歯科衛生士と「産休・育休」の手続き、受け取れる給付金
歯科医院においても一般企業と同じく、スタッフが産休・育休をとり、子育てをしながら働き続けることが一般的になりました。
しかしながら、いまの職場で休業の前例がなく、家族の転勤などの理由も含め、出産に伴う退職が続いている、といったケースでは産後のイメージがつきにくいものです。
目次
今回の教えてグッピーでは基本的な知識としての産休・育休、休業に際しての給付金などを解説します。
産休(産前産後休業)とは
「産休」は、正式には産前産後休業と言います。
産休は、労働基準法に定められた休業です。その期間としては、出産予定日前の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)および、出産の翌日以降8週間となります。産前は本人が請求した場合に休業でき、産後は本人の意思に関わらず使用者は休業させる必要があります。
産後6週間は、医院はどんなことがあってもそのスタッフを働かせてはいけません。
これは母体保護という観点から、労働基準法によって定められています。ただし、医師の許可があれば6週間以降から働くことも可能です。
育休(育児休業)とは
「育休」は正式には育児休業と言います。
こちらは育児介護休業法という法律に定められています。産後休業が終わり、その翌日となる産後57日目から、養育する子が1歳になるまでの期間、本人が申し出た場合に休業することができます。
ただし、認可保育所への申し込みをしているが、入所待ちのため復帰できないなどの事情がある場合は、1歳6か月、あるいは2歳まで延長することが可能です。
育児休業は2023年に大きな法改正があり、父母が同時もしくは交代で育休をする場合は「パパママ育休プラス制度」が適用され2か月延長されます。詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。
💡 ポイント
- ・育児介護休業法業により定められた休業
- ・事業者が原則として申請するが、被保険者が行うことも可能
もらえる手当金、給付金
産休・育休は、本人の申し出により休業させることが使用者の義務となっています。ただし、使用者である医院に、給料を支払う義務までは定められていませんので、長期にわたり収入が途絶えると、スタッフは生活が大変です。
そこで各種保険では所得補償を目的とした給付金が用意されています。
出産手当金
(歯科医師国保/健康保険)
出産手当金は、健康保険に加入している労働者が出産のため仕事を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、健康保険から支払われる手当金です。
出産の日、実際の出産が予定日のときは出産予定日以前42日から、出産の翌日以後56日目までの範囲内で休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
歯科医師国保(全国歯科医師健康保険組合の場合)
歯科医院に勤務する人の中で加入の多い、歯科医師国保の手当金は以下のとおりです。
※都道府県の歯科医師国保に加入の場合は、組合によって出産手当金の有無が異なります。
〇1日当たりの金額
✓ 産前6週間、産後8週間において業務に服さなかった組合員:1日につき1,500円
※支給対象となる支給期間は組合員となって継続して1年経過した日の翌日から
協会けんぽの場合
歯科医院が利用する健康保険の中で加入者の多い「協会けんぽ」の手当金は以下になります。
〇1日当たりの金額
✓【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
💡 ポイント
- ・健康保険に加入している就労者が対象
- ・申請は基本的に事業者が行う
出産育児一時金
(健康保険/歯科医師国保/国民健康保険)
出産育児一時金は、出産の経済的負担を減らす目的で支給される一時金です。出産する被保険者や被扶養者(従業員の家族)を対象に、健康保険から出産育児一時金として、子ども1人あたり50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は48.8万円)が支給されます(2023年度から支給額を引き上げ)。
対象となるのは、妊娠4カ月(85日)以上で出産をした健康保険の被保険者・被扶養者です。異常分娩や早産、死産、流産、人工妊娠中絶なども対象となります。
💡 ポイント
- ・子ども一人当たり50万円
- ・直接支払いなど受け取り方は複数
育児休業給付金(雇用保険)
育児休業給付金は、雇用保険に加入しているスタッフが出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、雇用保険から支払われる給付金です。
子どもが1歳、延長した場合は1歳6か月または2歳になるまで休んだ期間を対象として育児休業給付金が支給されます。
こちらの注意点は、雇用保険の加入期間が最大1年以上あることです。申請は原則事業者が行いますが、被保険者が行うことも可能です。
パートなど短時間の就業者も対象です
自身で社会保険(雇用保険含む)に加入している場合は、加入している保険の種類に応じた給付金が受けられます。
また扶養の範囲内で働いている場合は、扶養者の加入している社会保険の状況に応じて判断することになります。