精神保健福祉士になるには
精神保健福祉士になるには、精神保健福祉士国家試験に合格する必要があります。国家試験の受験資格を得るには、4年制の保健福祉系大学で指定科目を履修・卒業するなど複数のルートがあります。国家試験は、年1回、2月上旬に実施され、3月中旬ごろに合格発表が行われます。近年の合格率は、60%を超えており、しっかりとした対策が必要な試験です。
目次
精神保健福祉士に必要な資格・試験
精神保健福祉士になるには、国家試験に合格し、精神保健福祉士の資格を取得することが必要です。国家試験の受験資格を得るには、4年制の保健福祉系大学・大学院や4年制の専門学校で指定科目を履修して卒業する、3年制の保健福祉短期大学などで指定科目を履修・卒業後に規定の年数にわたり相談援助実務経験を積む、養成施設等で学ぶといった複数のルートがあります。
国家試験は、年1回、2月上旬に全国7都道府県で実施されます。合格発表は3月中旬ごろです。
ここ数年の合格率は、60%を超えています。2022年に実施された第24回精神保健福祉士国家試験では、6,502人が受験し4,267人が合格。合格率は65.6%でした。不合格であっても、翌年以降の国家試験に再チャレンジできます。
精神保健福祉士国家試験 合格者数と合格率
厚生労働省発表資料より
精神保健福祉士を養成する大学・学費
精神保健福祉士国家試験の受験資格を得るには、4年制の保健福祉系大学や専門学校で指定科目を履修して卒業する、3年制の保健福祉短期大学などで指定科目を履修・卒業後に実務経験を積むなどの方法があります。
保健福祉系大学等ルート(4年制大学等)
4年制の保健福祉系大学・大学院・4年制の専門学校などで指定科目を履修・卒業した時点で受験資格を得られます。
保健福祉系短大学等ルート(福祉系短大等+相談援助実務)
3年制の保健福祉短期大学などで指定科目を履修・卒業した場合は、3年制であれば1年間、2年制であれば2年間、相談援助実務経験を積めば、受験資格を得られます。
短期養成施設等ルート
福祉系大学で基礎科目のみ履修・卒業した場合は、短期養成施設などで6ヶ月以上学べば受験資格を得られます。また、福祉系短大等で基礎科目のみを履修・卒業した人が受験資格を得るには、3年制であれば1年間、2年制であれば2年間、相談援助実務経験を積み、さらに短期養成施設などで6ヶ月以上学ばなければいけません。
一般養成施設等ルート
一般の4年制大学を卒業してから一般養成施設等で1年以上学ぶと、受験資格を得られます。一般短大を卒業した場合、3年制であれば1年間、2年制であれば2年間にわたり相談援助実務を経験後、精神保健福祉士一般養成施設等で1年以上学ぶと受験資格を得られます。
また、大学・短大等を卒業していない人は、相談援助実務を4年間経験していれば、精神保健福祉士一般養成施設等で1年以上学んだ後に受験資格を得られます。
各地域に設置されている保健福祉系大学などの学校一覧は、地方厚生(支)局のホームページで確認できます。 精神保健福祉士を養成する保健福祉系大学の学費の相場は、4年制の昼間コースで約220万円~です。また、一般養成施設や短期養成施設などにかかる費用は、約30万円~です。
保健福祉系大学は、奨学金や教育ローンの対象なので、学費が足りるか不安な場合は利用を検討しましょう。また、養成施設の多くは「専門実践教育給付制度」の対象となっており、条件が合えば費用の一定の割合が支給されます。
精神保健福祉士の就職先
公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行った『社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年度)』によると、精神保健福祉士の就労状況は、「福祉・介護・医療分野の仕事」が75.2%、「福祉・介護・医療の資格者を養成する高校・専門学校・大学等の仕事」が1.4%、「福祉・介護・医療以外の分野の仕事」が9.3%、「仕事をしていない」が12.8%でした。
分野別に見ると「障害者福祉関係」が24.4%と最も高く、次いで「高齢者福祉関係」が15.2%です。施設・事業所別に見ると「精神病院」の割合が14.9%と最も高いという結果になりました。その他、介護施設などさまざまな場所で、専門性を発揮して活躍しています。
精神保健福祉士の仕事内容
精神保健福祉士は、精神病院などの医療施設などに勤務し、精神障害のある人や家族からの相談に応じます。具体的には行政手続き・公的支援制度の紹介や日常訓練、就職や職場への定着の支援といったサポートを行い、より良い生活ができるよう手助けする役割を担います。 また、保健所や精神保健福祉センターなどでの啓発活動や、教育現場でのメンタルヘルス関連の相談業務など、幅広く活躍しています。
主治医や看護師、作業療法士などの他職種と連携しつつ、精神保健福祉士としての視点から支援を行います。
精神保健福祉士の月給・年収・給料
『社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年度)結果報告書』によると、精神保健福祉士の平均年収は404万円です。年収を年齢別に見ると40代がピークです。20代であれば男性は332万円、女性は320万円です。30代になると、男性は426万円、女性は347万円。40代では男性が501万円、女性が380万円です。
月給は、精神保健福祉士の主な職場として介護福祉施設が挙げられることから、『令和3年賃金構造基本統計調査』の「介護職員」の給与を見ると、手当込みの月給は23万~27万円、賞与は45~55万円が相場です。
また同調査にて介護職員の平均初任給は、19歳までは月給17万9,100円、年収216万2,600円。20~24歳は月給20万200円、年収244万1,700円です。精神保健福祉士を含む介護職員が短時間勤務する場合の時給は、1,182円が相場です。
精神保健福祉士の給与
年収 | 404万円 |
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月給 | 23~27万円 |
賞与・ボーナス | 45~55万円 |
時給 | 1,182円 |
初任給 | 17万9,100円~20万200円 |
(「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
適性・向いている人
精神保健福祉士として活躍するには、相手の立場や思いに寄り添える・忍耐強い・コミュニケーション能力が高い・客観的に物事を考えられるといった点が非常に重要です。幅広い属性・疾患・症状の患者やその家族と接する機会が多いため、相手に寄り添う気持ちと高いコミュニケーション能力が不可欠です。医療従事者など他の職種と協力して業務を進める際も、コミュニケーション能力を活かせます。
また、忍耐強さもとても大切です。患者とのコミュニケーションが困難なケースもあり、また患者が問題を解決し、社会復帰をするまでには長い時間を要します。困難なことがあっても粘り強く支援を進められる人は、精神保健福祉に向いているといえるでしょう。
また、患者を思うあまり熱くなりすぎると自立の妨げとなるため、バランス感覚に優れた人が求められています。
コミュニケーション能力が高い人
精神に障害のある人やその家族など、幅広い年齢の人の相談に対応するため、コミュニケーション能力は必須です。相手に合わせた接し方を工夫し、心の距離を縮められる人が向いているでしょう。 業務上、医師をはじめとする医療従事者など他の職種との連携が欠かせないため、日ごろからコンタクトを取り合い、人間関係をつくるのも大切な仕事です。 友達が多い、複数のコミュニティで活動している、苦手な人とも上手く付き合えるといったタイプの人であれば、スムーズに活躍できます。
忍耐強い人
精神に障害のある人のなかには、精神保健福祉士に対し、強い言葉を使ったり、何も話してくれなかったりといった対応をする人もいます。 また、手厚い支援をしたとしても社会復帰までには時間がかかり、成果が現れにくいのが現状です。 どのような状況でも、温かく思いやりを持って、辛抱強く支援をすることが非常に大切な仕事です。
客観的に物事を考えられる人
患者や家族に親身になるあまり、バランスを欠いた対応をすると、かえって本人の自立を妨げたり、トラブルを引き起こしたりするケースがあります。 たとえば、身の回りの世話をしすぎた結果、本人が自分のことをできないままになってしまう。障害者であることに過剰な配慮をした結果、逆差別のような状態になってしまうといったケースです。 自分の行動や考えを客観的に振り返り、バランスを取りながら業務をするのが非常に大切です。