどこのメーカーを使用しているのか、歯科医師はどんな材料を使っているのか、どういう建物なのか、車通勤の場合駐車場はどのような形で、車は止めやすいのか、止めづらいのかなども含めてしっかり確認します。
患者さん・スタッフの方々の雰囲気
患者さんやスタッフの方々など人の雰囲気もチェックしましょう。理事長や院長のほか、スタッフはどんな人がいるのか、来院される患者さんはどういう人たちなのかを確認します。接する人たちの雰囲気がわかると勤務した際のイメージがしやすくなります。
業務内容・衛生管理
実際に診療はどういった形で進めていくのか、教育はどうなっているのか、アポイントメントの取り方はどうか、業務内容の特徴はどういうものかなどを押さえておくことは非常に大事です。
「自分自身が歯科衛生士としてどこまで仕事をやるか」に関しては積極的に確認しましょう。例えば受付もやらなくてはいけないのか、アシストはどれくらいの割合でやるのか、滅菌・消毒など衛生管理も含めてどういうことをするのかなど、気になることがあればどんどん質問してください。できれば歯科衛生士の方に質問してみましょう。
募集要項・条件面
募集要項、条件面についての説明を受けることは、基本となっています。社会保険や交通費を含めて説明を受けましょう。
見学の時間の目安
見学時間に関してですが、30分あれば大体のことが把握できると思います。30分を見学時間とする歯科医院もあれば、45分、60分行う歯科医院もあります。15分ではやや短いかもしれません。
より踏み込んだ質問はスタッフに確認
見学に行った際にスタッフからリアルな話を聞くことがポイントです。院長、理事長、採用担当の方と話すだけではなく、見学時に「スタッフの方と少しお話できる時間はありますか?」と聞いてみてください。見学を申し込む段階で伝えても良いでしょう。
絶対に知りたいことで今後に関わってくる情報なのに、遠慮して聞かないでいると、離職にもつながりかねません。スタッフと会話できる時間を取ってくれそうな雰囲気であれば、案内されているときに積極的に確認しましょう。
有休のとり方を質問する場合
質問例:有休はどのくらい前からどういう形で申請するんですか?
有休のとり方を聞く場合は、例えば「有休はどのくらい前からどういう形で申請するんですか?」といった聞き方があります。求人媒体などでは有休100%と書いてある場合も、スタッフの方が100%取得されているのか併せて確認しましょう。
例えば求人に有休100%取得と書いてあり、面談でも100%取れると話してもらったとします。しかし働くスタッフに尋ねると「取れるけれど、院長に言うといい顔しないんだよね…」という話がぽろっと出ることもあります。それを聞いて自分なら平気だと判断する人、「それは100%じゃない」と判断する人それぞれですが、さまざまな現実を見て判断するほうが納得のいく転職になるはずです。
最終的な労働条件を質問する場合
質問例:契約書は事前に確認できますか?
「募集時と実際の勤務条件が一緒なのかどうか」は転職活動中に気になることです。これも見学時スタッフに「契約書は事前に確認できますか?」と聞いてもよいでしょう。「こういうタイミングで説明をしてくれるから、最後にもう一度確認したうえで捺印すれば大丈夫ですよ」などと教えてくれると思います。
💡 POINT|医院見学は売り手市場を逆手にとる
見学してだいたいのことが分かったけど、決めきれないときはどうすればよいのでしょう。「今度よろしければ朝礼から参加させてもらい、昼ご飯はどんな感じでとっているのかも見せてもらっていいですか?」などと、理由とともに再見学をお願いしてもよいと思います。
何か不安があって決めきれないのであれば、決断しないほうがいい場合もあります。再見学を申し出ても先方のほうからお断りされるケースもありますが、歯科医院も欲しい人材であれば「もう一度来てください」という流れになるでしょう。
再見学は歯科医院側にもメリットはあるのですが、「半日来てもらったところでどうしらたらいいのだろう…」と医院が煮え切らない様子ならご縁がなかったと割り切ってよいでしょう。
納得するまで見学したり、スタッフと話しをしたりすることに躊躇しなくても大丈夫です。現在、売り手市場ですから妥協するより納得して決めることが結果、受け入れ先にとってもプラスになります。複数の医院の中で迷っている場合は比較するポイントを整理して、どの軸で決めるかを明確することも一つの方法です。
医院見学でわかること:確認ポイント別
メンテナンス時間
スケーリングなど口腔内メンテナンスが1日何件あるのかが気になる場合は、アポイント帳を見せてもらいましょう。患者さんのメンテナンス時間が30分とはいいつつ、説明する時間を別に設けているなら、実際には30分よりプラスだとわかります。逆に30分の中で、せわしなく回す仕組みだったと気づくこともあるでしょう。
その時、3せわしないと思っていたけど、実際に回しているのを見て30分で終わらせた方が歯科衛生士として評価されるスキルなんだと感じる人や、30分でこなすスキルを覚えることにメリットを感じる人もいます。先入観だけで判断できない部分を知ることが重要です。
スタッフの数
スタッフの数が少ない医院では「しっかりとした教育体制のない歯科医院で、1か月間の研修期間後に先輩が辞めて私1人になりました」ということも場合によってはあり得ます。こうしたケースを避けたい場合はスタッフ数も確認のポイントです。スタッフの多い医院は何かあったときに代替えがいるので休暇も取りやすく、人が多いので必然的に教育に力を入れる傾向があります。
一方で、人間づきあいをしなくてはいけないので、それが苦手な場合は小規模な歯科医院を選ぶ方が良いでしょう。いくつかの分院を持つ歯科医院であれば、一般企業のように配置転換で違う部署に行くのと同様に、違う歯科医院で働くことで同じ法人内に残ることもできます。しかしこれは歯科医院に実際に入社してみないと分からない点かもしれません。
歯科医院は個人と法人では違いますので、新卒の方はこういった点を確認するのもポイントです。現在、個人商店のような小規模事業者の歯科医院も増えています。個人事業主が多い業界の中での就職活動ですから、一般企業の就職活動とは異なるという認識も必要になります。
新卒の方は数年後に身につくスキルに注目
短期的に見る自身の評価も大事ですが、長い目で見ると、評価されるスキルを数年先に持っているか否かが大事になります。
数年後のスキルを考えず、例えば給与面だけで就職先を選んでしまうと成長の機会を失いがちです。就職活動中ではポジティブな話だけを聞いてしまいがちなので、他の歯科医院での3年目の標準的なスキルといった情報を知らないまま働き続けてしまうケースもあります。そのような視点でその歯科医院を確認するにはスタッフの方々と話すしかないでしょう。
業界の中で長く働くこと、1つの歯科医院でそれなりの期間働くことも大切ですが、そこで培ったスキルがほかで通用するのかも持っておきたい視点です。