介護職の仕事内容は?勤務先や職種別の業務、キャリアパス等を紹介
介護職とは?
介護職とは、日常生活において介護が必要な方々をさまざまな方法でサポートする職種です。
日本の要介護(要支援)認定者数は年々増えており、制限のある生活を送っている高齢者や障害を抱える方は数多くいます。そのような方々が自分らしく暮らせるように援助をするのが、介護職の仕事です。
介護職には担当できる業務に応じた資格があり、代表的な介護職の資格は「介護福祉士」です。介護福祉士は、介護に関する専門的な知識とスキルを持っている人に認定される国家資格であり、令和3年時点で181万3,281人が登録されています。
介護に関連する資格を持たない者も介護業務につくことはできますが、要介護者の体に直接触れる介助は、介護施設内で介護福祉士の指導のもとで行う場合以外はすることができません。
また、そのほか介護に関係する福祉関係の国家資格としては社会福祉士や精神保健福祉士があります。
目次
介護職の仕事内容(就業場所別)
介護職の仕事内容は、介護を行う現場によって三つに大別できます。
入所・居住系サービスの仕事
一つ目は、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームなどの施設での入所・居住系サービスです。
入所系の施設に勤務する場合は、身体介護を中心に、看護師と連携して健康管理を行い、リハビリの補助に携わることもあります、また生活を楽しめるレクリエーションの企画や運営を担当することもあります。
高齢者の入所施設には、要介護3以上の人が入所対象となる介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)、リハビリや医療・介護を受けて在宅復帰を目指す介護老人保健施設(老健)などがあります。食事、排泄、移動など、生活で必要な身体介護を行い、24時間の介護が必要となるため夜勤があるのが一般的です。
入所系の介護施設は、介護の専門技術や知識を万遍なく身につけられる職場といえます。主に民間企業が運営し、特養や老健よりも幅広い人が利用できる、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等、入所施設の種類はさまざまです。
また認知症の人が共同生活をする認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、家事など生活援助の仕事も多くなります。
通所系サービスでの仕事
二つ目は、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)などを行う通所系サービスです。自宅から事業所に通う利用者に対し、食事や入浴の介助、レクリエーション、機能訓練などの提供などを行います。
通所施設も基本的な仕事は入所施設と同様だが、比較的要介護度が低い利用者が多く、日中 の勤務が一般的だ。送迎車の運転や 添乗の仕事を行うこともある。
訪問系サービスでの仕事
三つめは、訪問介護や訪問リハビリテーションなどを行う訪問系サービスです。介護福祉士や、介護職員初任者研修・介護職員実務者研修を修了した者が利用者の自宅へ伺い、食事や入浴の介助を行います。
また、これらの業務のほかに調理や清掃、事務なども介護業界にとって必要な仕事です。そのため、介護に関する資格を持っていない介護職従事者も数多くいます。
介護職の職種別にみる活躍の場
介護職に関連する資格には、さまざまな種類があります。
介護職員初任者研修
まず、ホームヘルパーとして訪問介護業務を行うために必須なのが、介護職員初任者研修の修了です。これは介護職の基本的な知識やスキルを習得するための研修であり、介護職に携わる方であれば最低限持っておきたい資格です。この研修を修了していると、訪問介護や身体介護のほか、介護タクシーのドライバーとしても働くことができるようになります。
介護職員実務者研修
介護職員実務者研修は、介護福祉士を目指す方は必ず受けておかなければならない研修です。より実践的な介護の知識やスキルを学ぶことができ、修了することでサービス提供責任者になることができます。サービス提供責任者とは、訪問介護計画の立案やホームヘルパーの指導をする立場の人のことであり、訪問介護事業所では配置が必須の職種となっています。
介護福祉士
介護福祉士は、専門学校や大学などの養成施設での勉強、実務経験を経たうえでの実務者研修、もしくは介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修に修了することで、受験資格を得られる国家資格です。また、これらのほかに経済連携協定に基づき入国・就労を行っているEPA介護福祉士候補者も受験資格を得ることができます。介護福祉士には、入所・通所施設や事業所、要介護者の自宅などでの各種介護サービスの提供のほか、介護職員の指導やチームマネジメントなど、さまざまな活躍の場が用意されています。
ケアマネージャー(介護支援専門員)
ケアマネージャー(介護支援専門員)の主な業務内容は、ケアプランの作成です。ケアプランとはサービス計画書のことであり、利用者が適切な介護サービスを受けられるよう、各種施設や事業所でプラン作成や事業者・ご家族との調整を行います。ケアマネージャーになるには、介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)に合格し、実務研修を受けた後に各都道府県知事の登録を受ける必要があります。
介護職の将来性
介護保険の対象者・利用者は年々増加しており、2022年4月時点で約25万人が特別養護老人ホームへの入所を待っている現状があります。また、同居する家族などが介護を担っているケースでは、介護にかかる時間が大きく、生活の負担になっているケースも少なくありません。
このことから、介護職は今後さらにニーズが大きくなっていくと考えられています。また、その中でも在宅介護サービスは伸び率が高くなると予想されており、在宅での介護が可能な介護福祉士や、介護職員初任者研修・介護職員実務者研修を修了した者の需要はさらに大きくなっていくことが予想されます。
介護職のキャリアパスは?
これまでは資格の種類や有無による業務の差異があまり見られなかった介護業界ですが、近年では明確な役割分担が行われるようになってきています。その結果、介護職におけるキャリアパスも整備されてきており、初任者研修修了者は介護福祉士を目指し、介護福祉士に合格している者はチームメンバーの指導やマネジメントを行いながら、上級資格である認定介護福祉士を目指すようになってきました。
認定介護福祉士へのステップアップ
認定介護福祉士とは、介護福祉士資格取得後の実務経験が5年以上あり、そのほかの研修やレポートなどの要件も満たした者が、養成研修を受講・修了することで認定が受けられる資格です。介護職における専門的で高度な知識と技術、医療連携やマネジメントに関するスキルを習得した介護福祉士に認定される資格であり、2023年末時点では172名が認定を受けています。
スキルアップするには?
介護職としてスキルアップを考える場合、まずは介護職員初任者研修や生活援助従事者研修、認知症介護基礎研修を受講しましょう。介護職員初任者研修と生活援助従事者研修では介護の基礎となる知識やスキルを学ぶことができ、認知症介護基礎研修では認知症を患っている方に対する介護の知識や技術、実践的なスキルを学ぶことができます。また、認知症介護基礎研修は、介護業務に携わる方は受講が必須となっています。
介護職員初任者研修や生活援助従事者研修、認知症介護基礎研修を修了した後は、介護職員実務者研修を受けましょう。この資格は介護福祉士を受験するうえで必須の資格となっており、より質の高いサービス提供のための知識やスキルを習得することができます。
介護福祉士を持っている場合は、ファーストステップ研修などの研修がおすすめです。ファーストステップ研修は、小規模チームリーダーの養成を目的とした研修です。利用者一人ひとりが自分らしく暮らすことができるよう、尊厳を重視したケアの提供が可能な介護士の育成を図っています。
また、介護に関する専門性を高めたい場合は、認定介護福祉士養成研修などの研修があります。認定介護福祉士養成研修では、医療や社会的支援、マネジメントなど複数の分野の600時間のカリキュラムを修了する必要があり、より専門的で質の高い介護サービスの提供、多職種との連携、地域の介護力の向上が図れる人材を育成しています。
介護職の給料は?
厚生労働省の調査によると、介護職の平均月給は26万円~28万円台です。また、年収では訪問介護従事者が約390万円、施設の介護職員が約371万円となっており、介護職に従事している方の多くは賃金に関して満足していないという現状があります。
このような現状から、介護職員処遇改善加算を算定する取り組みが行われており、2022年度には75%の事業所がこれを算定しています。この加算は、介護職員の職位や職務内容に応じた賃金体系の整備、研修機会の確保、経験や資格に応じて昇給する仕組みの整備、職場環境の改善などを行っている事業所に対して行われ、加算額は職員の給与や賞与にあてられています。
介護施設の経営主体
介護施設の経営主体は、社会福祉法人や医療法人、企業など、さまざまです。施設ごとの特徴としては、特別養護老人ホームは原則的に自治体か社会福祉法人が経営することになっており、全体の95%強を社会福祉法人が経営しています。
通所リハビリテーション施設(デイケア)は、全体の8割ほどを医療法人が営んでおり、リハビリテーションの提供を重視している環境であることがわかります。
全体の過半数を企業が経営しているのは、訪問介護施設、通所介護施設(デイサービス)、有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホームなどの特定施設です。これらは、初期投資が比較的少ないサービスとなっており、異業種で培った知識や技術を生かして運営を行っている企業が多くあります。
介護職は家庭と両立しやすい?
公益財団法人 介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」によると、どの形態のサービスを提供している事業所でも、「過去3年間に妊娠・出産・育児を理由に退職した従業員はいない」との回答が過半数を超えています。
また、「育児休業や育児休暇を就業規則に定めている」とした事業所は全体の71.8%となっており、多くの事業所が仕事と家庭の両立ができる環境を整えています。夜勤が必要になる入所型や居住系の事業所では「退職した従業員がいる」と答えた割合が少し多くなりますが、居宅介護支援や訪問系ではその割合が少なく、ライフステージの変化に合わせて働き方を柔軟に変えていける点は介護職の利点の一つだといえます。
よくある質問
介護職はなぜ不人気なのでしょうか?
賃金の低さや労働環境の厳しさが、介護職が不人気といわれる理由です。また、それにより人手不足に陥っている事業所が多く、思うように休暇が取れないことも、人手不足を悪化させる要因となっています。しかし、その一方で仕事にやりがいを感じていない介護職員は全体の8%程度となっており、多くの介護職員は仕事にやりがいを感じながらも、理想とする収入を得られていない現状であることがわかります。
介護職がやってはいけないことは何ですか?
介護職がやってはいけない行為として、まず「医行為」が挙げられます。医行為とは、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」のことです。介護職の場合、インスリン注射、摘便、床ずれの処置、血糖測定などは医行為のため行うことができません。
また、医療類似行為であるマッサージやストレッチ、リハビリテーション、散歩、市販薬の投与や貼付なども介護職ではできないことになっています。そのほか、介護保険の生活援助の範囲外と考えられる窓ふきや庭掃除、宗教行為に該当する恐れのある冠婚葬祭やお墓参りなどの支援も、介護職は基本的に行うことができません。