社会福祉士になるには?資格の取り方から解説!受験資格・活躍できる職場とは
社会福祉士になるには、社会福祉士国家試験に合格し国家資格を取る必要があります。国家試験の受験資格は、その人の学歴や実務経験によって定められた期間、学校の養成課程で学んだり実務経験を積むことで得られます。資格を持つことによって活躍できる場や仕事内容は多岐にわたります。たとえば、地域包括支援センターの相談窓口のほか、介護福祉施設の生活相談員、病院やクリニックにおける医療ソーシャルワーカー、地方自治体職員などの職種です。
職種や就職先によっては社会福祉士の資格を就業条件とする場合も多く、今後も幅広いキャリアの可能性がある資格だと言えるでしょう。
目次
求人サイト GUPPYに掲載の仕事 を見ても、さまざまな場所でニーズのある資格であることがわかります。 今回は、社会福祉士の資格の取り方、受験資格、仕事内容、キャリアアップの方向性まで幅広くご紹介します。
社会福祉士とは?主な仕事内容
社会福祉士とは、身体や精神的な問題、または環境上のさまざまな理由から、日常生活が困難な人の相談に応じ、援助を行う専門家です。一般的にはソーシャルワーカーやケアワーカーとも呼ばれています。社会福祉士になるには国家資格が必要です。1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」にもとづいて1998年に第一回国家試験が実施されてから現在にいたるまで、登録者は増加の一途をたどっています。
主な仕事内容は、相談者に助言、説明をしたり、自立した生活が送れるように援助計画を立てたり、福祉・医療サービスのほかの専門家につないで必要なサービスが受けられるよう調整を行うことです。その支援対象となるのが、高齢者や身体障害、知的障害のある人とその家族、児童などのため、幅広い年齢層や状況の人たちへの対応が必要となります。少子高齢化や子どもへの暴力などの問題が顕在化するなか、社会福祉士への期待も高まっています。
職種としては、介護支援専門員、施設長、事務所管理者、主任・相談部門の長、障害者相談支援員、児童自立支援専門員、医療ソーシャルワーカー、スクールソーシャルワーカー、相談員などとして就業しています。
社会福祉士の資格がなくても相談や援助の仕事をすることは可能ですが名称独占資格のため、資格を持たない人が社会福祉士を名乗って相談援助を行うことはできません。そのため、資格取得により社会保障制度に関する知識やコミュニケーション力など、専門家としての技能を示すことが可能です。また職種によっては就業の条件に指定されることもあります。そのほか、精神保健福祉士を取得する際、短期養成施設等で精神保健福祉士養成課程を修了し受験免除申請をすることで、共通科目が免除されることもメリットの一つです。
社会福祉士に必要な資格・試験
社会福祉士の資格は国家試験に合格し、登録することで取得できます。社会福祉士国家試験は年1回、2月上旬に実施されます。合格率は約30%で福祉系の資格の中でも難易度は高いと言えます。
社会福祉士国家試験 合格者数と合格率
厚生労働省発表資料より
社会福祉士の受験資格と取得方法
国家試験を受けるには受験資格を得る必要があり、大きく分けて4つのルートがあります。福祉系大学・短大などで指定科目を履修して受験資格を取得するケースのほか、学歴やキャリアに合わせて自分に合ったルートが選択できます。
1.福祉系大学等ルート(4年制大学等)
4年制の福祉系大学・専門学校で指定科目を履修・卒業した時点で受験資格を得られます。履修した科目が基礎科目のみの場合は、短期養成施設などで6か月以上学ぶ必要があります。
2.福祉系大学等ルート(福祉系短大等+相談援助実務)
福祉系短大や専門学校で指定科目を履修・卒業した場合は、3年制であれば1年間、2年制であれば2年間の相談援助実務経験を積めば、受験資格を満たせます。
3.短期養成施設等ルート
福祉系短大等で基礎科目のみ履修した場合は、指定科目を履修した人と同じ期間、相談援助実務経験を積み、さらに短期養成施設などで6か月以上学ぶ必要があります。 また、児童福祉司・身体障害者福祉司・査察指導員・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事の実務を4年以上経験し、短期養成施設等で6か月以上学ぶなどのルートもあります。
4.一般養成施設等ルート
一般の4年制大学を卒業してから一般養成施設等で1年以上学ぶと受験資格を得られます。その他、一般短大を卒業後、3年制であれば1年間、2年制であれば2年間にわたり、相談援助実務経験を積んだ場合なども受験資格を満たすことができます。
合格後、資格を取るために必要な実務経験は関連する法律により指定施設に応じて定められています。例えば児童相談所であれば、児童福祉司・受付相談員・相談員・電話相談員・児童心理司・児童指導員・保育士などです。
指定科目と基礎科目
上記で紹介した大学や養成施設での「指定科目」「基礎科目」(令和3年4月入学者から適用)は以下の通りです。 科目は入学した年によって異なります。平成21年4月から令和3年3月まで、または、平成21年3月までの入学者は、下記と異なる科目が指定されています。詳しくは、社会福祉振興・試験センターのHPをご確認ください。
受験資格となる指定科目と基礎科目(令和3年4月入学者から適用)
指定 | 基礎 | 科目 |
---|---|---|
1 | 1 | 医学概論 |
2 | 2 | 心理学と心理的支援 |
3 | 3 | 社会学と社会システム |
4 | 社会福祉の原理と政策 | |
5 | 4 | 社会保障 |
6 | 5 | 権利擁護を支える法制度 |
7 | 地域福祉と包括的支援体制 | |
8 | 6 | 高齢者福祉 |
9 | 7 | 障害者福祉 |
10 | 8 | 児童・家庭福祉 |
11 | 9 | 貧困に対する支援 |
12 | 10 | 保健医療と福祉 |
13 | 11 | 刑事司法と福祉 |
14 | 12 | ソーシャルワークの基盤と専門職 |
15 | 13 | ソーシャルワークの基盤と専門職(専門) |
16 | ソーシャルワークの理論と方法 | |
17 | ソーシャルワークの理論と方法(専門) | |
18 | 14 | 社会福祉調査の基礎 |
19 | 15 | 福祉サービスの組織と経営 |
20 | 16 | ソーシャルワーク演習 |
21 | ソーシャルワーク演習(専門) | |
22 | ソーシャルワーク実習指導 | |
23 | ソーシャルワーク実習 |
社会人から社会福祉士になる方法
社会人が働きながら社会福祉士の資格取得を目指す際は、前述したように最終学歴により異なったルートで学ぶことになります。福祉系の大学で指定科目を修了している場合は、国家試験対策の学習のみで受験が可能です。福祉系短大で指定科目を履修し、必要な期間の相談援助の実務経験がある場合も、短期養成施設や一般養成施設などでの履修の必要はありません。それ以外の場合は、最終学歴や履修した科目により短期養成施設や一般養成施設での学習が必要になります。
とはいえ、働きながら養成施設に通うのは、社会人にとって容易ではありません。そこで、おすすめしたいのが、働きながら自分のペースで学習することが可能な通信制の養成施設です。ただし、スクーリングや実習は必要になるため、参加が可能かどうか、開催場所やスケジュールを確認して履修を開始することが大切になります。
これらの短期養成施設や一般養成施設での履修以外に受験資格を得られるルートが、福祉系4年制大学への入学です。特に、最終学歴が短大や高校で相談援助の実務経験がない場合は、福祉系4年制大学で指定科目を履修したうえで卒業するのが、受験資格を得る最短コースとなります。
受験資格となる必要な「実務経験」とは
最終学歴により異なる社会福祉士国家試験の受験資格は、相談援助の実務経験が必要かどうか、また、必要とされる実務経験の年数にも違いがあります。基本的に、福祉系の4年制大学と一般の4年制大学を卒業している場合は、実務経験が不要です。短大を卒業している場合は、3年制が1年、2年制が2年の実務経験が必要になります。そして、大学や短大を卒業していない場合でも、4年の相談援助の実務経験があれば、一般の大学や短大を卒業した人同様、一般養成施設での履修で受験資格を得ることが可能です。なお、相談援助の実務に該当する施設や事業、職種は、法律や厚生省社会局長通知などで定められ、それ以外は実務経験とみなされないので注意が必要になります。
では、実務経験として定められた職種には、どのようなものがあるのでしょうか。その一つが、児童相談所の相談員です。受験資格に必要な実務経験は、児童分野や高齢者分野、障害者分野、その他の分野など4つの分野に分かれています。前述した児童相談所の相談員は、児童分野の施設と職種の一つです。そのほか、児童分野では、児童福祉法やその他で定められた母子生活支援施設や児童養護施設、障害児入所施設などの多くの施設や職種が認められています。一方、高齢者分野で実務経験に該当するのが介護保険法や老人福祉法などに定められた介護保険施設や養護老人ホームなどでの相談指導員や生活相談員などの職種です。
そして、障害者分野では、身体障害者福祉法や障害者総合支援法などで定められた身体障害者更生相談所や障害者支援施設などの施設が挙げられます。該当する職種は、身体障害者福祉司やケースワーカー、生活支援員などです。その他の分野では、地域保健法や生活保護法、生活困窮者自立支援法など、多岐にわたる分野が定められています。
ただし、気を付けておきたいのが、これらの福祉の現場は、社会福祉士受験資格を得るための場というわけではないということです。これらすべての職場は、現役の社会福祉士が活躍する場となります。実務経験は、国家試験に合格したそのあと、大いに仕事の強みになるということです。そのため、社会福祉士国家試験の受験者には、福祉の現場で働く実務経験者がたくさんいます。
社会福祉士になるための大学・養成施設
社会福祉士になるために大学・養成施設を選ぶ場合は、4年生の福祉系大学・専門学校か2~3年生の福祉系短大などの養成施設に進学し、指定科目を履修するルートが一般的です。各地域の学校一覧は、地方厚生(支)局のホームページで確認することができます。
学費
社会福祉士養成課程を設置する大学の学費は、4年制の私立大学で合計400万円~500万円程度、2~3年制の短大では合計200万円~350万円程度となります。教材費や実習費は学費とは別になるケースもあります。
実務経験や学歴に応じて修了する短期養成施設や一般養成施設の学費は20~40万円程度です。経験などに応じて、実習が必要な場合は別途実習費が加わります。
社会福祉士の就職先(分野別)
社会福祉士の就職先は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターの令和2年の報告書によると、事業分野ごとに見た場合、「高齢者福祉関係」の割合が39.3%、「障害者福祉関係」17.6%、病院・診療所など「医療関係」が15.1%、福祉事務所など「地域福祉関係」が8.4%、「児童・母子福祉関係」8.2%となっています。また6.7%と割合としては少ないですが、区役所、市役所、町村役場など行政機関で働く社会福祉士もいます。
社会福祉士の就職先
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年)結果報告書より
広がる活躍の場と職業
活躍できる分野が広い分、すべての分野に精通することが難しいため、どの分野で活躍したいかを明確にすることも大切になります。例えば、高齢者施設を経験している場合、その利用者やその家族への対応が必要な介護・福祉の分野が考えられます。職場となる特別養護老人ホームやデイサービスなどの高齢者向けの施設では、ソーシャルワーカーや生活相談員、生活指導員として従事します。
子どもを対象にした分野で支援するのは、家庭に問題があったり、虐待を受けたりして保護されている子どもや肉体的または精神的なハンデキャップのある子どもです。児童相談所や児童養護施設、障害児入所施設、母子福祉センターなどが勤務先となり、児童福祉司や児童指導員として働くことになります。
続いて、障害者施設などでの経験を生かしたい場合に選ぶとよいのが障害者分野です。この分野では、障害者支援施設などで生活相談員や生活指導員、作業指導員として勤務することになります。生活に困窮している人が対象となる分野も社会福祉士の活躍の場です。対象となるのは、ひとり親家庭や障害、高齢、失業などのさまざまな原因により、貧困に陥っている人たちになります。この場合の勤務先は各都道府県の福祉事務所などです。職場では、ケースワーカーやスーパーバイザーとして働くことになります。
このように、社会福祉士を必要とする現場は多岐に渡るため、得意な分野や強い思いを持てる分野を選ぶことが大切です。
社会福祉士のキャリア構築
社会福祉士の資格を生かしたキャリアはさまざまな方向性があります。社会福祉士の資格を条件とする仕事に就く選択肢もありますし、「認定社会福祉士」「認定上級社会福祉士」の資格を取り、ステップアップする方向性もあります。
社会福祉士が任用資格となる職種は多数
公的な施設では、社会福祉士をその職業に就くための条件とする職種がいくつかあります。各分野の専門性と経験を基盤として、資格を生かして活躍できる職場です。
種別 | 施設・分野 | 職種 | 具体的な施設 | |
---|---|---|---|---|
任用要件 | 行政機関 | 福祉事務所 | 査察指導員、現業員 、身体障害者福祉司 、知的障害者福祉司 、老人福祉指導主事 | |
児童相談所 | 所長、児童福祉司 | |||
サービス事業所 | 社会福祉施設・福祉サービス事業関係 | 施設長 | ・救護施設、更生施設、授産施設、宿所提供施設 ・障害者支援施設 ・特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム ・乳児院、母子生活支援施設、情緒障害児短期治療施設、児童養護施設、児童自立支 援施設 | |
児童指導員、家庭支援専門相談員等 | ・障害児入所施設(福祉型・医療型) ・児童発達支援センター(福祉型・医療型) ・児童発達支援事業(主として重症心身症児を通わせる場合) ・乳児院、母子生活支援施設、情緒障害児短期 治療施設、児童厚生施設、児童養護施設、児童 自立支援施設、放課後児童健全育成事業 | |||
病院・診療所 | 退院後生活環境相談員 | |||
ひきこもり地域支援センター | ひきこもり支援コーディ ネーター(専門職) | |||
必置規定 | 地域包括支援センター | 社会福祉士 |
「認定社会福祉士」「認定上級社会福祉士」を取得する方向性も
社会福祉士のキャリアアップを支援する仕組みとして、認定社会福祉士と認定社会福祉士の認定制度があります。社会福祉士の資格取得をスタートラインとして位置づけ、一定期間の実務経験と、指定されたいくつかの「必要な経験」を積むなど条件をクリアすることで、資格が得られます。
社会福祉士の適性・向いている人
社会福祉士は、介護の利用者とその家族、ほかの職種、施設の人たちと連携し、利用者が自立した生活を送れるように情報を伝え、相談に応じます。人と接すること、人を支えることが好きなことのほか、状況を見て柔軟に対応する力や判断力、新しい制度・法律の情報を取得して読み解き学び続ける力も求められます。
人を支えることに喜びを感じる
利用者の方を直接支える喜びは社会福祉士のやりがいや原動力となります。多くの人のつながりが生まれる職業に自分自身が成長する意義を見出したり、人から感謝されることに喜びを感じたりする機会も多くあります。児童指導員として子どもと向きあう、障害者福祉施設指導専門員として日常生活が困難な人に向き合うなど、資格取得によって幅広い機会に出会うことができます。資格取得によってキャリアアップし、職場のスタッフの教育や運営に関わる立場も目指せます。
コミュニケーション力・調整力
社会福祉士の業務は、利用者のほか利用者の家族や多くの人とのコミュニケーションのうえに成り立ちます。例えば地域包括支援センターに勤務する場合、利用者と家族との面談、ほかの職員への連絡、病院の訪問など関係機関との連絡調整が欠かせません。単に知識を提供するのではなく、利用者が必要なサービスを受ける目的のため計画力や行動力が必要となります。行政や民間団体と交流する機会もあり、他者との関係を築く力が求められます。
対応力・判断力がある
社会的なサポートを必要とする利用者と向き合う際には、一人ひとりその人の社会的な背景に応じた判断力と適切な対応が求められます。サービスを提供するために、関係機関や多職種と連携し、公的な手続きの代行を行うこともあります。
学び続ける力
福祉サービスはさまざまな法律や制度に基づいているため、入職した後も知識をアップデートしていく必要があります。新しい知識をもとに利用者へ説明したり手続きをする必要があるため、情報の整理や取得を日常的に行います。過去に培った知識のうえに学び続ける力が必要とされます。