歯科衛生士が「病院で働きたい」と思ったら?
歯科衛生士を目指している学生の方やすでに歯科衛生士として働いている方の中には、病院で働くという目標を描いている方もいると思います。そこで今回は、病院で働きたいと思っている歯科衛生士の方に向けて、病院勤務の特徴や求人の探し方などをご紹介します。「さまざまな症例を経験できる」「年収が高め」「福利厚生が充実している傾向にある」など、病院勤務にはメリットがいくつもありますので、ぜひ就職活動や転職活動の参考にしてみてください。
目次
歯科衛生士の役割と病院での勤務の現状は?
まずは病院勤務の実態について、歯科衛生士の基本的な役割、病院で働く歯科衛生士の割合、病院にある歯科の数から解説します。
歯科衛生士の基本的な役割
歯科衛生士は、「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3つの業務を軸に、患者さんの歯や口内の健康を支える役割を担います。一般的な歯科医院の場合には、口内のクリーニングやブラッシング指導、フッ素塗布、歯科医師の診療のサポートなどが具体的な業務内容となります。
病院で働く歯科衛生士の割合
歯科衛生士の90%以上は歯科医院に勤務しており、病院勤務をしている歯科衛生士の数は多くありません。割合としては全体の5%ほどです。歯科衛生士は求人倍率が高い傾向にありますが、その中でも病院は狭き門であるといえます。
歯科のある病院の数
総合病院の歯科・口腔外科では、通常の歯科治療等に加え、口腔内や顎の外傷や病気の診療を行います。病院の歯科は減少傾向で、口腔外科が年々増えています。
病院での具体的な業務内容
病院で働く歯科衛生士も「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」が軸であることには変わりありませんが、具体的な業務内容としては歯科医院とは少し違いがあります。それは、歯科医院に比べて病院で歯科治療を受ける患者さんは、精密な検査や大がかりな手術を必要としている場合が多く、また一般的な治療を受ける患者さんであっても全身疾患を抱えている場合が多いためです。
そのため病院での歯科衛生士の業務内容は、周術期の患者さんのブラッシング指導やクリーニング、口腔内の腫瘍や外傷の治療の補助、一般的な歯科医院では治療が難しい抜歯処置の補助、食事指導、咀嚼・嚥下指導、義歯の装着指導などがメインとなります。
病院で働くために必要なスキルと知識
病院での歯科衛生士業務は、周術期の患者さんの口腔内管理、歯科口腔外科疾患を抱える患者さんの診療補助がメインとなるため、それらに合わせたスキルや知識が必要になります。
口腔外科や全身疾患に関する知識
例えば、歯科の一般診療に関する知識だけでなく、歯科口腔外科疾患や口腔がんに関する知識、さらには生活習慣病や感染症などの歯科以外の医療知識も必要となります。抱えている疾患によって感染や出血のリスク、口内環境悪化のリスクなどが異なるため、幅広い医療知識を使って患者さん一人ひとりに応じた処置やケアをしていくスキルが求められています。
入院・外来患者さんの衛生管理の知識
また、院内感染防止にも努めなくてはなりません。衛生管理を徹底するという点では一般的な歯科医院も同様ではありますが、病院勤務の場合はその規模や患者さんの健康状態の観点から感染リスクが高い状態にあります。そのため、診療室や手術室の管理、治療器具の滅菌などに関する知識を積極的に取り入れ、正しく実行していくことが重要です。
医師、看護師など多様な専門職との連携力
そして、病院で働く歯科衛生士にはチームワークも欠かせません。歯科医師や歯科衛生士はもちろん、医師や看護師、薬剤師、言語聴覚士、管理栄養士など、さまざまな職種の人々と連携をとる必要があります。また、入院している患者さんの場合には24時間体制での健康管理が必要です。ときには歯科衛生士が対応できない時間が生じる場合もありますが、そのような場合でもほかのスタッフにフォローに入ってもらうなどして、継続的に健康管理を行う必要があり、チームで患者さんを見ていく意識が重要となっています。
歯科衛生士が病院で働くメリット
歯科衛生士が病院で働くことには、いくつものメリットがあります。
幅広い症例に関わることができる
まず、病院で働くことで歯科衛生士としての専門性を高められます。幅広い症例に携わることができ、患者さんも乳幼児から高齢の方までさまざまなため、医療に関する豊富な知識と経験を得ることができます。その結果、やりがいを感じながら働くことができますし、キャリアアップやキャリアチェンジも有利に進めやすくなります。
福利厚生が充実している
また、福利厚生が充実している病院が多いというのもメリットです。住宅手当や資格取得手当、託児所などが用意されている場合も多く、スキルアップや出産後の復帰のサポートが得られます。多くの病院は土曜日・日曜日は外来診療をしていないため、ワークライフバランスがとりやすい点も魅力といえるでしょう。また、一般的な歯科医院に比べて病院の賞与は高い傾向にあります。
給料は平均より高い傾向
歯科衛生士会の調査によると、「病院・大学病院」で働く常勤歯科衛生士の給与は、常勤全体と比較して、130-300万円の割合が低く、400-500万円の割合が高くなっています。
常勤全体と病院勤務の年収|金額帯の比較
病院での求人情報の探し方
求人サイトや病院の公式ページをまめにチェック
病院での歯科衛生士求人を見つけるためには、まずは求人サイトや病院の公式ホームページをこまめにチェックするようにしましょう。歯科衛生士を募集している病院の数はそう多くないため、定期的にサイトを訪問し情報を取りこぼさないようにすることが大切です。
また、地域の医師会や歯科医師会では、職業紹介をしている場合があります。ホームページから検索できる場合もあれば、電話などで問い合わせることで紹介を受けられる場合もありますので、こちらも活用するようにしましょう。
応募したい病院が見つかった場合は、履歴書の準備と面接対策を行います。履歴書では、これまでの経験や持っているスキル、病院に対してどのような貢献ができるのかを明示することが大切です。面接では、自信をもってはっきりとそれらを伝えるようにしましょう。また、面接の際は清潔感を重視した、信頼感を与える身だしなみを心がけましょう。病院ですので、派手なネイルや化粧は控え、髪型や服装などに関してもだらしない印象を与えないように気をつけましょう。
まとめ
病院は、福利厚生の充実度や年収の高さといった安定的に働ける環境を備えながら、専門的かつ幅広い医療知識とスキルを手に入れられる、歯科衛生士にとって魅力的な職場です。歯科衛生士としてのキャリアアップを図るには申し分ない環境ですので、興味がある場合はこまめに求人情報をチェックしてみましょう。