管理栄養士になるには?資格のとり方や仕事内容、就職先
管理栄養士になるには、管理栄養士国家試験に合格する必要があります。管理栄養士国家試験は、受験資格が定められています。大きく分けて2つのルートがあり、1つは、高校を卒業後、管理栄養士の養成課程を持つ学校に入り、必要な課程を修了・卒業するルート。もう1つは、栄養士課程を修了して栄養士の免許を取得した後、実務経験を積むルートです。
管理栄養士養成課程は4年の学習が義務付けられ、大学、専門学校があり、栄養士課程には、2〜4年制の専門学校、短大、大学があります。
管理栄養士国家試験は1年に1回、2月もしくは3月に実施され、合格率は50〜64%程度で推移していて、最近4年間は60%以上が続いています。管理栄養士国家試験に合格後、申請することで管理栄養士免許を取得できます。
目次
管理栄養士の仕事内容
管理栄養士の仕事は、栄養や食事の指導が基本ですが、働く場所によって仕事内容はさまざまです。病院においては病気の人に向けた、病気を治すため、予防するための食事・栄養のとり方の指導を行います。また入院患者さん向けた、病状に合わせた食事の考案も役割のひとつです。
企業や学校、保育所、介護施設などの給食施設では、年齢に合わせて栄養バランスの整ったメニューを開発し、職場によっては調理業務や食材調達も担当します。調理場の衛生管理も必要です。一人ひとりに合わせた病気予防、健康維持のための栄養指導も行います。学校では「栄養教諭」として子どもたちが食や栄養の知識をつけられるように授業を受け持ったり、個別に指導したりといった活躍もあります。
食品メーカーや外食企業などでは、栄養や食の知識を生かして商品やメニューの開発に従事します。プロスポーツの世界では、選手がよいパフォーマンスができるよう食事の面からサポートする管理栄養士も活躍しています。行政で働く場合は、地域の給食施設の管理、地域住民の健康増進のために、栄養面からの事業を計画します。
管理栄養士の仕事内容
病院 | ・治療の一環としての栄養・食事指導 ・入院患者の献立考案、配食管理 ・NST(栄養サポートチーム)での活躍 |
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給食施設 (学校、企業、保育所、介護施設など) | ・食事提供する人の年齢や健康状態に合わせた献立考案、調理業務 ・栄養・食事指導 |
学校 | ・栄養教諭として、食に関する授業を担当、生徒に向けて個別の栄養・食事指導 |
食品メーカー 外食企業 | ・メニュー考案、新商品開発 |
スポーツチーム 個人スポーツ選手のサポート | ・選手の食事の献立考案、調理、栄養・食事指導 |
行政 | ・地域の給食施設の管理栄養に関する調査、施策立案 |
医療関係で働くなら一人ひとりの患者に合わせた栄養指導
医療関係で管理栄養士として働くなら、患者の病状に合わせた栄養管理をしなくてはいけません。糖尿病など栄養管理を徹底しなければいけない患者はもちろん、他の病気でも治癒力を高めるために一人ひとりに合わせた栄養管理が必要です。医師や看護師、薬剤師と連携を図りながら、必要に応じて栄養指導も行います。病気で思うように食事ができない人がほとんどなので、患者やスタッフとコミュニケーションを取りながら、食欲がない原因を探ったり、食べやすい時間帯を考えたりすることが必要です。
食品メーカー勤務なら研究開発や市場調査など多岐にわたる仕事
食品メーカーの機能性食品を開発する部署に勤めた場合は、商品の企画や研究開発などが主な仕事です。栄養の専門家として活躍するとともに、食品市場でニーズのある商品を作りださなくてはいけないので、市場調査などにもかかわります。栄養面と商品価値がある商品を企画することが求められるため、幅広い知識が求められます。
教育機関で働くなら献立作成は栄養面を考えて
保育園や幼稚園、小中学校で管理栄養士として働く場合は、給食の献立作成や食材発注などに携わります。また、給食費や栄養面だけでなく季節や学校行事なども加味した献立作成が必要です。教師や生徒への栄養指導も仕事で、給食の残量を確認しながら適切に指導を行います。調理師と連携を図るのも重要で、現場で働く人の意見を献立に反映させ、子どもたちにベストな給食を提供できるよう改善を重ねていきます。実際に給食を作るのは調理師のため、調理の手間も考えて献立を作らなくてはいけません。
社員食堂や学生食堂は幅広いニーズに合わせた献立作りが必要
社員食堂や学生食堂は昼食を用意できなかったり、手軽に昼食をとりたかったりする職員や学生向けに作られた施設です。そのため、価格や栄養面を考えながら幅広いニーズに合わせた献立を考える必要があります。毎日同じメニューだと飽きてしまうので、「メインのおかずを選べるようにする」「日替わりでメニューを変える」など、変化をつけなくてはいけません。また、社員食堂や学生食堂は外食に比べて安く済ませられるのが魅力のため、価格を考えて食材発注を行います。
社会福祉施設や介護施設では調理法も考える
社会福祉施設や介護施設で働くなら、障害者や高齢者でも食べやすい献立を考える必要があります。一人ひとりの状態に合わせて、食材を細かく刻んだり、流動食にしたりと対応を変えることが大切です。そのため、入居者や利用者の状態をヒアリング調査するのも、管理栄養士の仕事になります。
管理栄養士と栄養士の違い
管理栄養士も栄養士も、食と栄養に関わり人々の健康を支える仕事ですが、管理栄養士のほうがより高度で専門的な仕事に携わります。管理栄養士の国家試験は、栄養士の資格を持っている人でないと受験できません。栄養士がより高度な知識や技術を身につけることで管理栄養士の資格をとることができます。
特に、医師の指示を受けて患者さんに栄養指導を行ったり、病院や福祉施設など、高度な栄養管理が必要な人に対して食事の管理を行うことは、管理栄養士でなければできないことです。病院、高齢者施設、企業や福祉施設にある給食施設で、ある一定以上の規模である場合は、管理栄養士を置くことが義務づけられています。
管理栄養士に必要な資格・試験
管理栄養士の資格は、国家試験を受験して合格すると取得することのできる国家資格です。国家試験には受験資格があります。受験資格を得るルートは2種類あり、1つは高校を卒業した後、管理栄養士を養成する4年制の学校に入学し、必要なカリキュラムを全て修めて卒業(卒業見込み含む)することです。もう1つは、栄養士課程のある学校で必要なカリキュラムを修めて栄養士の資格を取り、栄養士として実務経験を規定の期間以上積むことです。2年制の栄養士課程を卒業した場合は、必要な実務経験は3年以上、3年制の場合は2年以上、4年制の場合は1年以上です。
管理栄養士国家試験は年1回、2月下旬から3月上旬の日曜日に行われます。合格発表は3月の下旬です。2023年に行われる第37回管理栄養士国家試験は、2月26日(日)に試験、3月24日(金)に合格発表が行われます。合格率は50〜65%程度で推移しています。管理栄養士課程を卒業と同時に受験した新卒のみでは、ほとんどの年で90%を超えており、勉強に集中できる環境で学んできた人にとっては、特別難しくはない試験だといえます。対して栄養士の仕事をしながら受験する人では、20%前後の年が多く、受験資格によって難易度に大きな差があります。
2022年の試験では、16,426人、合格者は10,692人、合格率は65.1%でした。大学や専門学校の管理栄養士課程を卒業と同時に受験した新卒者のみのデータを見ると、合格率は90%台で推移しています。2022年の試験では、9,490人が受験して8,812人が合格、合格率は92.9%でした。落ちてしまった場合は、翌年以降の試験で再挑戦ができます。
管理栄養士の試験の合格者数と合格率
都道府県公表資料より
管理栄養士を養成する大学・学費
実務経験なしで管理栄養士になれる管理栄養士養成課程を持つ学校は4年制で、大学や専門学校があります。全国栄養士養成施設協会によると、大学が143校、専門学校が6校です。大学では家政学部や栄養学部、健康科学部などに設置されていて、学部や学科の名称はまちまちですから、進学を考える場合は丁寧に調べる必要があります。
管理栄養士課程をもつ大学の学費は、4年間の合計で国公立大学は243万円程度です。私立では、340万円〜800万円程度、専門学校はすべて私立で、440万〜630万円程度です。
管理栄養士の就職先
管理栄養士の就職先はとても幅広く、病院や診療所などの医療施設、企業の食堂、学校や保育所の給食施設のほか、都道府県や市町村での行政職、大学や専門学校で管理栄養士や栄養士を育てる教員としての道もあります。介護施設などで栄養ケアを担当することもあります。食品メーカーや外食企業などでも管理栄養士の需要があります。 経験を重ねた後では、フリーランスの管理栄養士として、企業や行政からの依頼で栄養指導を行ったり、料理教室を開いたりする道もあります。
管理栄養士 新卒者の就職先
管理栄養士養成課程を卒業した新卒者の就職先を見ると、病院が30.5%と最も多く、次いで、企業24.3%、給食会社等12.2%、児童福祉施設11.0%、介護保険施設9.9%となっています。給食を提供する施設は、その施設で直接人を雇う場合と、給食施設に業務全体を委託する場合があり、給食会社に就職して、病院、福祉施設など、各現場に配属になることもあります。こちらのデータでは、病院、学校、企業、児童福祉施設、社会福祉施設、介護保険施設への就職は、その施設に直接雇用されている場合と、委託企業から配属されている場合の両方が含まれています。
(管理栄養士の就職先グラフ)全国栄養士養成施設協会HPより
月給・年収・給与
管理栄養士の給料については、管理栄養士としての公式な調査結果はありません。10人以上在籍している事業所を対象にした厚生労働省の2021年の調査で、「栄養士」の平均給料を見ると、月給は各種手当て込みで25万5,500円、賞与・ボーナスの平均は60万9,600円、年収にすると367万5,600円程度です。短時間勤務の場合の時給の平均は1,783円と、一般的なパート勤務の仕事より少し高めの水準となっています。また、初任給に相当する年齢20〜24歳で経験0年の栄養士の平均月給は、20万1,900円です。
これは、栄養士としての調査ですのでより専門性の高い管理栄養士は、もう少し高い水準になると推測されます。
栄養士の給与
年収 | 367万5,600円 |
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月給 | 25万5,500円 |
賞与・ボーナス | 60万9,600円 |
時給 | 1,783円 |
初任給 | 20万1,900円 |
(「令和3年賃金構造基本統計調査」より「栄養士」としての給料)
適性・向いている人
管理栄養士は食と栄養の専門家です。食べることへの興味のある人が向いています。料理好きであることも適性のひとつ。特に医療現場では、人の命に関わる責任もあり、人の体のしくみや健康についてしっかり考え、衛生面で細かい配慮が必要とされます。栄養指導やチームで動くうえではコミュニケーション能力も欠かせません。栄養素に関する細かい計算も必要なので、数字や理論的に考えることが苦にならない人が向いています。医学や栄養学は日々進歩するので、就職後もつねに自分の知識を最新にアップデートする努力も求められます。
食べることに興味がある
管理栄養士は、人が栄養を摂ることについての専門家ですから、食べることに興味があることは大前提です。食べることが大好きという管理栄養士も多くいるでしょう。現在の管理栄養士業務では、食べ物や栄養の知識だけでなく、どのように料理するのか、どんな人とどのように食べるのか、などの文化面、精神面での食事の役割を考えることがますます大切になっています。食べることを、広い視野から考えられる人は向いているでしょう。職場によっては自分自身で料理をしたり、レシピ開発をすることもあるため、料理が好きなことも大切な適性です。
人の体や健康に興味がある
管理栄養士は、食を楽しむだけでなく、病気を治すための食事、健康を保つための食事を考える大切な役目を担っています。栄養を吸収する人の体のしくみや、病気になるメカニズムについても、学習が必要です。人の体のしくみや健康について興味があることも重要です。また、調理場の衛生管理も管理栄養士の役目となることが多く、きれい好きで衛生的な環境を保つのが得意なことも必要になります。
コミュニケーション能力・協調性
管理栄養士は、食事づくりの現場では他の栄養士や調理師、医療現場では医師や看護師、薬剤師など、さまざまな職種の人と一緒に働きます。チームで協力して働くためには、必要なことを正しく伝え、お互いに気持ちよく働けるようにするコミュニケーション能力や伝達力が欠かせません。さらに、患者さんや一般の人に、栄養や食事についてわかりやすく説明し、その人の生活のなかで実践してもらえるように促す力も大切です。コミュニケーション能力はしっかりと磨いておきたいスキルです。
計算や理論的な考察が得意
管理栄養士の仕事では、献立づくりで必要な栄養素を入れたり、バランスのとれた食事にしたりするために、細かな計算が欠かせません。理数的な能力も必要な仕事です。細かい計算を積み重ねたり、理論的に考えたりすることが苦にならないことは、管理栄養士の適性のひとつです。また、給食を提供する上では材料費などを予算内に収めることが必須ですから、細かいお金の計算が得意な人も向いているでしょう。
学習を続けていく力
摂るべき栄養の基準は、研究が進むにつれて変化していきます。管理栄養士の知識もそれに合わせてアップデートしていかなくてはなりません。また、医学も日々進歩するため、栄養面での治療のあり方やケアの方法も、どんどん新しくなります。資格を取得して就職した後にも、日々学習を続けて、知識を更新していく努力ができる人が、管理栄養士の仕事の現場で活躍できるでしょう。