歯科衛生士がブランクを経て再就職するには?就業者数40代以降で増加
歯科衛生士の離職率の高さが指摘され、現在、都市部、非都市部に関わらず、70%の都道府県で歯科衛生士が不足しているといわれています。
歯科衛生士は、20歳代後半~30歳までに結婚・出産・育児などの理由で一旦離職。家庭が落ち着いた35歳~40歳以降で復職する傾向があり、さらに近年40代以降の就業者は増加傾向です。
目次
就業者数は増えるも人材不足
令和2年度の就業歯科衛生士の人数は14万2,760人でしたが、令和4年末の就業歯科衛生士は14万5,183人で、令和2年と比べると 2,423人(1.7%)増加していることが明らかになりました。
歯科衛生士の免許登録者数、就業者数の年次推移
令和2年衛生行政報告例、歯科医療振興財団調べ
一方、歯科衛生士名簿登録者数は29万8,664人でした(※令和2年歯科医療振興財団の事業報告)。
すなわち歯科衛生士の資格を有していても、未就業ないしは歯科衛生士という仕事から離れている人が約15万人も存在しています。就業者数は増加傾向とはいえ、就業率は50%未満で推移しています。この数字だけ見ても、昨今の歯科医院の人手不足が深刻であるとわかります。
なお「厚生労働省 歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業」の資料によると、歯科医院の歯科衛生士数は0人超~1人が多く、求人倍率は増加傾向となっています。
なぜ就業率は大きく増えず、人材不足が続いているのでしょうか。
年代別の就業者数
年代別での就業者数を見ていきます。就業歯科衛生士は25歳~29歳がピークとなっていますが、30歳~34歳になると離職する人が増えはじめるため、女性特有の右下がりのM字カーブとなっています。
(年代をクリックすると折れ線グラフの表示が切り替わります)
年代別 就業歯科衛生士
厚生労働省「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業」資料より
歯科衛生士の働き方として、20代前半で入職して、結婚や育児等をはさんだ後、落ち着いたタイミングで再入職する傾向があります。
毎年一定の割合で結婚・出産を機会に離職することになります。しかし、近年では非常勤として働く方が増加傾向にあり、歯科医院が欠員を補う常勤スタッフを採用できる確率は低下傾向にあります。
この増加は、多様な働き方を望む女性の意識を反映していると言えるでしょう。
なぜ、歯科衛生士の人手不足が起こるのか…
・求人数の増加
・働き方に対するニーズの多様化
・歯科衛生士の職場選択における優位性
この3点が要因と考えられます。
40~50代の就業者は年々増加
この現状が改善される兆しとして、近年復職者の増加がみられます。
年代別に歯科衛生士数を見ると平成28年以降、25歳~44歳まで就業者数のM字カーブはゆるやかな傾向がみられ、これは他の職種にもあてはまります。
40~50代の就業者は増加傾向です。とりわけ50代は平成24年と比較し、令和2年では2倍近い就業者数となっており就業者数を底上げしています。
年代\年度 | 平成24年 | 平成26年 | 平成28年 | 平成30年 | 令和2年 |
---|---|---|---|---|---|
25歳未満 | 12,369 | 12,614 | 13,996 | 14,654 | 15,025 |
25~29歳 | 20,650 | 19,587 | 17,807 | 17,737 | 19,688 |
30~34歳 | 15,546 | 16,693 | 17,865 | 18,190 | 17,182 |
35~39歳 | 16,226 | 16,701 | 16,673 | 17,220 | 19,047 |
40~44歳 | 15,478 | 17,104 | 18,371 | 18,992 | 18,840 |
45~49歳 | 12,664 | 14,461 | 16,267 | 17,586 | 19,232 |
50~54歳 | 8,396 | 10,131 | 11,400 | 13,654 | 15,051 |
55~59歳 | 4,199 | 5,557 | 6,971 | 8,565 | 10,608 |
60~64歳 | 1,833 | 2,306 | 2,900 | 3,894 | 5,251 |
65歳以上 | 762 | 1,145 | 1,581 | 2,137 | 2,836 |
合計 | 108,123 | 116,299 | 123,831 | 132,629 | 142,760 |
日本は高齢化の進展に伴い、歯科医療機関を受診する患者が増加。今後、在宅や介護保険施設などにおいて歯科医療サービスを受ける人の増加が見込まれています。
歯科衛生士は歯科医院、在宅、介護保険施設などでの従事が予想されており、歯科衛生士の確保が急務となっています。
20~30代離職の課題
歯科以外の職種もあわせた女性全体の就業者数では、25〜39歳で働く人の割合が81.5%と8割を超えていることが判明しています。(※総務省による令和4年の就業構造基本調査)
女性の年齢別労働力率は、昭和53年から25歳~29歳・30歳~34歳を底辺にM字カーブでしたが、令和3年になると25歳~29歳・30歳~34歳の割合は80%に上昇。以前に比べるとカーブが緩やかになり、労働している割合が高いことが分かりました。
女性全体の就業意向が高まるなかで、若い世代が長く働きたいと思える環境をつくることも課題と言えます。
やりがいある一方で一定数が転職
歯科衛生士の意識として「現在の仕事にやりがいを感じている」「歯科衛生士の仕事が好きである」「歯科衛生士として誇りを感じている」などの割合が約80%にのぼり、仕事に対する意識は高い結果でした。
一方で「転職または勤務先を変えたいと考えている」割合は、20~39歳で20%を超えており、その内5%は歯科衛生士以外の職を考えていることが分かりました。
歯科衛生士のやりがいは大きい一方、毎年一定数は、勤務時間など求人のミスマッチで転職を選ばざるを得ないケースもあることがわかります。
続いては… 復職の障害になっていること について堀り下げます。
未就業期間を短くすることがポイント
いったん長期離職した場合、復帰にかかる負担が増すことは明らかです。長期でキャリアを考えるなら、未就業期間を短くすることが対策として考えられます。
歯科衛生士は非常勤求人も多く、歯科医院においても働き方改革が進んでいることから、ニーズに合わせた働き方のできる職種になってきています。
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