歯科衛生士の就職先
歯科衛生士の就職先は、全体の9割以上が歯科医院(デンタルクリニック)です。次に多いのが、一般歯科より難しい症例などを扱う病院で5%。そのほか、高齢者への口腔ケアなどを行う介護施設や訪問歯科診療、保健所などの行政、医療機器や生活用品のメーカーなどが少数あります。
歯科衛生士は求人倍率の高い売り手市場で、歯科医院への就職であれば自分に合った職場を選びやすい傾向です。特に新卒採用のニーズは高く、初任給は一般大卒を超えています。また、ライフスタイルの変化に合わせて、転職や復職、非常勤での勤務などもしやすいです。
目次
歯科医院・デンタルクリニック
歯科衛生士の就職先で最も多いのが歯科医院。歯科衛生士の90%以上が、歯科医院(デンタルクリニック)で働いています。業務は、歯石・歯垢の除去や歯のクリーニングなどの予防処置、歯科医師が行う治療の補助などを行います。そのほか、日々の口腔ケアを患者本人が行えるようにアドバイスや指導もします。
歯科医院は全国に6万8,500以上あり、求人倍率も高いため、歯科衛生士は自分に合った職場を選びやすい傾向にあります。
歯科医院数
厚生労働省「医療施設調査」より
病院
病院で働く歯科衛生士は全体の5%です。一般歯科より幅広い患者に対応しているため、治療が困難な症状や難しい手術を経験することが多いです。また、院内では歯科以外の病気を持つ患者へのケアも行うため、幅広い病気や治療薬の知識が必要とされます。歯科衛生士の就職先として人気があります。
介護施設
昨今では介護施設で働く歯科衛生士も増えています。口腔機能の低下から誤嚥性肺炎や低栄養状態を起こすこともあり、高齢者の口腔ケアは重視されています。歯みがきや義歯(入れ歯)の洗浄、口腔内の細菌の除去、乾燥した口腔の保湿やマッサージなどが主な業務です。また、介護士への口腔ケアの指導も仕事のひとつです。
介護保険施設で働く歯科衛生士の勤務場所
日本歯科衛生士会「第9回歯科衛生士の勤務実態調査報告書」より
訪問歯科診療
訪問歯科診療は、歯科医院への通院が難しい高齢者などを対象に、自宅や老人ホームに出向く診療サービスです。業務は外来の歯科診療と同じで、むし歯治療での歯科医師の補助、義歯の調整・洗浄、歯や口腔内のクリーニングなどです。そのほか、家族へのケア指導なども行います。歯科衛生士のニーズも高く、就職先として考える人も増えています。
訪問診療では、外出が難しい患者に対応するので、身体の健康状態や介護を受ける人の生活状況の理解も大切です。また、かかりつけ医や介護士、ケアマネジャーなど、介護職種との連携も必要になります。
訪問業務で歯科衛生士に求められること
日本歯科衛生士会「第9回歯科衛生士の勤務実態調査報告書」より
保健所・公務員
歯科衛生士全体の2.1%と少数ですが、都道府県や市区町村などの行政でも活躍できます。保健所や保健センターで、公務員として歯や口の健康を推進する役割を担います。多くは母子保健事業に関わり、乳幼児の歯科検診や母子対象の歯みがき指導などを行います。歯科衛生士の就職先としては狭き門です。
初任給は歯科医院より低い場合が多いですが、生涯年収や福利厚生、安定性などは魅力的です。
企業・メーカー
医療機器や生活用品などの事業所(企業・メーカー)で働く歯科衛生士は全体の0.2%ほどです。歯科医院や病院、ドラッグストアなどへの営業、予防歯科の関連商品の開発、研修・セミナーを行う講師など、業務や役割は多岐にわたります。患者さんが相手ではなく、歯科医院や学校・ドラッグストアが顧客になることが多いです。企業を就職先と考えている人は、コミュニケーション能力も必要です。
月給・年収・給料
歯科衛生士の平均月給は25万5,900円、ボーナスの平均が49万300円、年収は356万円ほどです。新卒のニーズは特に高く、初任給は24万7,419円で、一般大卒に比べて高い傾向にあります。アルバイトやパートの時給も1,500円~2,000円が相場で、一般的なパートより高いです。
平均年収は過去16年において350万円前後で、景気などに影響されず安定しています。
歯科衛生士の給料相場 | |
---|---|
平均年収 | 356万1,100円 |
月給 | 23~27万円 |
賞与・ボーナス | 42~65万円 |
初任給 | 24万7,419円 |
時給 | 1,454~1,903円 |
就職先・職場の選び方
歯科衛生士が就職先を選ぶ際には、給与や勤務地はもちろんのこと、人間関係なども重視すべきポイントです。歯科医院は少人数で業務をすることが多いため、院長やスタッフとの関係は仕事に大きく影響します。また、福利厚生では社会保険が完備されているかを確認しておくことも大事です。
2021年卒 就職を決める際に重視すること
GUPPY調べ(複数回答)
給与
給与や賞与(ボーナス)は、どんな職業であっても重視されますが、歯科衛生士は求人倍率が高く売り手市場のため、待遇面を理由に就職や転職をする人も多いです。特に新卒の初任給は一般大卒を超えていることもあり、給与は就職で重視することの1位となっています。
また、地域によっても給与は大きく異なります。新卒の初任給を見ると、「関東」が25万2,932円と最も高く、一番低い「北海道」(20万9,560円)との金額差は4万3,372円あります。
歯科衛生士の初任給(地域)
地域 | 2021卒平均給与 |
---|---|
全国平均 | 247,419円 |
北海道 | 209,560円 |
東北 | 220,200円 |
関東 | 252,932円 |
中部 | 247,109円 |
関西 | 247,603円 |
中国四国 | 220,510円 |
九州 | 227,458円 |
GUPPY調べ
院長・人間関係
歯科医院では、少人数の環境で仕事をすることが多く、院長やスタッフとの人間関係がやりがいや能率に関わることが多々あります。実際に、常勤歯科衛生士の転職理由として「経営者との人間関係」が約32%と一番多くなっています。勤める前に、院長の診療への考え方や人柄を理解しておくことが大事といます。
勤務先変更の理由(常勤)
日本歯科衛生士会「第9回歯科衛生士の勤務実態調査報告書」より
勤務地
勤務地は、通勤時間などがプライベートの生活に影響するので、多くの人が気にする項目です。自宅からの距離や時間だけでなく、仕事帰りの生活に便利か、昼食をとりやすいかなど、考えるべき点はさまざまあります。郊外では、車通勤がしやすいか駐車場はあるかも重要です。
勤務時間
勤務時間はライフスタイルや健康、プライベートに大きく影響します。歯科診療は予約制が多く、急患が入ることは少ないため、残業はそれほど多くない傾向にあります。一方で、土日に診療する医院も多いので、柔軟に勤務時間が選べるかなど、あらかじめ知っておくといいでしょう。
福利厚生・保険・休日
歯科医院は小規模な施設が多く、福利厚生を充実させることが難しい現実もあります。中でも、社会保険の完備(社保完)は重要です。昨今では、多くの歯科医院が社会保険を完備していますが、未加入の場合もあるので事前に確認しておくべきです。非常勤の場合は、個人で加入することも少なくないです。
また、住宅や通勤などの手当があるか、休日が年間何日とれるか、出産・育児休暇を取得できるかなども把握・検討することも大事です。
社会保険完備の歯科医院の割合
GUPPY調べ
キャリア
進みたいキャリアがはっきりしている場合は、将来的な成長を目指して職場を選ぶことも大切です。高齢者の口腔ケアに携わりたいなら訪問診療を行っている医院や、小児がやりたい場合は小児の専門医師のもとで働くなど、目標に合った医院で経験を積むことで成長できます。
また、専門分野の知識と技術を身につけた歯科衛生士を認定する「認定歯科衛生士制度」もあります。関連する分野を経験できたり、資格取得のサポートが充実している職場を選ぶのがおすすめです。
就職活動・転職活動
歯科衛生士の仕事探しは、新卒でも中途(転職)でも就職情報サイトや求人サイトを利用することが一般的です。歯科衛生士の学生アンケートでも、就職情報の収集は「就職情報サイト」の利用が圧倒的に多くなっています。
2021年卒 就職活動の情報源
GUPPY調べ(複数回答)
細かい条件で医院を絞れるため、自分に合った就職先を探しやすいほか、情報の更新スピードも早いことなどが理由です。グッピーの求人サイトは、スカウト機能もあり、歯科医院から求職者へ直接スカウトメッセージが送れるなど、便利な機能が多くあります。
新卒歯科衛生士の就活サイト「グッピー新卒」
https://job.guppy.jp/dh
中途歯科衛生士の求人サイト「グッピー求人」
https://www.guppy.jp/dh