児童指導員になるには?任用資格の取り方と仕事内容を解説
児童指導員は、家庭の事情や障害などのために養護を必要とする子どもたちに対して、施設等で育成や生活指導等をする役割を担います。活躍できる施設は、乳児院、児童養護施設、児童発達支援センターなど幅広く、子どもたちの大切な未来を担う重要な仕事です。児童指導員になるには任用資格を得たうえで公務員試験や施設の採用試験を受けます。そして就業してはじめて児童指導員を名乗ることができます。
今回の 教えてグッピー児童指導員 では、児童指導員に必要な資格や仕事内容、給料相場などについて紹介します。
目次
児童指導員の任用資格とは?
児童指導員になるためには、任用資格を取得し、民間や自治体の採用試験に合格する必要があります。「任用資格」については聞きなれない方もいるかもしれません。児童指導員の任用資格を取得するにはさまざまなルートがあります。
任用資格とは
児童指導員の資格は任用資格です。任用資格とはその職業に任用されるための資格です。雇用されるための前提となる資格、と言いかえてもよいかもしれません。任用資格を取得し、雇用されてはじめて児童指導員を名乗ることができます。離職すると、新たに児童指導員の職に就かない限りは児童指導員を名乗ることはできません。
児童指導員になるための資格取得ルート
児童指導員の任用資格を取得するには以下のような条件があります。条件は就業する施設によって異なる場合がありますので、詳細は行政や就業先にお問い合わせください。
児童指導員の任用資格の主な条件 |
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1.福祉施設職員を養成する養成校を卒業 |
2.大学や大学院で専門課程を卒業・修了 |
3.幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教員免許を保有 |
4.社会福祉士、精神保健福祉士の資格を保有 |
5.2年以上の実務経験 |
専門学校・大学・大学院
児童指導員になるための専門教育といったものはなく、これに近い専門領域を修めることで任用資格を取得できます。例として、福祉系職種の専門教育を実施する専門学校を卒業する、大学または大学院で社会福祉・心理・教育・社会学系の学科や研究科を卒業・修了することで児童指導員の任用資格を取得できます。
教員免許
幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教員免許を保有している場合は任用資格を得られます。教員免許を取得するためには4年制大学などで修学する必要があります。
社会福祉士、精神保健福祉士の資格
社会福祉士、精神保健福祉士の資格を保有している場合は任用資格を得られます。これらは国家試験で、受験資格を得るには一般的に、専門学校や大学などで修学するなどのルートがあります。
実務経験
中等教育学校・高等学校を卒業している場合は、児童福祉施設で2年以上の実務経験を持つ人は任用資格が得られます。実務経験証明書を発行してもらう必要があります。
任用資格取得後は採用試験
任用資格の取得後は、自治体等の施設で勤務する場合は公務員試験、民間施設で勤務する場合は一般の採用試験に合格する必要があります。
児童指導員を目指す場合の大学・学費
専門学校では2〜3年制の児童福祉系や社会福祉系学科などを卒業する必要があります。あるいは4年制大学で社会福祉学や心理学・教育学・社会学を専修する学部を卒業する必要があります。また大学でこれらの学部を専攻していなくても、大学院で社会福祉学や心理学・教育学・社会学の研究科を専攻、修了することで任用資格が得られます。
学費については、専門学校は年間の費用として80~100万円が相場です。大学の場合は国公立が入学金28万2,000円、年間の授業料は53万5,800円です。一方、私立大学の場合は学校によって異なります。入学金として25~30万円、年間の費用は約100~150万円がおおよその相場です。
児童指導員の就職先
児童指導員は乳児院、養護施設、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、障害児入所施設など、子どもがいる場所で働きます。以下に事業ごとの特徴を紹介します。
乳児院・児童養護施設
保護者がいない子どもや、家庭の事情で養護が必要な子どもが入所する施設です。家庭に近い環境で、入所した子どもたちが健全に成長・自立できるように生活習慣の確立や学習指導、自立への手助けを行います。子どもたちの性格、家庭環境、入所の経緯、成長の様子を見極めながら一人ひとりに合わせた支援計画に基づいて支援していきます。子どもと寝起きを共にしながら成長に合わせた支援を行うため、きょうだいや保護者代わりとしての一面もみられます。
なお、乳児院は0〜1歳児、児童養護施設は2〜18歳までの子どもが入所対象です。
児童発達支援センター
未就学の障害を持つ子どもが通う施設です。機能訓練や日常生活の自立支援、集団生活への適応訓練などの支援をします。子どもたちが定期的に通って療育などの支援を受けることで、自立するのに必要な技能や知識などの習得や、日常生活に必要な基本動作、集団生活に順応していくためのコミュニケーショントレーニングなどを行う施設です。児童発達支援センターには、大きく分けて福祉サービスを提供する「福祉型」と、福祉サービスに加えて治療も行う「医療型」があります。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスとは、支援を必要とする障害を有する子どもや発達に特性のある子どものための福祉サービスで、個別の支援計画に基づいて、自立支援と日常生活の充実のための活動、創作活動、交流機会や余暇などを提供する場です。6~18歳までの子どもが対象です。保護者が働いている時間帯に、子どもの安全な居場所を確保する一面もあります。
障害児入所施設
心身に障害がある0歳~18歳の子どもが入所する施設で、日常生活の指導や知識・技能の教育を行います。継続的な支援が必要と判断された場合は、満20歳に達するまで利用期間を延長することも可能です。知的障害や聴力・視力に障害のある子どもが主に入所する福祉型障害児入所施設と、医療的ケアが必要な子どもが入所する医療型障害児入所施設に分かれています。
保護者による養育が難しいという理由で入所するケースが全体の約3割を占めますが、虐待からの保護を目的とした児童相談所経由での措置入所も一定数存在します。また、1日単位の契約で利用できるショートステイを提供する施設もあります。
児童指導員の仕事内容
児童指導員の仕事は、保護者のいない児童や虐待を受けた児童など、家庭環境上で養護を必要とする子どもたちに対して、施設等で育成や生活指導等をすることです。具体的な業務として、日常生活の支援、社会ルールの習得、学習や遊びなどの支援・指導などです。児童指導員の仕事は子どもたちの生活時間に合わせて行われます。朝は子どもを学校に送り出したら日中は事務作業を行い、子どもたちが学校から帰ってきたら学習支援や食事など身の回りの世話等を行います。進路相談の際には、子ども一人ひとりに対して異なる対応が求められます。子どもとよりよいコミュニケーションを図り、いかに親身になって満足のいく進路相談ができるか、平素から子どもたちとの信頼関係を築き、適切なアドバイスをすることが求められます。
児童養護施設の場合は24時間体制で運営されており、児童指導員は宿直も含め交替制で働きます。子どもの病気や事故など即座の対応が必要になった場合、急な残業が発生することもあります。
児童指導員の月収・年収
厚生労働省の調査によれば、児童指導員の平均年収は約403万7,000円で、月収で約27万8,300円、賞与は約69万7,400円です。自治体の施設の場合は公務員規定に準じており、また民間施設の場合でも公務員規定を参考にした待遇となっている場合があるようです。
児童指導員の給与相場
児童指導員の給料相場 | |
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年収 | 403万7,000円 |
月給 | 27万8,300円 |
賞与・ボーナス | 69万7,400円 |
時給 | 約1,400円 |
令和3年度 賃金構造基本統計調査「その他の社会福祉専門職業従事者」より
児童指導員の適性・向いている人
児童指導員とは、子どもたちの安全な生活や健全な成長をサポートする役割を担います。児童指導員に必要な、能力や適性があります。
コミュニケーション能力
児童指導員にはコミュニケーション能力が必要です。子どもたちとコミュニケーションを取りながら、安全で楽しい時間を提供するために、相手の気持ちに寄り添い、適切な言葉づかいや表情、タイミングを見極める能力が必要です。
危機管理能力
児童指導員には、危機管理能力も求められます。子どもは大人には予想が困難な行動をとります。普段から危険なものや場所に近づけないようにあらかじめ備えておく必要がありますし、それでも起こりうる不測の事態に対して適切な対応がとれるように、冷静かつ迅速な判断力を養う必要があります。
子どもたちに対する理解
児童指導員には子どもたちの心身の発達を理解する能力も必要です。子どもたちがどのように成長していくのかを知り、それに合わせた指導を行える必要があります。心理学や教育学などの知識は重要ですし、子どもたちに文字通り親身になって寄り添える優しさ、包容力が求められます。