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アルムナイ採用って何?
医療機関や官公庁にも広がる採用制度
「アルムナイ採用」は、最近では東京都が導入したことで注目されました。医療機関や介護福祉施設でも、「アルムナイネットワーク」「アルムナイ制度」を構築している施設もあります。
最近よく聞くキーワード「アルムナイ」とは?
「アルムナイ」とは、学校や企業などの卒業生・元メンバーを指す単語であり、ビジネスにおいては退職した元従業員のことを「アルムナイ」や「アルムナイ人材」と呼びます。また、そういったアルムナイ人材を再度従業員として雇うことを「アルムナイ採用」といいます。
今注目されるアルムナイ採用の全体像について紐解きます。
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アルムナイ採用の基本的な定義
アルムナイ採用とは、一度退職した従業員を再雇用することを意味します。転職や起業、結婚・妊娠などを理由に退職した従業員と継続してコミュニケーションを取り、必要に応じて再度企業に招き入れる手法です。「出戻り採用」「カムバック採用」「ジョブリターン」などと呼ばれることもあります。
アルムナイ採用が注目される背景
アルムナイ採用が注目されるようになった背景には、複数の理由があります。労働人口の減少や働き方の多様化など、アルムナイ採用が求められるようになった理由について解説します。
労働人口の減少
一つ目は、少子高齢化により労働人口が減っていることです。
内閣府が発表している労働力調査によると、1990年代に8,000万人を超えていた生産年齢人口(15-64歳)は、2020年には7,406万人となり、2040年には5,978万人、2060年には4,793万人と、今後も減少が続くと予想されています。そのような中で優秀な人材を確保するための方法の一つとして、アルムナイ採用が注目されています。
働き方の多様化
一つの企業に定年まで勤めることが一般的だった時代は終わり、転職や起業、副業といったさまざまな働き方が生まれています。
そのような時代背景から、組織の柔軟な姿勢を示す手段の一つとして、アルムナイ採用を取り入れる企業が増えてきています。また、アルムナイ人材や中途採用者が持つ多様な経験を、組織で活かしたいと考える企業が増えたことも、アルムナイ採用が活発化している理由です。
即戦力の確保
アルムナイ人材はもともと組織内で働いていた人材のため、企業の風土や仕組み、業務内容などを一通り把握しています。そのため採用後のミスマッチを防ぐことができ、教育にかかる時間も大幅に短縮することができます。労働力の確保が難しくなる中で、即戦力の確保を目的にアルムナイ採用を取り入れる企業が増えてきています。
アルムナイ採用のメリット
アルムナイ採用には、採用や教育にかかるコストを削減できたり、新しい知識や視点を取り入れられたりといった複数のメリットがあります。
採用・教育コストを削減できる
アルムナイ採用のメリットとしてまず挙げられるのが、採用や教育にかかるコストを削減できることです。アルムナイ採用では、退職者とコミュニケーションを継続的にとり、必要なタイミングで直接声をかけて採用活動を行うため、求人媒体を利用するための費用などが削減できます。人材のミスマッチを防ぎやすいことも、採用コストが抑えられる理由です。また、アルムナイ人材はもともとその企業で働いていた人材のため、オンボーディングや教育にかかるコストも削減できます。社内の従業員との関係性もすでに構築されていることが多いため、通常よりも速いスピードで業務や社内の雰囲気になじむことができます。
企業ブランドの向上を期待できる
アルムナイ採用を行うことで、企業ブランドの向上が期待できます。「一度退職した従業員を受け入れている会社」「一度退職しても、また戻りたいと思える会社」だと、採用ホームページ等で外部にアピールすることができ、柔軟で働きやすい企業であるというイメージを与えやすくなります。こういったイメージが、優秀な人材のさらなる確保につながるというメリットもあります。
新しい知識・視点を活用できる
外部の企業や業界を経験したのちに採用されたアルムナイ人材は、新たなスキルや視点を培っていることがほとんどです。そのため、そういった経験を自社に生かすことで、社内の活性化や課題解決につながるというメリットがあります。また、アルムナイ人材の持つ人脈により、新たなビジネスネットワークが構築できることもあります。
人材資本経営の強化につながる
人材資本経営とは、人材を資本であると捉えて投資を行い、持続的な企業価値の向上に努める経営方法です。アルムナイ採用では、退職した社員とも継続してつながりを持つことで、持続的な人脈の構築や再雇用を可能にします。採用手法という点からだけでなく、経営戦略という点からもメリットがあるのが、アルムナイ採用の特徴です。
アルムナイ採用のデメリット
アルムナイ採用にはメリットだけでなくデメリットもあります。デメリットも踏まえてアルムナイ制度を活用することが、アルムナイ採用の失敗を防ぐためには大切です。
新しい視点の欠如
アルムナイ採用は、外部企業の文化や視点を取り入れる機会になり得るものですが、アルムナイ採用ばかりに偏ってしまうのは危険です。アルムナイ人材はその企業の文化や風土を知っている人材であり、再雇用後もすぐになじみやすいという特徴を持っています。これはメリットでもありますが、中途採用を控えてアルムナイ採用ばかりになってしまうと、変化や進展が滞り、企業の成長が鈍化する恐れがあります。
既存従業員の意欲への影響
アルムナイ採用が、既存従業員の「長く働いているのに評価されない」「一度辞めたほうが待遇が上がるのか」といった不満を引き起こすきっかけになることがあります。また、退職しても再雇用してもらえるという環境が、退職に対するハードルを下げることにもつながりかねません。このような既存従業員の意欲低下を避けるためには、人事制度や給与制度の見直し・整備が必要になります。
情報漏洩の危険性
アルムナイ人材とのコミュニケーションや、アルムナイ採用後の業務には、情報漏洩のリスクが伴います。意図せず自社の情報を競合他社で働いているアルムナイ人材に伝えることになってしまったり、アルムナイ人材が前職の守秘義務に抵触する行動をしてしまったりしないよう、セキュリティ整備やリスク研修などで備える意識が必要です。
アルムナイ採用を成功させるためのポイント
アルムナイ採用を成功させるためには、採用がゴールではなく、また良い関係性で長く働く意識のうえに進めることが大切です。そのポイントを解説します。
明確かつ公平な採用基準を設定する
アルムナイ採用を取り入れるうえでまず大切なのが、明確で公平な採用基準があることです。明確な基準がない中で採用が進むと、「新しい知識・視点の活用」「人材資本経営の強化」といったアルムナイ採用のメリットが得られません。また、既存従業員の理解が得られずに、モチベーションの低下を招くリスクもあります。
- 退職時の役職
- 勤続年数
- 退職後に一定のスキルや経験を得ているかどうか
このような採用基準があることで、Win-Winの関係にもとづく採用が実現します。既存従業員の理解が得られていることもポイントです。
既存従業員へアルムナイ制度を周知する
アルムナイ制度を効果的に活用するためには、既存従業員の理解が欠かせません。アルムナイ採用を行うことの目的やそれによって得られる価値、明確な採用基準を設けていることなどを既存従業員に周知し、働き手に配慮することが大切です。
アルムナイ人材の受け入れの整備
アルムナイ制度を成功に導くためには、アルムナイ人材の受け入れ体制を整えておくことが重要です。前述した採用基準の設定や既存従業員への周知とともに、アルムナイ人材の待遇・労働条件の整備や、スキルを活かせる配属先の検討を進めます。候補となる配属先の役職者と面談を行ったり、フルタイム以外の働き方や副業、リモートワークを可能にしたりすることも、既存従業員とアルムナイ人材の双方が働きやすい職場づくりのために大切です。
アルムナイネットワークの構築
雇用される側にとって決め手となるのは、「縁があればまた働きたい」「また働いてもいいな」と思える職場の環境であることです。アルムナイ採用を導入する施設も今後増えると思われるため、組織に対してよい関係性を持ったまま退職できるよう、「自分の意志を尊重しつつ、お世話になった職場には礼儀を尽くす」ことがキャリアの可能性を広げます。
雇用する側は、スタッフの退職時にアルムナイ採用を行っているということを伝えておくと、その後のネットワーク構築もスムーズに進みやすくなります。
アルムナイネットワークの構築方法としては、アルムナイ人材専用のSNSグループや会員制サイトの作成、定期的なニュースレターの送信、セミナーやイベントの開催などがあります。関心がある退職者には退職時に登録を促したり、自社ホームページに案内を載せたりするなどして、参加を呼びかける方法があります。
働く人と職場のWin-Winの関係が利益になる
アルムナイ採用は、労働人口が減少し働き方が多様化する社会で、注目が集まっている採用方法です。採用する側は「求人を出せば人が集まった時代」は終わり、人材不足に苦戦しています。
既存のつながりを活かしていくことは双方にとって効率的です。優秀な人が活かされ、新しいビジネス視点の交換があり、採用コストの面でも無駄がなくなります。働き手と職場が良い関係性を築くことがお互いの利益につながります。
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