理学療法士になるには
理学療法士になるには、理学療法士国家試験に合格する必要があります。理学療法士国家試験を受験するためには、高校を卒業後、大学や専門学校などの理学療法士養成施設で、3年間以上のカリキュラムを履修し、卒業する必要があります。理学療法士養成施設は全国に279校あります。養成学校は、3~4年制の専門学校、3年制の短期大学、4年制の大学があります。
理学療法士国家試験は年に1回2月に実施されます。合格率はおよそ80%で、十分な準備が必要です。
今回の 教えてグッピー 理学療法士 では、理学療法士になるまでのルートや仕事内容について紹介します。
目次
理学療法士に必要な試験・資格
理学療法士は、理学療法士および作業療法士法に基づく国家資格です。国家試験を受験するためには、高校卒業後に理学療法士を養成するカリキュラムを提供している大学、専門学校などを卒業する必要があります。
理学療法士国家試験は、年1回で2月下旬に実施されます。合格発表は3月下旬です。試験はマークシート方式で、一般問題と実地問題が出題されます。合格率は約80%ですが、90%を超える年も80%を下回る年もあります。合格基準は総得点60%以上および実地試験35%以上の正解で合格できます。
理学療法士国家試験 合格者数と合格率
厚生労働省発表資料より
理学療法士を養成する学校・養成校
理学療法士の養成校には、4年制大学、3年制短期大学、3年~4年制の専門学校があります。また視覚障害者を対象にした特別支援学校もあります。作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学ぶこことで受験資格が得られます。
養成校の卒業までにかかる学費は、学校によって異なります。4年制大学では、国公立大学は242万5,200円です。私立大学は550万~750万円程度です。専門学校の場合は、4年制で500万~650万円、3年制で400万~550万円ほど。夜間コースがある場合は、それぞれ100万円ほど安くなります。短期大学は400万~500万円ですが、学校数は少ないです(2021年時点で279校中8校)。
学校・養成校の卒業までの学費
学校 | 運営 | 費用 |
---|---|---|
大学(4年制) | 国公立 | 242万5,200円 |
私立 | 550万~750万円 | |
専門学校 | 4年制(私立) | 500万~650万円 |
3年制(私立) | 400万~550万円 | |
短期大学(3年制) | 私立 | 400万~500万円 |
私立の大学・専門学校は学校ごとに学費が大きく異なりますが、地方に比べると東京や大阪などの都市部で学費が高い傾向があります。また、教材費や実習費が別途必要になる学校もあります。多くの学校では奨学金制度があります。
就職先
理学療法士の約65.2%は、病院や診療所などの「医療施設」に勤めています。次に多いのは、介護老人保健施設や老人デイケアなどの「医療福祉中間施設」で6.5%です。また、「老人福祉施設」が1.6%あるほか、身体障害者福祉施設や知的障害児施設、児童相談所、心身障害児総合通園センター、精神障害者生活訓練施設、知的障害援護施設、特別支援学校、教育・研究施設、行政関連施設などにも少数が働いています。
理学療法士の就業場所
日本理学療法士協力HPのデータを元に作成
仕事内容
理学療法は、病気やケガ、高齢、障害などによって運動機能が低下した人に対して、運動機能の維持・改善を目的とした治療法です。運動療法だけでなく、温熱や電気、水、光線などの「物理的手段」を用います。理学療法士の仕事内容は、患者さんの生活環境やライフスタイルに寄り添った治療目標を定め、医師をはじめとした医療チームと相談・協力しながら、患者さんの自立を支援します。
理学療法の主な目的は運動機能の回復ですが、日常生活動作(ADL)の改善を図り、最終的には生活の質(QOL)の向上を目指します。
月給・年収・給料
理学療法士の平均年収は432万5,200円で(2023年、10人以上の組織)、過去10年間では緩やかではありますが増加傾向で推移しています。一般的な傾向として、給料は50代前半までは上がり続けますが、50代半ば以降は減少に転じることが多いようです。理学療法士の初任給は24万8,600円でした。
理学療法士の給料相場 | |
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年収 | 432万5,200円 |
月給 | 30万900円 |
賞与・ボーナス | 71万4,400円 |
初任給 | 24万8,600円 |
時給 | 2,167円 |
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より
適性・向いている人
医療現場では、コミュニケーション能力・共感力が重要です。理学療法士は患者さんだけでなく、医療スタッフとの対話を通してよりよい医療を提供していきます。また、患者さんの運動機能における課題を見抜く観察力や、日々アップデートしていく医療情報を身に着ける向上心も求められます。
コミュニケーション能力
理学療法士は、患者さんとの信頼関係を築くためのコミュニケーションが不可欠です。患者さんが納得して前向きな気持ちでリハビリに臨めるように、治療法などを丁寧に説明する必要があります。また、患者さんの不安な気持ちや感情に寄り添うことも大切です。そのほか、リハビリ治療は医師や看護師、作業療法士などの医療スタッフと相談・連携しながら進めていきます。チーム医療を実践するためのスキルとして、コミュニケーションは非常に重視されます。
観察力
理学療法士には観察力も重要です。患者さんは自分の体調や気持ちを必ずしも適切に言語化できるとは限りません。場合によっては、患者さんのコンディションを見極め、無理なリハビリをしないように上手にブレーキをかけてあげることも必要です。また、熟練した理学療法士は患者さんの歩行姿勢を見るだけで、どこの筋力が弱いのか、どこに原因があるのかなどを見極めることができます。こうした観察力を日々養っていくことが大切です。
向上心
国家試験に合格しても、そこで勉強は終わりではありません。理学療法士に限った話ではありませんが、日々働きながら学び続けていく必要があります。日進月歩で進歩する医療業界において、よりよい医療を提供するために、向上心を持って学び続ける姿勢は特に重要です。
共感力
理学療法士として働くうえで、人を思いやる気持ちや共感力はとても大切です。不安やストレスを抱えている患者さんは多く、治療に消極的になったり、いら立ちをぶつけてきたりする可能性もあります。治療へのモチベーションを高めるためにも、患者さんの不安や課題に対して共感しながら信頼関係を築いていく必要があるでしょう。