薬剤師になるには?必要な資格のとり方、学費、就職先
薬剤師になるには、薬剤師国家試験に合格する必要があります。高校を卒業後、6年制の薬学部に入学し、決められた課程を修了・卒業することで受験資格が得られます。薬剤師の免許は一度取得すると、更新なく一生有効です。
国家試験への合格後は厚生労働省が管理する薬剤師名簿へ登録します。約2カ月で登録が完了しますので、薬剤師免許の交付まで最短で6年かかります。
薬剤師国家試験は1年に1回、2月中旬から下旬ごろの土日に実施されます。合格発表は3月下旬です。合格率は60%台後半から70%台前半で、簡単に合格できる試験ではありません。
目次
薬剤師になるためのルート・必要な資格は?
大学で6年間の薬学課程を履修する
薬剤師の資格は、薬剤師法で定められた国家資格です。国家試験には受験資格があり、6年制の薬学部で規定の課程を修了すると得られます。独学では国家試験を受けることはできません。
薬剤師国家試験に合格する
6年間の薬学課程を履修した後は、毎年2月~3月に行われる「薬剤師国家試験」に合格する必要があります。薬剤師国家試験は、年1回2月中旬から下旬の土日に実施されます。合格発表は3月の下旬です。
ここ数年の合格率は68%〜72%で推移しており、難易度の高い試験といえます。2022年の試験では、13,210人が受験し、8,846人が合格。合格率は66.96%でした。落ちてしまっても、翌年以降の試験で再挑戦ができます。
薬剤師免許を取得する
薬剤師として仕事に従事するには、厚生労働省が管理する薬剤師名簿への登録が必要になります。薬剤師名簿への登録は、住所地を管轄する保健所などに申請を行います。申請後、約2カ月で薬剤師名簿への登録が完了し、薬剤師免許が交付されます。このようにして、晴れて薬剤師として働くことができるようになります。
国家試験に合格すると、薬剤師の免許を取得することができます。免許は更新制ではなく、1度取得すると一生有効です。薬剤師国家試験は、年1回2月中旬から下旬の土日に実施されます。合格発表は3月の下旬です。
ここ数年の合格率は68%〜72%で推移しており、難易度の高い試験といえます。2024年の試験では13,585人が受験し、合格者は9,296人。合格率は68.43%でした。落ちてしまっても、翌年以降の試験で再挑戦ができます。
薬剤師国家試験合格者数と合格率
厚生労働省発表資料より
薬剤師を養成する大学・学費
薬剤師になるためには、大学の薬学部で6年間学ぶ必要があります。薬学部は全国に79学部あり、国立が14学部、公立が5学部、私立が60学部です。私立の2大学が薬学部を2つ設置しているため、77大学79学部となります。薬学部は33の都道府県にあり、2021年度の入学定員の合計は1万1,800人です。薬学部の中に6年制と4年制の学科が置かれている場合がありますが、6年制以外は薬剤師国家試験の受験資格を得ることができません。
薬学部の学費は、6年間の合計で国公立大学は340万円~380万円程度、私立大学は1,000万円~1,200万円程度です。教材費や実習費は、学費とは別になる大学もあり、必要な費用がさらに増えるケースもあります。多くの大学では、奨学金制度を整備しています。
薬剤師の就職先
薬剤師の就職先の58%が薬局です。31万1,289人のうち、18万415人が薬局で働いています。そのうちの9%(1万6,698人)が自ら薬局を開設して経営しています。また、病院・診療所に勤務する薬剤師は5万9,956人で全体の19%。医薬品関係の企業に勤務する人も9%います。そのほか、ドラッグストアなどの医薬品販売業や医薬品卸企業、介護保険施設、行政施設や保健衛生施設に勤める薬剤師も少数います。
薬剤師の就職先
平成30年医師・歯科医師・薬剤師統計より
薬剤師の仕事内容
薬剤師の仕事内容は、処方箋に従って薬を揃える調剤と患者さんへの説明が一般的です。薬局では、調剤のときに処方箋の内容に問題がないか、薬の専門家としてチェックする役割を担っています。ほかに飲んでいる薬との相互作用や、患者さんのアレルギーも考慮し、問題があれば医師に問い合わせをします。患者さんがきちんと薬を使えるように、飲み方や使い方、副作用の説明もします。
病院では、基本の業務に加えて、注射剤の調剤や入院患者のベッドを訪れて薬の説明をしたり、効果や副作用の確認を行う業務もあります。入院時に日頃の薬を把握し、医師やほかの専門職と情報共有も行います。
製薬会社で新薬の研究開発をする職種や、自社の薬を医師に営業や説明するMRという職種でも薬剤師が活躍しています。新薬開発での治験をサポートする企業で、進行管理を担う職種にも薬剤師の需要があります。これらの業務は薬剤師資格が必須ではありませんが、資格を持って活躍する人もいます。また、ドラッグストアや薬局では、一般用医薬品をお客の症状に合わせて選んで販売することも行います。
薬剤師の仕事内容
薬局 | ・調剤(医師が発行した処方箋に基づき、薬を揃える) ・処方箋に問題がないかチェックし、問題がある場合は医師に問い合わせや処方の変更を提案する ・患者に薬の使い方や注意点を説明する ・一般用医薬品を客の症状に合わせて販売 |
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病院 | ・注射剤などを含めた調剤 ・入院患者のベッドサイドで薬の説明や、効果、副作用の確認、医師への処方提案 ・入院患者の日頃の薬の把握、情報共有 |
製薬企業 | ・新薬開発を目指して研究 ・医師に自社の薬を営業、効能、副作用などを説明(MR) ・工場、倉庫等での管理業務 |
薬剤師の年収・月給・給料
薬剤師の平均給料は、年収が577万8,700円程度、月給が各種手当て込みで41万7,500円、賞与・ボーナスは76万8,700円です。初任給の平均は27万8,400円で、時給は2,845円となっています。同調査は、10人以上在籍している企業・医療機関等を対象にした2023年厚生労働省の調査結果です。
薬剤師の給料相場 | |
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年収 | 577万8,700円 |
月給 | 41万7,500円 |
賞与・ボーナス | 76万8,700円 |
初任給 | 27万8,400円 |
時給 | 2,845円 |
令和5年賃金構造基本統計調査より
適性・向いている人
人の命や健康を守る仕事である薬剤師には、高い責任感や倫理観が求められます。薬剤師が扱う医薬品は、間違えた場合に健康被害につながるため、高い集中力で正確な仕事をすることも大切です。また、患者さんにわかりやすく説明したり、患者さんから話しを聞いたり、ほかの医療従事者と議論できるコミュニケーション能力も大事です。そのほか、最新の医療の勉強を続ける向上心も必要になります。
責任感・倫理観
薬剤師は人の命に関わる仕事です。患者さんの命と健康、生活を守ることに責任感を持って、生命の尊厳についての深い認識と高い倫理観を備えていることが必要です。
患者さんの薬や治療法は医師が決めますが、最終的に薬を患者さんに渡したり、注射剤などを準備するのは薬剤師です。間違った薬剤や量、患者さんにふさわしくない薬を投与しないように、責任を持てる人でなくてはなりません。
正確性
医療で使う薬剤は量を少しでも間違うだけで、効き目が異なったり、副作用が強く出たり、命に関わることがあります。薬剤の種類は非常に多く、似た名前の薬剤も存在します。そのため、薬剤師は慎重に正確に物事を進め、間違いを起こさないように集中して作業をする力が大切になります。
コミュニケーション能力
患者さんとのコミュニケーションも薬剤師の大きな仕事です。薬局でも病院でも、患者さんに対して薬の説明をして、しっかりと服用できるようにします。薬の効果や副作用も確認し、医師と共有する必要もあるため、患者さんの話を聞き出す能力も大切です。
処方に問題がある場合には、薬の専門家として医師にその旨をしっかり伝え、医療チーム内でほかの専門職と治療方針などを議論する力も重要になります。
向上心・勉強熱心さ
医療は日々進歩するため、新しい薬剤は毎年発売されます。そのため、最新の薬物治療や薬剤情報を取り入れる必要があります。常に新しい情報に触れることを積極的にできる資質が薬剤師には大切です。
科学への興味
薬剤師は幅広い科学の知識を駆使する仕事のため、科学への興味や、科学的視点を持っていなければ従事できません。化学的な物質の反応や構造の理解、医薬品が環境や生体に与える影響などの知識を持つこと、理論的に思考できることが必要になります。物理や化学、生物が好きな人は、薬剤師となる素質があるといえます。