歯科技工士になるには何が必要?国家試験から仕事内容まで徹底解説
歯科技工士になるには、歯科技工士国家試験に合格する必要があります。歯科技工士国家試験は、高校卒業後に指定の歯科技工士養成学校に入学し、卒業することで受験資格が得られます。養成学校は、2年制か3年制の専門学校、2年制の短期大学、4年制の大学があります。歯科技工士国家試験は1年に1回、2月後半の日曜日に実施されます。合格率は95%以上の年がほとんどです。
目次
歯科技工士に必要な試験・資格
歯科技工士の資格は、歯科技工士法で定められた国家資格です。高校卒業後に指定の歯科技工士養成校に入学し、カリキュラムを修了・卒業して国家試験に合格すると、歯科技工士の免許を取得することができます。歯科技工士国家試験は、年1回2月後半に実施されます。合格発表は3月の下旬です。試験はマークシート方式の学科試験のほか、歯科技工の実技試験も課されます。
直近3年間の合格率は95%台で、決して難関の試験ではありません。2021年の試験では、859人が受験し合格者は823人、合格率は95.8%でした。卒業時に不合格になった場合は、翌年以降に何度でも挑戦ができます。
歯科技工士国家試験合格者数と合格率
一般財団法人歯科医療振興財団ホームページより
学校・養成校
歯科技工士の養成校には、2年制と3年制の専門学校、2年制の短期大学、4年制の大学があります。全国に48校あり、ほとんどが2年制の専門学校です。2年制の短期大学は全国に2校、4年制大学は3校あり、いずれも歯学部のある大学に設置されています。専門学校は2年制が多く、3年制の昼間過程は全国で2校あり、うち1校は聴覚特別支援学校です。また、夜間過程は全国に4校あり、すべて3年制です。2年制の昼間部との併設が2校あり、残り2校は夜間のみです。
歯科技工士養成校の卒業までにかかる学費は、2年制の私立専門学校で170万円〜380万円、国公立で70〜80万円です。昼間課程の3年制は430万円程度、夜間課程の3年制は300万円〜370万円程度、2年制の短期大学は300万円〜340万円程度となっています。大学は4年制で、国立大学で250万円〜290万円、私立で570万円程度とバラツキがあります。教材費や実習費が別途必要になる場合もあります。多くの学校で、奨学金が用意されています。
学校・養成校の卒業までの学費
専門学校 | 2年制 | 国公立 | 70〜80万円 |
---|---|---|---|
私立 | 170〜380万円 | ||
夜間課程3年制 | 私立 | 300〜370万円 | |
昼間課程3年制 | 私立 | 430万円程度 | |
大学 | 4年制 | 国立 | 250〜290万円 |
私立 | 570万円程度 | ||
短期大学 | 2年制 | 私立 | 300〜340万円 |
歯科技工士の就職先
歯科技工士の就職先の72.7%が歯科技工所に勤めています。次に多いのは病院や歯科医院で25.7%です。そのほかの1.6%は、歯科技工士学校や養成所、企業などです。男女比は、歯科技工所で男性84%に対し女性が16%、病院や歯科医院では男性70%に対し女性が30%です。経験を積んだ後に、歯科技工所を開業する歯科技工士も多くいます。
歯科技工士の就職先
厚生労働省「平成30年衛生行政報告例」
歯科技工士の仕事内容
歯科技工士は、歯科治療で使う詰め物や被せ物、差し歯や入れ歯、歯並びを治す矯正器具などを作成します。歯科医院や病院では併設の歯科技工室で歯科医師の指示を受けて製作し、歯科技工所では病院や歯科医院から注文を受けて作ります。歯科技工物は、一人ひとりに合わせたオーダーメイドで、大切な機能を補うものとあって、丁寧で繊細な作業が求められます。
従来の歯科技工士は、歯の型取りや模型つくり、被せ物の製作など、ほとんどの作業を手作業で行っていましたが、近年はIT化が進み、専用のシステムを使って、模型をスキャニングしたり、口腔内を直接読み取ったデータを使って、コンピューター上で技工物の設計を行うことが増えています。
歯科技工士が作成する主な技工物
歯科補綴物 | インレー(詰め物)や、クラウン(被せ物)、失われた歯を補う、ブリッジ、総入れ歯、部分入れ歯、人口の歯根を埋め込むインプラント治療の仮歯や人口歯など |
---|---|
矯正装置 | 歯を少しずつ移動させて歯並びを治す治療に使う装置 |
マウスガード | 歯ぎしりによるダメージやスポーツの際の衝撃から歯を守る装置 |
歯科技工士の年収・月給・給料
歯科技工士の平均給料は、年収が464万8,600円、月給が各種手当込みで33万9,500円、賞与・ボーナスは57万4,600円です。「40〜44歳」では年収平均が約482万900円、「55~59歳」では約525万4,100円と、年齢を重ねるにつれて年収が上がっていく傾向にあります。初任給は、業界団体のモデルケースで186,500円〜207,500円となっていますが、実際にはもう少し少ない場合があります。
また、歯科技工士は経験を重ねた後、自ら歯科技工所を開業することも多く、成功すれば自分の技術で年収を上げていける職業でもあります。
歯科技工士の給与相場
年収 | 464万8,600円 |
---|---|
月給 | 33万9,500円 |
賞与・ボーナス | 57万4,600円 |
初任給 | 186,500円〜207,500円 |
時給 | 1,412円 |
令和5年賃金構造基本統計調査・初任給は日本歯科技工士会作成の賃金モデルより
適性・向いている人
歯科技工士は細かく精度の高い作業が必要なので、根気強く物事に向かえることが適性として求められます。医療職であり、決められた納期に遅れることなく技工物を作成するには、責任感が強いことも大切です。そのほか、日々進歩する医療や技術を身につける向上心や、歯科医師に必要なことを伝えるコミュニケーション能力、ITを使った新しい技術への適応力も必要な能力といえます。
根気強さ
歯科技工士は歯の代わりになるものを作ります。細かく精度の高い作業が必要なため、集中力をもって根気強くやり遂げられる人が向いています。手先の器用さも必要ですが、養成校で訓練を受ければ、技術を身につけることに問題はありません。諦めず根気強く物事に向かう姿勢があることが重要です。
責任感
歯科技工士の仕事では、歯科医師から製作する技工物の細かい指示や納期まで依頼されます。納期に合わせて計画的に作業を進めて完了させる責任感が必要です。もちろん、医療従事者として患者の健康や安全を守るという点でも責任感が大切になります。
向上心
歯科医療は常に進歩しているため、向上心のある人に適した仕事です。新しい材料が出たり、最新の技術や研究によって効率化につながるので、毎日勉強と技術の向上が必要です。
コミュニケーション能力
歯科技工士は、一人で細かい作業をしていくことが多い職業です。一方で、正確に技工物を作成するためには、歯科医師に疑問点を確認したり、作成する上で正確に物事を伝えられるコミュニケーション能力も大切です。
ITスキルへの興味
歯科技工の世界では、コンピューターを使った技工物の設計が浸透してきており、今後もその傾向は進むことが予想されます。そのため、コンピューターを使うことや、ITのスキルを高めることに興味があると、歯科技工士の仕事に役立ちます。