作業療法士(OT)になるには?資格を取得する最短ルート、仕事内容
作業療法士になるには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。作業療法士国家試験を受験するためには、高校を卒業後に指定の作業療法士養成施設で、3年間以上のカリキュラムを履修して卒業する必要があります。養成学校は、3年~4年制の専門学校、3年制の短期大学、4年制の大学があります。
高等学校を卒業後、最短3年で資格を取ることができます。作業療法士国家試験は1年に1回、2月に実施されます。合格率はおよそ80%で十分な準備が必要です。
今回の教えてグッピー作業療法士では、作業療法士に必要な資格やなるための最短ルート、仕事内容や給料などについて幅広くみていきます。
目次
作業療法士に必要な試験・資格
作業療法士になるには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。作業療法士国家試験を受験するためには、高校卒業後に作業療法士を養成するカリキュラムを提供している大学や専門学校などを卒業する必要があります。国家試験は、年1回2月下旬に実施されます。合格発表は3月下旬です。試験はマークシート方式で、一般問題と実地問題が出題されます。
作業療法士国家試験の合格率は約80%ですが、70%程度の年もあり十分な準備が必要です。合格基準は、総得点60%以上および実地試験35%以上の正解で合格できます。
作業療法士国家試験合格者数と合格率
厚生労働省発表資料より
作業療法士を育成する大学・専門学校
作業療法士の養成校には、4年制大学、3年制短期大学、3年制または4年制専門学校があります。また視覚障害者を対象にした特別支援学校もあります。2022年時で、作業療法士養成施設は全国に208校あります。作業療法士の資格を持っている人であれば、養成校で2年以上学べば受験資格が得られます。そのほか、外国の養成校を卒業済みや、外国で作業療法士の免許を取得済みの人は、所定の手続きをして認定を受けることで、養成校に入る必要がなかったり、不足した単位のみ取得することで受験資格を得ることができます。
作業療法士養成校の卒業までにかかる学費は、学校によって異なります。4年制大学では、国公立で242万5,200円、私立で550万~750万円ほどです。専門学校は3年制で400万~550万円、4年制で500万~650万円ほど。夜間コースがある場合、それぞれ100万円ほど安くなります。短期大学は400万~500万円です。教材費や実習費が別途必要になる場合もあります。また、地方に比べると東京や大阪などの都市部で学費が高い傾向があります。
大学 | 4年制 | 国立 | 242万5,200円 |
---|---|---|---|
私立 | 550万~750万円 | ||
短期大学 | 3年制 | 私立 | 400万~500万円 |
専門学校 | 4年制 | 私立 | 500万~650万円 |
3年制 | 私立 | 400万~550万円 |
作業療法士の役割
作業療法士は、日常生活における応用的動作のリハビリテーションを対象者に行う役割を担います。応用的動作とは、食事や調理、洗顔や着替えなど日常生活に必要不可欠な動作から、手芸や将棋など趣味として続けられるような動作までを含みます。作業療法士の役割として対象者の身体状況に合わせて、食事がしやすくなるような道具や、調理がしやすくなる道具などの製作にあたることもあります。
作業療法士と理学療法士の違い
作業療法士は手を使ったり指を細かく動かしたりするようなリハビリテーションを行う場合が多くなります。これに対して理学療法士は、立ったり歩いたりといった身体を大きく動かすようなリハビリテーションを行います。
作業療法士の就職先
作業療法士の70.7%は病院や診療所などの「医療施設」で働いています。次いで多いのは、「介護関連施設」で19.7%、「障害関連施設」で3.4%となっています。そのほかでは、会社や私立学校法人、医療生協、NPO法人などにも少数が勤務しています。
作業療法士の就業場所
日本作業療法士協会誌(2021年9月号)を元に作成
作業療法士の仕事内容
作業療法は、病気やケガ、高齢、環境への不適応などによって体を思うように動かせなくなった人を対象にしたリハビリテーションの一種で、患者さんの「作業」を焦点に当てた治療です。「作業」は、家事や入浴、排せつ、着替えなどの生活全般の行為で、仕事や趣味、遊び、対人交流、休養など、人が日常生活に関わるすべての活動が含まれます。学術的根拠だけでなく、「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念に基づいて行われ、「その人らしい」生活の目的に患者さんと伴走する仕事です。
病気やケガなど後天的な理由によって「食事をする」「着替えをする」「手を洗う」「お風呂に入る」などの作業が突然できなくなることは、大きなショックを受けるものです。作業療法では、作業自体の練習や作業のための環境整備に加えて、心の回復も重視しているのが特徴です。
作業療法士の平均年収、月給など給料
作業療法士の平均年収は418万9,400円(2020年、10人以上の組織)です。過去16年間で緩やかな増加傾向で推移しています。規模別にみると、1,000人以上の組織が一番高い給料となっています。年齢に伴って50代前半までは上がり続けますが、50代半ば以降は減少に転じることが多いです。2020年に卒業した作業療法士の初任給は23万7,100円です。
作業療法士の給料相場 | |
---|---|
年収 | 418万9,400円 |
月給 | 25~30万円 |
賞与・ボーナス | 60~80万円 |
初任給 | 23万7,100円 |
時給 | 2,000~3,000円 |
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より
作業療法士の適性・向いている人
作業療法士は患者さんと信頼関係を築くためのコミュニケーション能力や共感力が非常に大切です。また、患者さんの個々の目的に適したリハビリプログラムを考案できる柔軟さや、創意工夫する姿勢も役に立ちます。
コミュニケーション能力
作業療法士にはコミュニケーション能力がとても重要です。患者さん目指すライフスタイルや価値観を汲み取って適切なリハビリを実践していくために、患者さんと信頼関係が築くことが第一です。また、リハビリ治療は医師や看護師、作業療法士やソーシャルワーカーなど、ほかの医療スタッフとの連携も欠かせません。チーム医療を実践するためのスキルとして、コミュニケーションは非常に重視されます。
創意工夫
作業療法士にとって、創意工夫する姿勢も大切です。患者さんの持つ障害や目指すライフスタイルに合わせた作業を実践するために、さまざまなリハビリプログラムを実践していきます。患者さんによって千差万別となる目標に対するアプローチは、作業療法士が考案することもあります。患者さんにとって、より効果的で意欲的に取り組めるプログラムを考える創意工夫や柔軟さが求められます。
共感力
作業療法士には、患者さんを思いやり寄り添える共感力も大切です。患者さんの多くは心身に課題を抱えており、リハビリの必要性を理解していても、体や心がついてこないこともあります。そのような患者さんに寄り添いながら、信頼関係を築ける共感力が非常に重要です。
根気強さ
患者さんとしっかり向き合う粘り強さも求められます。退院までのリハビリ期間が計画通りに進まないことで、患者さんが挫折感や治療に消極的な気持ちになったときでも、根気を持って向き合うことが大切です。