面白い取り組みを行っているデイサービス
2024デイサービス5選
高齢化にともない、デイサービスの事業者の数が増加しています。デイサービスでは、機能訓練のほか、レクリエーション、昼食、おやつ、入浴などのサービスを提供するのが一般的ですが、最近では進化。他施設との差別化のため、施設独自のオリジナリティーあふれるサービスを提供したり、面白い取組みを展開したりしている事業者が急増中です。
(写真:デイサービス隣家:近隣カフェを清掃するボランティア活動後のひと時)
今回はデーサービスのロールモデルとなる事業所が選出された「2024デイサービス5選」の事業所とその特色ある取り組みをご紹介します。
目次
デイサービス5選とは?
日本デイサービス協会は地域包括ケアシステムの確立において、在宅サービス3本柱の1つであるデイサービスの意義の再構築や可能性を探求しています。レスパイトケアの充実はもちろん、自立支援の推進を通じてデイサービス事業者が持続可能できるよう、利用者本位の社会保障制度改革の実現を目指し取り組んでいます。
令和3年度介護報酬改定は制度見直しとなり、デイサービス事業者には大きな変革が求められることとなりました。どう対応していくべきか判断に迷い混乱している事業者も存在しており、ロールモデルとなる新しいデイサービスの形を示していくことが重要といえます。
そこで好事例を収集・発信していくことを目的に「デイサービス5選」を開催し、先進的な取り組みを行うデイサービスの事業所を選定しています。3回目となる今回も、これまでのデイサービスにない画期的な取り組みや仕組み、システムのテーマで事例を募集し、1519の事業者が応募。1次審査、最終審査(2次審査)を経て選ばれた5選をご紹介します。
埼玉県 デイサービス隣家
お仕事あっせん型のデイサービスで生活動作などが向上
「デイサービス隣家」は、定員10名の地域密着型・お仕事あっせん型のデイサービスです。名前は「隣の家に遊びに行くような感覚で、お茶でも飲みにいらしてください」という意味で命名。日曜大工・手芸などの手作業・食事作り・家庭菜園など、日常生活で行われている「お隣さん(利用者)それぞれの当たり前」を大切に支援しながら、生活意欲や日常生活動作の維持・向上を目標に取り組んでいます。
「1日の中でひとつでも役割を持ってもらう」「役割と通した活動をリハビリと考える」「役割を通して生活意欲の向上を図る」の3つを指針とし、機械を使った運動やレクリエーションは行わず、役割のすべての工程が気付いたらリハビリになっていたという仕組みとなっています。
例えば食事を挙げると、日々の献立は決めずに、利用者が集まってから「今日は何を食べよう」と相談。食べたい食事の要望、冷蔵庫にあるもので何が作れるかなどを考えて献立を決め、足りない食材の買い出しに行きます。料理作り、配膳、洗い物などすべての工程は利用者が行い、おやつに関しても同様です。
木工作業は外部受注生産とし、設計から資材の買い出し、製作、納品まで全員で一緒にこなします。食事・木工作業は考える・見る・作るの3点をリハビリの基礎とし、献立・設計は脳の活性化、食材・資材の買い出しはスーパーやホームセンターを1周する歩行訓練になる上、見ることで刺激にもなります。包丁作業・のこぎり作業は全身運動につながります。
利用者の9割以上が認知症診断、記憶障害、認知症の症状が出ている人ですが、役割意識を持って参加していることもあって、認知症の進行は現状維持や上りが緩やかになっています。
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北海道 百年の森函館
子供から高齢者が共存する、新たなコンセプトの複合施設
「百年の森函館」は、身体機能の回復だけではなく生きがいを持てるサービスを提供する、機能訓練型の短時間デイサービスです。1つの敷地に「高齢者のデイサービス」「居宅介護支援」「障がい児童のデイサービス」「障がい者の就労継続支援B型」の4業態に加えて、カフェや商店、高齢者・障がい者が働く場所が併設された、多世代型複合施設となっているのが特徴です。子供から高齢者が集うことで、子供は孤独の緩和、社会性の習得、高齢者は社会参加、認知症の予防、生きがい・楽しみにつながっています。
生きがいを持てるサービスの一例としては、現地の農家から玄米を仕入れて精米し、作業分析をして製品化をしています。精米すると大量の米ぬかが出て廃棄していましたが、地球環境を考え米ぬかを再利用。米ぬかの石けんやふりかけなどに商品化し、リハビリと組み合わせたワーキングプログラムとしています。利益は利用者に還元しています。
そのほか就労継続支援B型の障がい者が自家焙煎をして、高齢者にコーヒーをふるまっています。高齢者は焙煎により出たコーヒーかすで石けんを作り、障がい者<―>介護、介護<―>障がい者間の交流が生まれています。商品は店内やECサイトなどで販売され、高齢者の生きがいを見出すことにつながっています。
石川県 ポラリストレーニングセンター三馬
日本で唯一の卒業デイサービス
「ポラリストレーニングセンター三馬」は、利用者の“自立性の回復”を目的とした自立支援介護・介護の卒業を第一に、「歩行」「身体機能」「意欲」の維持・向上を目指している自立支援特化型のデイサービスです。「自分の足でしっかりと」をコンセプトに、住み慣れた自宅でいつまでも元気に暮らせるよう歩行・リハビリを中心にさまざまなリハビリプログラムで利用者の“自立した生活”をサポートしています。 自立支援介護への取り組み、パワーリハビリテーションの導入、歩けるようになるための歩行プログラム、プロの介護職による専門性の高いケア、医療法人が母体のグループ体制、学術研究に基づいたケアの実践の6つを特徴としています。
さらに利用者一人ひとりの「やりたいこと」「行きたいところ」といった目標・目的を優先。実現するために必要なプログラムを実践しているため、「歌を唄う」「折り紙を折る」といったレクリエーションを行っていません。本人だけでなく、家族やケアマネージャーの協力も得ながら、自宅で生活している中での改善点を見つけ出してサポートすることで、「介護度の改善」=「自宅での介護負担軽減」を視野に入れた自立支援介護に取り組んでいます。
自立支援介護とは、本人の自主性を回復し、人間らしい生活の自由を手に入れるためのアプローチですが、在宅生活で欠かせない自立は「身体的自立」「精神的自立」「社会的自立」の3つです。障がい児、障がい者、高齢者という3つに分類し、課題も利用者により異なります。これらは相互に深いつながりを持ち、成立することで「介護を必要としない状態」を実現することができます。高齢者の多くは、加齢や病気により身体的自立を失うことで自立のバランスが崩れて介護(要介護)が必要になっていきます。これを元の状態に戻すアプローチが、「ポラリストレーニングセンター三馬」の自立支援介護です。歩行と生活動作の改善を目指すリハビリに特化した3時間15分の短時間コース(午前・午後)と食事・入浴など自宅での必要な生活動作の改善を目指す6時間コースを用意しています。
過去10年間で、施設を3ヵ月以上利用した介護度改善者は3276名のうち、介護保険からの卒業者は780名に及んでいます(2023年度11月28日現在)。過去5年間で32名の方が同施設から卒業しています。なお卒業の基準は「自分の住み慣れた家で全く介護保険を使わずに生活できる事」としています。徐々に卒業数は増えており、2023年は12名の方が卒業し、卒業率は36.3%でした。
神奈川県 R-studio PLUS+
生きがい・やりがい・役割を見いだせる
「R-studio PLUS+」は、リハビリ特化型の半日デイサービスです。「できるを明日へ」を理念に、運動サービスに加えて、生きがい・やりがい・役割を見いだせるデイサービスを提供しています。「ファンになる1日」をテーマに、運動、入浴、食事、R-LIFEと多様なニーズ応えられる4つの柱で展開しています。 運動部門では、運動をエンターテイメント化して、自然と身体を動かしたくなるプログラムを重視しています。理学療法士が4名常駐して定期的に体の機能や生活状況の評価を実施。その評価結果をもとに目標を明確にして、ヨガ、レッドコース、ストレッチ、筋力トレーニング体幹トレーニングなど200種のメニューから利用者に一番合う運動を提案するので「運動が楽しい!」となり、満足度は100%となっています。
ランチは外食気分が味わえるようおしゃれなカフェで。毎朝Aランチ、Bランチから選べるほか、月に1度、各県のご当地メニューを提供し、イベント食も実施。食事制限メニューにも対応しています。
入浴サービスは檜風呂を使用。介護士とリハビリの専門家が連携して、入浴リハビリプログラムを練ります。自宅の環境評価から動作評価を実施し、家族・ケアマネージャーの入浴課題に対する情報共有することで機能訓練を行います。「普段お風呂に入ることができない」「自宅で安全にお風呂に入れるようになりたい」「一人でお風呂に入れるようになりたい」と望んでいる人の夢が叶えられるようサポートします。
R-LIFEでは生きがい、やりがい・役割をコンセプトに、利用者の「やってみたい」に耳を傾けコンテンツを作っています。利用者の声が地域に届いて現在は地域の方が施設に訪れさまざまなイベントも催されています。地域の行政や企業もSNSを通じて活動に賛同。イベント開催地の提供など、スタッフ、利用者の地域交流の場となっています。
山形県 デイフィットたび空
「つるかめメソッド」で障がい者の復職もサポート
「デイフィットたび空」は、高齢者の自立支援と暮らしの継続を共生型事業に生かすことをテーマに展開する「つるかめグループ」です。デイサービスは、さまざまな介護度の人が利用しています。介護度によっても改善する課題が異なり、生活課題が明確になりやすい人(痛い、フラフラするなど)、そうでない人(着替えや入浴ができない、トイレは介助が必要など)に分かれます。
同社では、開眼閉脚立位や握力といった身体機能のアセスメント、生活課題のアセスメントにより、利用者にどんなプログラムが必要なのかを抽出する独自の「つるかめメソッド」を採用しています。 アセスメントの課題を明確にして目標を視覚化し、身体利用が強い利用者には運動量を確保するメニューを、生活課題の要素が強い利用者には課題の動作に合わせた運動・動作練習メニューをリハビリ専門職が考案した約500種類の中から提案しています。運動の質が標準化されたところで、介護士や介護職が行う機能訓を行うと、身体機能、生活動作、介護度の改善が拡大していきました。
他方、地域の障がい者に対する課題に取り組みました。主に18~39歳以下の脳卒中の人で、介護保険非対象、疾患別リハビリは期限制限があります。若い人は復職の希望が強いのに必要なサービスにつながらず、うまくいっていない事例がたくさんあったそうです。全国のデイサービス事業者の内、介護保険事業者が共生型サービスを実施しているのは1.87%でした。そこで同社は「つるかめメソッド」を用い、脳卒中の復職サポートに取り組みました。①何らかの仕事ができる、②8時間働ける体力がある、③通勤手段がある、④障害受容(仕事を前向きに取り組める気持ちおよび職場の理解)の4つを復職の要件とし、それぞれに適切に関わることを重視したそうです。
30代男性の事例をご紹介します。脳卒中による右半身麻痺と運動性失語のほか、てんかん発作の既往がありました。ADLはほぼ自立し、独歩は可能でした。小学校教員に復職したいけれど、利き手の麻痺と失語があるので授業などができるか、職場・児童が受け入れてくれるかが不安で、退院後は自宅に引きこもり、TVを観て寝る日々だったといいます。同社は男性に「つるかめメソッド」を実施。何らかの仕事ができる生活改善プログラムを使い、左手による板書練習や授業練習を行いました。8時間働ける体力、柔軟性改善、下肢筋力などの運動対応度も行い、基礎体力をアップしていきました。
さらに生活改善プログラムなども使い、運動動作は改善しました。てんかん発作は家族のサポートを得て改善したそうです。身体機能が改善したことで自信がつき、スマホのメモ機能を活用するなど、授業練習の創意工夫が見られるようになり、障害受容も進んでいったそうです。障害受容・リハビリが進んできたところで、相談支援専門員と連携。勤務先の校長先生と面談を行い、週1のリハビリ出勤を開始。段階的に出勤回数を増やして、デイサービスを卒業できる好結果に。これにより若者に負けじとトレーニングをする高齢者が増えるなど、高齢者・スタッフに好影響を与えたそうです。
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